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morimoriさん
morimori
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少年ハル(萬 春)がバレエと出会い、15歳で留学し、やがてプリンシパルとなり振付家として活躍するまでのお話
 小説を読むと自分の知らない世界を疑似体験することができるような気がします。バレエを踊る、単に舞踊だけでなく、プリンシパルになるまでの厳しいであろう過程をとても楽し気に、軽やかに描いたこの作品は正直ついていくのが大変でした。バレエを知らず、どんな音楽が流れどのように踊っているのか想像しながら読み進めるのが難しかったからかもしれません。

 また、生まれながらに持ちえた才能を開花していく少年の姿が、自分の周囲にはいない人、どこか別の世界から舞い降りた人のように感じたからかもしれません。唯一、彼を育てたバレエ教室の先生、両親、そして叔父の存在には共感し寄り添いつつページを進めることができました。しかし、何をするにもジッと観察しいざ行動するとパーフェクトになんでもできるハルの存在は、美しいを通り越して驚異でした。生まれながらにしてダンサーになるべくしてプリンシパルとなり振付家となったハルを、友人たちが語る描写もハルのいろいろな面を知ることができました。

 最初に深津純がライバル視して、ハルを語り始めた時にはハルとはいったいどんな人物なのかと思っていましたが、教養部門担当のハルの叔父が、愛情深く見守ってきたであろう描写には静かな感動を覚えました。見学に行った体操クラブで見て覚えた一回転をしなければ、何も始まらなかったという運命、縁がハルには備わっていたのだろうと思います。ドイツに留学するハルを、かぐや姫に例えて別れを迎えた姉に「月ってドイツにあるのかよ」というツッコミ良いなあ。ただ、ハルのお母さんにとっても、バレエの世界は月みたいなものだとか。ハルのお母さんでさえそう感じるならば、単なる読み手が異世界と思えるのも当然かもしれません。唯一ラヴェルの「ボレロ」の曲にハルが振付をした描写では、私もバレエの舞台を見ることができたような気がして心が躍りました。

 才能あふれるダンサー、振付家、作曲家が登場するこの小説は作品として生みだすのは、かなりの努力と時間とを要したのではないかと勝手に想像し「蜜蜂と遠雷」以来の感動を得ることができました。
最後に、小説の左下にはダンサーの小さな挿絵が描かれておりページをパラパラと捲るとダンサーが躍り出します。そんな遊び心も、ダンスを楽しむハルのようで和みました。

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morimori
morimori さん本が好き!1級(書評数:950 件)

多くの人のレビューを拝見して、読書の幅が広がっていくのが楽しみです。感動した本、おもしろかった本をレビューを通して伝えることができればと思っています。

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