ゆうちゃんさん
レビュアー:
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父を訪ね交通不便な孤立した町ヌーン・シティに来たジョエル。父の住む屋敷はその町の中心からも遠い。屋敷に着いたジョエルは、遠くからひとりで来たにもかかわらず、なかなか父に会わせてもらえない。
「やりなおし世界文学」の一冊。
トルーマン・カポーティも「ティファニーで朝食を」で知られる有名な作家だが一冊も読んだことがなく、これを機会に手にしてみた。
ジョエルと言う十三歳の少年の物語。彼の両親は離婚してジョエルは母と暮らしていたが、母が病死してからは叔母エレンに引き取られた。エレンは5人も子供がいたが、ジョエルを継子扱いしたことはない立派な女性だった。そのエレンのところに母親が亡くなったと聞いてジョエルを引き取りたいと父親のサンソムから手紙が来る。エレンと何度かやり取りをした後にジョエルは父の住むヌーン・シティに向かうことになった。
そのヌーン・シティは孤立した容易に行ける場所ではなく、最後はオイル会社の定期トラックに乗せてもらわねばならない。ジョエルが泊まったカフェの主人の口利きでラドクリフと言うドライバーにヌーン・シティまで乗せてもらった。ところがヌーン・シティから、父の住むランディングまでは更に馬車で数キロ進む必要がある。ジョエルはヌーン・シティで入った店で馬車を扱っている場所を訊きだしてそこに案内された。ジーザス・フィーヴァーと言う老人が2日も前からジョエルを待っていたという。彼は父の住むランディングと言う屋敷の使用人だった。ランディング着いたのはもう夜で、途中寂しい田舎道でフローラベルとアイダベルと言う双子の姉妹に出会う。着いた晩に、すぐ寝室に案内され翌日の昼に目覚めるとエイミーと言う女性が目の前に居た。食堂に案内されて朝昼兼用の食事を出されるが、父親のことを聞いてもエミリーははぐらかす。午後も放っておかれ、ジーザスの孫娘ミズーリ(ズー)と庭で遊ぶ。その時、窓を見ると、女性の姿が見えた。容姿からしてエミリーではない。夕食の時に父の従兄弟だと言うランドルフとエミリーとで食事をする。ここでも父親のことを訊いてはぐらかされた。窓に見えた女性のことを訊いても幽霊話の扱いにされる。この沈みゆく屋敷でジョエルは生活を送るが暫くは父に会えない。エレンに手紙を出そうとしたが、どうやらランドルフに回収されてしまったようだ。この「閉ざされた空間」からの脱出の試みは、最初にここに来た時に会った姉妹のところを訪ねて行くか、その妹の方であるアイダベルとの釣りか、近所の廃ホテルを訪ねるか、くらいだった。父親に会えない割りには、ジョエルはここの暮らしに、特にホモセクシュアルの傾向のあるランドルフに絡め取られて行くような感じだった。ジョエルはある時、ランドルフの絵のモデルになりながら、ランドルフと父サンソムが関わり合った驚くべき物語を聞いた。
「ティファニーで朝食を」とはかけ離れたゴシックホラーの物語。読みながらポーの「アッシャー家の崩壊」を思い出したのだが、ネットで調べると、このような類似性を感じるのも、あながち外れてもいなさそうである。本書は個人の個々の行動は明確であるものの、その意図がよくわからない、読後感がすっきりしない小説である。特に主人公のジョエル。会ったこともない父親に会えないのだからもっと大胆に抗議してもよさそうだがその割にはエイミーやランドルフに妙に遠慮している。脱出を試みてもよさそうなものだが、それほど積極的でない。こう書くとジョエルに申し訳ないので、脱出は試みるものの、その計画があまりに非現実的でランディングの生活に進んで身を呈しているように見える、と言った方が良いのか。
特に、ジョエルの夢や白昼夢を描いた第三部はたった20頁程度なのだが、途端に読む速度が遅くなる難解な部分である。なぜランドルフは、ジョエルを廃ホテルに連れて行ったのだろうか?どうもその間にエレンがジョエルの手紙を読んでランディングを訪れたらしいが・・。だったら、ジョエルはランドルフと廃ホテルなどいかずに屋敷に残っているべきだった。賢そうな少年と書かれる割には、行動と能力が一致しない。それとも廃ホテルの方がエレンより興味を引くのだろうか。だとするとジョエルはランディングの生活にもう絡め取られている。第二部の終わりに登場し、世間の生活の厳しさを諭すミス・ウェステリアと言う小さな女性の存在が妙に示唆的だ。
いわゆる古典的な小説を読んでいるつもりで手にしたが、小説としてはあまりにも斬新。解釈に苦しむ。ジョエルの行動がちぐはぐなので、それにいっそう輪をかけるものだった。
トルーマン・カポーティも「ティファニーで朝食を」で知られる有名な作家だが一冊も読んだことがなく、これを機会に手にしてみた。
ジョエルと言う十三歳の少年の物語。彼の両親は離婚してジョエルは母と暮らしていたが、母が病死してからは叔母エレンに引き取られた。エレンは5人も子供がいたが、ジョエルを継子扱いしたことはない立派な女性だった。そのエレンのところに母親が亡くなったと聞いてジョエルを引き取りたいと父親のサンソムから手紙が来る。エレンと何度かやり取りをした後にジョエルは父の住むヌーン・シティに向かうことになった。
そのヌーン・シティは孤立した容易に行ける場所ではなく、最後はオイル会社の定期トラックに乗せてもらわねばならない。ジョエルが泊まったカフェの主人の口利きでラドクリフと言うドライバーにヌーン・シティまで乗せてもらった。ところがヌーン・シティから、父の住むランディングまでは更に馬車で数キロ進む必要がある。ジョエルはヌーン・シティで入った店で馬車を扱っている場所を訊きだしてそこに案内された。ジーザス・フィーヴァーと言う老人が2日も前からジョエルを待っていたという。彼は父の住むランディングと言う屋敷の使用人だった。ランディング着いたのはもう夜で、途中寂しい田舎道でフローラベルとアイダベルと言う双子の姉妹に出会う。着いた晩に、すぐ寝室に案内され翌日の昼に目覚めるとエイミーと言う女性が目の前に居た。食堂に案内されて朝昼兼用の食事を出されるが、父親のことを聞いてもエミリーははぐらかす。午後も放っておかれ、ジーザスの孫娘ミズーリ(ズー)と庭で遊ぶ。その時、窓を見ると、女性の姿が見えた。容姿からしてエミリーではない。夕食の時に父の従兄弟だと言うランドルフとエミリーとで食事をする。ここでも父親のことを訊いてはぐらかされた。窓に見えた女性のことを訊いても幽霊話の扱いにされる。この沈みゆく屋敷でジョエルは生活を送るが暫くは父に会えない。エレンに手紙を出そうとしたが、どうやらランドルフに回収されてしまったようだ。この「閉ざされた空間」からの脱出の試みは、最初にここに来た時に会った姉妹のところを訪ねて行くか、その妹の方であるアイダベルとの釣りか、近所の廃ホテルを訪ねるか、くらいだった。父親に会えない割りには、ジョエルはここの暮らしに、特にホモセクシュアルの傾向のあるランドルフに絡め取られて行くような感じだった。ジョエルはある時、ランドルフの絵のモデルになりながら、ランドルフと父サンソムが関わり合った驚くべき物語を聞いた。
「ティファニーで朝食を」とはかけ離れたゴシックホラーの物語。読みながらポーの「アッシャー家の崩壊」を思い出したのだが、ネットで調べると、このような類似性を感じるのも、あながち外れてもいなさそうである。本書は個人の個々の行動は明確であるものの、その意図がよくわからない、読後感がすっきりしない小説である。特に主人公のジョエル。会ったこともない父親に会えないのだからもっと大胆に抗議してもよさそうだがその割にはエイミーやランドルフに妙に遠慮している。脱出を試みてもよさそうなものだが、それほど積極的でない。こう書くとジョエルに申し訳ないので、脱出は試みるものの、その計画があまりに非現実的でランディングの生活に進んで身を呈しているように見える、と言った方が良いのか。
特に、ジョエルの夢や白昼夢を描いた第三部はたった20頁程度なのだが、途端に読む速度が遅くなる難解な部分である。なぜランドルフは、ジョエルを廃ホテルに連れて行ったのだろうか?どうもその間にエレンがジョエルの手紙を読んでランディングを訪れたらしいが・・。だったら、ジョエルはランドルフと廃ホテルなどいかずに屋敷に残っているべきだった。賢そうな少年と書かれる割には、行動と能力が一致しない。それとも廃ホテルの方がエレンより興味を引くのだろうか。だとするとジョエルはランディングの生活にもう絡め取られている。第二部の終わりに登場し、世間の生活の厳しさを諭すミス・ウェステリアと言う小さな女性の存在が妙に示唆的だ。
いわゆる古典的な小説を読んでいるつもりで手にしたが、小説としてはあまりにも斬新。解釈に苦しむ。ジョエルの行動がちぐはぐなので、それにいっそう輪をかけるものだった。
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神奈川県に住むサラリーマン(技術者)でしたが24年2月に会社を退職して今は無職です。
読書歴は大学の頃に遡ります。粗筋や感想をメモするようになりましたのはここ10年程ですので、若い頃に読んだ作品を再読した投稿が多いです。元々海外純文学と推理小説、そして海外の歴史小説が自分の好きな分野でした。しかし、最近は、文明論、科学ノンフィクション、音楽などにも興味が広がってきました。投稿するからには評価出来ない作品もきっちりと読もうと心掛けています。どうかよろしくお願い致します。
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- 出版社:新潮社
- ページ数:0
- ISBN:9784105014094
- 発売日:2023年08月02日
- 価格:2530円
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