ぱるころさん
レビュアー:
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1954年から翌年にかけて、欧米の児童図書館を視察した著者。本書は、帰国後に自宅で子ども向けの小さな図書室を開いた7年間の記録。地道な活動の積み重ねが、今日にも生きている。
小説『幻の朱い実』を読んで、著者の児童文学作家・翻訳家としての活動に興味を持った。代表的な著作に『ノンちゃん雲に乗る』、翻訳には『くまのプーさん』などがある。
本書は、1965年に刊行した『子どもの図書館』の新編である。著者は1954年から翌年にかけ、米・英・カナダの児童図書館や、児童書籍の出版事情を視察。「感想文を書いたりテストされたりしないで、自由に本を読み、自然な反応を示す場所が、日本の子どもには提供されていない」という遅れを痛感した。
また児童文学作家として「子どもがどんな本をじっさいに喜ぶか、どんなことが、どんなふうに書いてあれば、子どもにおもしろいのか」を知る必要があるとも感じていた。
そこで1958年から、自宅の一室にて「かつら文庫」という小学生向けの小さな図書室を始める。
初めは試行錯誤。子供たちが本を読まずに絵を描いたりトランプを始めたり…焼き芋を食べ出すという珍事件もあったそう。
「好きな本を自由に読む場所」として子どもたちに理解してもらうまでには、時間を要した。
その中で著者も、子どもたちのことを理解していく。子どもは楽しい本を読むと、頭に浮かんだ風景を絵に描きたくなる。きちんと完成させるという約束で一枚だけ絵を描いて良いことにすると、皆ちゃんとした絵を描いたという。
かつら文庫のエピソードには、まさに幼い頃の家の本棚を思い出すような本が揃っている。個人的に懐かしさを感じたのは、私が幼稚園児の頃(1980年代)、先生が毎日読んでくれた『いやいやえん』の話が出てきたこと。かつら文庫ではガリ版刷りで読まれていたが、子どもたちの反応が、本の出版を促したのだそう。
かつら文庫の活動は、東京子ども図書館が現在も引き継いでいる。
今日に至るまで、本に携わったきた人たちの地道な努力の積み重ねにより、本の大切さを理解する人が増え、子どもから大人まで自由に本を読むことができるという現在の環境がある。
1965年、旧編のまえがきで著者はこう書いている。「コンピューターや宇宙時代の子どもは、物の考え方の基礎をかためながら、どんどん文字の世界にはいっていくことが必要なのだと、私には思えます。そうでないと、電子頭脳やロボットに使われる人間ができあがってしまうのではないでしょうか。」
60年近く経った今こそ、大切に受け止めるべき言葉だ。
本書は、1965年に刊行した『子どもの図書館』の新編である。著者は1954年から翌年にかけ、米・英・カナダの児童図書館や、児童書籍の出版事情を視察。「感想文を書いたりテストされたりしないで、自由に本を読み、自然な反応を示す場所が、日本の子どもには提供されていない」という遅れを痛感した。
また児童文学作家として「子どもがどんな本をじっさいに喜ぶか、どんなことが、どんなふうに書いてあれば、子どもにおもしろいのか」を知る必要があるとも感じていた。
そこで1958年から、自宅の一室にて「かつら文庫」という小学生向けの小さな図書室を始める。
初めは試行錯誤。子供たちが本を読まずに絵を描いたりトランプを始めたり…焼き芋を食べ出すという珍事件もあったそう。
「好きな本を自由に読む場所」として子どもたちに理解してもらうまでには、時間を要した。
その中で著者も、子どもたちのことを理解していく。子どもは楽しい本を読むと、頭に浮かんだ風景を絵に描きたくなる。きちんと完成させるという約束で一枚だけ絵を描いて良いことにすると、皆ちゃんとした絵を描いたという。
かつら文庫のエピソードには、まさに幼い頃の家の本棚を思い出すような本が揃っている。個人的に懐かしさを感じたのは、私が幼稚園児の頃(1980年代)、先生が毎日読んでくれた『いやいやえん』の話が出てきたこと。かつら文庫ではガリ版刷りで読まれていたが、子どもたちの反応が、本の出版を促したのだそう。
かつら文庫の活動は、東京子ども図書館が現在も引き継いでいる。
今日に至るまで、本に携わったきた人たちの地道な努力の積み重ねにより、本の大切さを理解する人が増え、子どもから大人まで自由に本を読むことができるという現在の環境がある。
1965年、旧編のまえがきで著者はこう書いている。「コンピューターや宇宙時代の子どもは、物の考え方の基礎をかためながら、どんどん文字の世界にはいっていくことが必要なのだと、私には思えます。そうでないと、電子頭脳やロボットに使われる人間ができあがってしまうのではないでしょうか。」
60年近く経った今こそ、大切に受け止めるべき言葉だ。
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週1〜2冊、通勤時間や昼休みを利用して本を読んでいます。
ジャンルは小説・エッセイ・ビジネス書・自己啓発本など。
読後感、気付き、活かしたい点などを自分なりに書き、
また、皆さんからも学びたいと考え参加しました。
よろしくお願いします。
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- 出版社:
- ページ数:0
- ISBN:9784006022549
- 発売日:2015年03月18日
- 価格:1144円
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