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たけぞう
レビュアー:
ファン必読。小川洋子さんの小説の書きかたですよ。
いやー、テンションが上がりました。
田畑書店編集部のまとめで発行された一冊です。
プロの仕事を見ましたね。

6章に区分けされています。
1章はニューヨークタイムズの特集に寄せたエッセーです。
「死者の声を運ぶ小舟」という章題です。
特集のテーマが第二次世界大戦だったので、
小川さんは原爆の話を選びました。なぜその話なのか。
読み進めるうちに分かってくるのですが、小川作品の特徴で
死者と生者の境界をあいまいに捉えているところがあるのです。

2章は、アメリカ・フランス・ベルギーの
ジャーナリストがまとめた記事です。

3章は、琥珀のまたたきのフランス語版の刊行に合わせ、
フランスの二か所、ベルギーの一か所の書店で開催された
作家のトークイベントの記録です。

4章は堀江敏幸さんと千野帽子さんによるインタビュー。
5章は小川さんによる三本の大学特別講座の様子。
6章は書評家による全作解題です。

およそ考えられるすべての切り口で楽しめます。
お偉いさんの著者評論的なものはなく、
ひたすらファン目線で作られています。

全作品リストを見ると、最近の作品は図書館で読んでいて、
中期の作品は文庫本を長らく積読にしている状態であり、
初期の作品はあまり持っていないことが分かりました。
デビュー作の完璧な病室と、二作目の冷めない紅茶は、
読まなければいけない気がしてきました。

うわー、やめてくれーですね。
読みたいけど時間が、読みたいリストがという苦悶は
共感いただけるのではないでしょうか。
でも、デビュー作は大切だと常々思っているので、
チェックするしかないですね。

小川さんは、小説を書くのに徹底的に観察者でありたいと考えていて、
声を上げにくく、部屋の片隅にいるような人の小さな声を聞きたいと書いています。
思い当たるところがあります。

また、著者の頭の中には静止映像があって、
丁寧に書きとっていくことでリアルさが出ていること、
一方で物語はすでに自分の洞窟の中に書いてあって、
物語を進めるうちに現れてくるものだという話は、
非常に興味を惹かれました。
村上春樹さんを意識しているという話も、非常に納得です。

最高の品質のファンブックです。大満足です。
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たけぞう
たけぞう さん本が好き!免許皆伝(書評数:1471 件)

ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。

自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
四番目のアドレスは「作ってみた」の書評です。
よかったらのぞいてみて下さい。

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