たけぞうさん
レビュアー:
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終盤の怒とうの展開がすごい作品。
芥川賞候補作品は、発表されるとチェックして、合いそうなものを読んでいます。この作品も気になって手に取りました。
途中はけっこう辛いんです。いじめという単純な構図ではさばききれない人間関係の闇が書かれていました。読み続けるのがしんどかったし、最後も解決というよりは折り合いをつけたという感じです。すっきりとはなりませんが、清濁あわせ呑むとはこういうことかなという考えも浮かんできます。
残念ながら芥川賞受賞とはなりませんでしたが、充分すぎるほどの深みのある作品です。誰にもは薦められません。ネタバレにも弱そうです。わたしも全面支持をするのはためらいます。でも、これは読んでおくべきじゃないかなということ、それだけはお伝えできます。
##NAME##。Webサイトにログインするとき、ユーザー名を聞かれますよね。そのときのデフォルトが、##NAME##なのです。主人公の雪那は、夢小説というジャンルのWebサイトにはまっています。ユーザー名を入力せず、デフォルトのまま読むことにしています。夢小説は、ユーザー名に入力することで登場人物のひとりになり、物語を疑似体験していく形になっているですね。でも雪那はそれを望んでいないから、一歩引くためにユーザー名を入れないのです。物語の理解のために大事な部分です。
小学校時代、高校時代、大学時代と、物語は入れ子構造で進んでいきます。雪那の将来を知りつつも、背景をたどるように同時進行していくことで、物語が深いところでつながっていると読者に伝わってくるスタイルです。
キーワードは、無自覚の暴力だと思います。ここでいう暴力とは、精神的なものです。人は他者を傷つけようとは思っていません。でも、自分の価値観から外れた時には、異物を攻撃して自分の安全を保とうとすることがあるのです。攻撃する人に悪気はありません。それなのに、結果的に残酷な状況を作り出してしまうのです。最後のほうに、おせっかいな人に墨汁をぶっかける場面が、この作品のテーマを見事に書いています。
深く、苦しい物語です。これだけ書ける著者です。次回作も期待できます。
途中はけっこう辛いんです。いじめという単純な構図ではさばききれない人間関係の闇が書かれていました。読み続けるのがしんどかったし、最後も解決というよりは折り合いをつけたという感じです。すっきりとはなりませんが、清濁あわせ呑むとはこういうことかなという考えも浮かんできます。
残念ながら芥川賞受賞とはなりませんでしたが、充分すぎるほどの深みのある作品です。誰にもは薦められません。ネタバレにも弱そうです。わたしも全面支持をするのはためらいます。でも、これは読んでおくべきじゃないかなということ、それだけはお伝えできます。
##NAME##。Webサイトにログインするとき、ユーザー名を聞かれますよね。そのときのデフォルトが、##NAME##なのです。主人公の雪那は、夢小説というジャンルのWebサイトにはまっています。ユーザー名を入力せず、デフォルトのまま読むことにしています。夢小説は、ユーザー名に入力することで登場人物のひとりになり、物語を疑似体験していく形になっているですね。でも雪那はそれを望んでいないから、一歩引くためにユーザー名を入れないのです。物語の理解のために大事な部分です。
小学校時代、高校時代、大学時代と、物語は入れ子構造で進んでいきます。雪那の将来を知りつつも、背景をたどるように同時進行していくことで、物語が深いところでつながっていると読者に伝わってくるスタイルです。
キーワードは、無自覚の暴力だと思います。ここでいう暴力とは、精神的なものです。人は他者を傷つけようとは思っていません。でも、自分の価値観から外れた時には、異物を攻撃して自分の安全を保とうとすることがあるのです。攻撃する人に悪気はありません。それなのに、結果的に残酷な状況を作り出してしまうのです。最後のほうに、おせっかいな人に墨汁をぶっかける場面が、この作品のテーマを見事に書いています。
深く、苦しい物語です。これだけ書ける著者です。次回作も期待できます。
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ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。
自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
四番目のアドレスは「作ってみた」の書評です。
よかったらのぞいてみて下さい。
この書評へのコメント
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- 出版社:河出書房新社
- ページ数:0
- ISBN:9784309031279
- 発売日:2023年07月14日
- 価格:1760円
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