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スーヌさん
スーヌ
レビュアー:
自分の力のみを信じて生きる男たちの人生にアステカの神はどう介在するのか
 メキシコのマフィアとアステカの神話と日本の臓器移植が絡む話だと言うのは皆さんお聞き及びでしょう。
 通常であれば、とりあえずあらすじを紹介して感想など述べるわけですが、こと本書に関しては、あらすじを書いちゃうと物語の魅力を半分以上バラしてしまうようで気が引けるので、できる限り話の筋に触れないようにレビューすることにします。
 基本的に男の話です。女性も出てきますがあくまで男の生き方についての物語です。
 さまざまな経緯から現在納得のいかない状況に陥っている男たちが関わり合っていきます。
 彼らは自分の力を信じています。社会的にどうかとか法律とか、そうした規範には頓着せず、あくまで自分の力、それもリアルな暴力を背景に生きています。
 その中にアステカの神話が取り込まれていて、彼らを特別な存在にしています。
 そして彼らが日本での臓器移植ビジネスに関わっていて、これが日本人と日本に巣食う中国マフィアを巻き込む抗争に繋がっていくわけですが、この暴力描写が凄惨です。実際にメキシコマフィアの抗争は凄惨を極めると聞きますが、そこにアステカの神話が介在することで不思議な詩情が生まれています。暴力が神に生贄を捧げる儀式に昇華されるのです。
 さてそんな凄惨な出来事が続く一方で、無垢な少年も出てきます。不幸な生い立ちでありながら人並外れた体格と体力を買われてしまってこの抗争に巻き込まれていくのですが、この救いのない悲惨な物語の中で彼の成長は、他のメンバーはどうせロクな死に方をしないだろうと思われるだけに読んでいて心から応援したくなります。
 このように、国際的な犯罪と神話の世界という日常を遥かに超えたスケールの大きい話が最終的に日本の、しかも川崎あたりという身近なところまで収束していく経緯が醍醐味と言えるので、やはり経緯を書かないでおくのが正しいと思うのです。
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スーヌ
スーヌ さん本が好き!1級(書評数:33 件)

50代男性 実は書店員だが業務で書評を書く機会はない。

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