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スーヌさん
スーヌ
レビュアー:
祝・本屋大賞! 聞こえない声を受け止めてくれる誰かを探して
 大分の漁村に女がやってくる。
 若いのに働きもせず、空き家だった古民家に住み着いて、何かいわくがあるのだろうと口さがない地元民の噂には尾鰭がついていく。
 この女、三島貴瑚は確かに過去を抱えてこの土地へやってきたのですが、自分の過去をいたわる前に、守ってやらねばならない存在と出会います。
 貴瑚の抱えている過去と同様、彼もまた、まだ幼いというのに過酷な人生に直面していました。
 かつて絶望に沈んでいた自分を見るようで、貴瑚は彼を保護します。
 しかし二人が暮らしていくにはそれぞれの過去と対峙し、そして自由を掴み取らなければならず、その道は極めて困難でした。
 物語は貴瑚の過去を振り返りつつ、彼を救うべく伝手をたどっていきます。そこで明らかにされる彼の生い立ちは、貴瑚には他人事ではなく感じられたのです。
 かつて悲惨な過去を乗り越えてきた者が、今度は似たような境遇の者を救おうとする。
 彼らはそれまで、縁もゆかりもない関係でしたが、その境遇が彼らを運命のように結びつけていきます。
 タイトルの52ヘルツのクジラというのは、クジラは音波を出してコミュニケーションを取っているのですが、その周波数が10ヘルツから39ヘルツの範囲内なんだそうで、でもあるクジラは52ヘルツで歌っている。
 当然、彼の声は他のクジラには届かない。
 私達はそんな存在なのではないか、誰にも聞こえない悲鳴をあげている。
 しかしいつか、その聞こえない声に気づいてくれる存在に出会うかもしれない。
 その奇跡のような物語がこちらです。

 なお、この52ヘルツで歌うクジラは実在するそうです。
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スーヌ
スーヌ さん本が好き!1級(書評数:33 件)

50代男性 実は書店員だが業務で書評を書く機会はない。

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