よみかさん
レビュアー:
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誰も言ってはならぬ。
岩屋の棲家に暮して2年。気がつけば身体は岩屋の入口より大きくなり、外へ出ることはかなわなくなっていた山椒魚の悲哀を描く「山椒魚」。「朽助のいる谷間」「岬の風景」「へんろう宿」「掛持ち」「シグレ島叙景」「言葉について」「寒山拾得」「夜ふけと梅の花」「女人来訪」「屋根の上のサワン」「大空の鷲」12編の短編を収録。
本には興味が無いという同僚ですら「からだが大きくなっちゃって出られなくなる話でしょ?」という井伏鱒二の「山椒魚」。
この話、よほどインパクトがあるのか、あるいは教科書にのってでもいたのだったか。とりもなおさず日本一有名な山椒魚くんである。
岩屋から出られなくなっていることに2年も気づかないないうっかり者である上、出られないとわかっていながら、岩屋の入口に何度もヅツキを食らわせて、その度に全身コルク栓と化して、小蝦の失笑を買ったりしている。
死ぬまでそこからでられないという、これが例えば人間の話ならば、笑ってなどはいられないだろうが、悲劇の主人公を山椒魚にすることでこの話はある種のユーモアを伴ったペーソスを以って読者に迫ってくる。
何しろ発表された当初のこの作品のタイトルは「幽閉」だったというのだから。タイトルを「山椒魚」とし、言い方を変えれば、これが山椒魚の身の上におきたことになっていることで救われるというか。山椒魚くん、ごめんよ。
岩屋の中に閉じ込められて一生を終わるつらさは山椒魚にしかわからない。だからこの話にはなんびとも共感したなどと言ってはならない。
言うことを許されるものがあるとするならば、それは理不尽にも山椒魚によって同じ岩屋に閉じ込められ、格闘の末に同じように一生ここから出られぬと観念し、山椒魚に対して「今でもべつにお前のことをおこってはいないんだ」という境地に至った蛙のみである。
本には興味が無いという同僚ですら「からだが大きくなっちゃって出られなくなる話でしょ?」という井伏鱒二の「山椒魚」。
この話、よほどインパクトがあるのか、あるいは教科書にのってでもいたのだったか。とりもなおさず日本一有名な山椒魚くんである。
岩屋から出られなくなっていることに2年も気づかないないうっかり者である上、出られないとわかっていながら、岩屋の入口に何度もヅツキを食らわせて、その度に全身コルク栓と化して、小蝦の失笑を買ったりしている。
死ぬまでそこからでられないという、これが例えば人間の話ならば、笑ってなどはいられないだろうが、悲劇の主人公を山椒魚にすることでこの話はある種のユーモアを伴ったペーソスを以って読者に迫ってくる。
何しろ発表された当初のこの作品のタイトルは「幽閉」だったというのだから。タイトルを「山椒魚」とし、言い方を変えれば、これが山椒魚の身の上におきたことになっていることで救われるというか。山椒魚くん、ごめんよ。
岩屋の中に閉じ込められて一生を終わるつらさは山椒魚にしかわからない。だからこの話にはなんびとも共感したなどと言ってはならない。
言うことを許されるものがあるとするならば、それは理不尽にも山椒魚によって同じ岩屋に閉じ込められ、格闘の末に同じように一生ここから出られぬと観念し、山椒魚に対して「今でもべつにお前のことをおこってはいないんだ」という境地に至った蛙のみである。
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ここのところ踊りに現を抜かして、本が読めておりません。(^_^;)
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- 出版社:新潮社
- ページ数:270
- ISBN:9784101034027
- 発売日:1992年01月02日
- 価格:460円
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