DBさん
レビュアー:
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猫から宇宙へ広がる本
猫は高いところから落ちると、最初にどんな姿勢であっても必ず足から着地する。
高さが十センチ程度しかなくてもくるりと回って足から着地するので、この宙返りはまさに「目にも止まらない早わざ」だ。
この猫の宙返りの物理や生理に心を引かれた科学者たちがその謎を解き明かそうと様々なモデルを提唱し、それが新たなロボット工学へ応用されてきた道筋を追ったのが本書です。
まさに「猫の秘密が人類を救う」という壮大な話だった。
十九世紀の偉大な物理学者であるマクスウェルやストークスも猫の宙返りに目を留めてその謎を解明しようと取り組んでいたが、当時は背中を反らせて重心が回転重心よりも上に押し上げられ、それによって身体が回転して正しい姿勢になると考えられていた。
この猫の宙返りの真相解明に役立ったのが写真技術の登場で、カメラ・オブスクラに始まり銀の化合物を用いて像を記録し定着させるという写真の開発の話が詳しく書かれています。
そしてようやく写真が活用できるようになったが、写真は猫の宙返りよりも先に馬のトロットを撮影してその姿勢を解明した。
それまで犬の走る姿から馬も足を後ろに伸ばして蹄が上向きになるような姿勢で描かれていたが、それが間違っていたことが判明したのだ。
世界初の宙返りする猫の写真は1894年パリの生理学研究所のマレ氏によって撮影されたが、これが身体を支える支点がないのに宙返りすることができる猫の謎という大きな論争のもとになる。
尻尾を回転させることで身体が逆回転することを利用したとする「尾をプロペラのように使う」説が登場するが、尻尾のないネコでも宙返りする。
そこで新たに登場するのが、「タック・アンド・ターン・モデル」という猫が前肢か後肢を引っ込めて上半身と下半身の慣性モーメントを変化させることで半身を回転させてからもう半身を回転させるというモデル、そして上半身の回転と下半身の回転が互いに打ち消し合うようにすることで身体全体の向きを変える「ベンド・アンド・ツイスト・モデル」です。
先取権争いという科学史の醜い争いや、猫が水を飲むときに水柱を作ってそれを飲み込んでいるという秘密を紹介し、さらにアインシュタインの相対性理論をおさらいしてここまでやってきた。
次の問題は、猫はどうやって上下を知るのだろうというものだ。
目隠しされたり遠心力で重力をかえて落下させられる猫には可哀そうだが、猫はどうやら落下する数秒前の重力を認識しておりそれによって上下を判断しているようです。
これがもとになって、宇宙で無重力状態になった宇宙飛行士がどうやって身体を動かすかという問題解決のためにもこの猫の研究が役立ったそうです。
さらにロボット工学でもこの猫の研究が生かされているそうだ。
著者は猫の大家族と暮らしているそうで、自分の愛猫の写真を紛れ込ませながら猫の宙返り問題から発展して物理と工学の分野の歴史を俯瞰する本だった。
高さが十センチ程度しかなくてもくるりと回って足から着地するので、この宙返りはまさに「目にも止まらない早わざ」だ。
この猫の宙返りの物理や生理に心を引かれた科学者たちがその謎を解き明かそうと様々なモデルを提唱し、それが新たなロボット工学へ応用されてきた道筋を追ったのが本書です。
まさに「猫の秘密が人類を救う」という壮大な話だった。
十九世紀の偉大な物理学者であるマクスウェルやストークスも猫の宙返りに目を留めてその謎を解明しようと取り組んでいたが、当時は背中を反らせて重心が回転重心よりも上に押し上げられ、それによって身体が回転して正しい姿勢になると考えられていた。
この猫の宙返りの真相解明に役立ったのが写真技術の登場で、カメラ・オブスクラに始まり銀の化合物を用いて像を記録し定着させるという写真の開発の話が詳しく書かれています。
そしてようやく写真が活用できるようになったが、写真は猫の宙返りよりも先に馬のトロットを撮影してその姿勢を解明した。
それまで犬の走る姿から馬も足を後ろに伸ばして蹄が上向きになるような姿勢で描かれていたが、それが間違っていたことが判明したのだ。
世界初の宙返りする猫の写真は1894年パリの生理学研究所のマレ氏によって撮影されたが、これが身体を支える支点がないのに宙返りすることができる猫の謎という大きな論争のもとになる。
尻尾を回転させることで身体が逆回転することを利用したとする「尾をプロペラのように使う」説が登場するが、尻尾のないネコでも宙返りする。
そこで新たに登場するのが、「タック・アンド・ターン・モデル」という猫が前肢か後肢を引っ込めて上半身と下半身の慣性モーメントを変化させることで半身を回転させてからもう半身を回転させるというモデル、そして上半身の回転と下半身の回転が互いに打ち消し合うようにすることで身体全体の向きを変える「ベンド・アンド・ツイスト・モデル」です。
先取権争いという科学史の醜い争いや、猫が水を飲むときに水柱を作ってそれを飲み込んでいるという秘密を紹介し、さらにアインシュタインの相対性理論をおさらいしてここまでやってきた。
次の問題は、猫はどうやって上下を知るのだろうというものだ。
目隠しされたり遠心力で重力をかえて落下させられる猫には可哀そうだが、猫はどうやら落下する数秒前の重力を認識しておりそれによって上下を判断しているようです。
これがもとになって、宇宙で無重力状態になった宇宙飛行士がどうやって身体を動かすかという問題解決のためにもこの猫の研究が役立ったそうです。
さらにロボット工学でもこの猫の研究が生かされているそうだ。
著者は猫の大家族と暮らしているそうで、自分の愛猫の写真を紛れ込ませながら猫の宙返り問題から発展して物理と工学の分野の歴史を俯瞰する本だった。
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好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。
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- ISBN:9784478109373
- 発売日:2022年06月01日
- 価格:1980円
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