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三毛ネコ
レビュアー:
不可能と言われていた青いバラを、遺伝子操作で作り出そうとする試みを描いたノンフィクションです。
著者は最初に鈴木省三というバラ育種家のところに取材に行く。108種もの新しいバラを作り出し、数々の賞も受けている、バラ育種家の中では有名な人物である。

著者は、遺伝子操作で青いバラを作るというニュースに違和感を覚え、まず鈴木に話を聞きに行ったのである。しかし著者は、「青いバラができたとして、それが本当に美しいと思いますか」という意外な答えを聞く。

青いバラの記述は、古くはギリシャ・ローマ神話など、様々な物語に登場する。英和辞典では、ブルー・ローズは「不可能・ありえないもの」という意味らしい。

19世紀にジョゼフィーヌという育種家をはじめとして、様々なバラが作られていく。その中で、青いバラを作る試みもあったようだが、青いバラは一向にできない。それでも、1954年には青系のバラが発表された。しかし、周りの人は、これはラベンダー色で青くはないと言う。日本人の育種家も、1972年から次々とラベンダー色のバラを作り出している。しかしいずれも、薄い水色程度で、青いとは言えなかった。

バラにはもともと青い色の遺伝子が存在しないので、従来の育種方法では青いバラはできなかったのだ。しかし、1991年のニュースで、オーストラリアのバイオ企業が別の花から青い色の遺伝子を取り出すことに成功し、青いバラも完成させる予定だということが報じられた。

本書では、この後遺伝子工学の発展の歴史が語られる。

そして、日本のサントリーがブルー・ローズ・ジョイント・ベンチャーを共同で設立したのが1990年5月。

青いバラにはあまり関心がなかったのだが、調べてみると2004年にサントリーが遺伝子操作で作り出し、2009年に商品化した。成功するまで14年かかったわけだ。写真で見ると、青紫ではあるが、確かに青色と言える。本書が出たのが2001年なので、この本が書かれた時点ではまだ青いバラはできていない。

実際の開発の苦労については本書を読んでいただきたいが、当時はかなり難しかったことが分かる。著者は遺伝子組み換えに良い印象を持っていないようだ。しかし、新しい生命体を作るとか、遺伝子組み換え作物を作るのとは次元が違う。以前のレビューとは矛盾するようだが、青いバラを作るくらいなら問題はないのではないか。それが率直な感想である。
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三毛ネコ
三毛ネコ さん本が好き!1級(書評数:875 件)

フリーランスの産業翻訳者です。翻訳歴12年。趣味と実益(翻訳に必要な日本語の表現力を磨くため)を兼ねてレビューを書いています。サッカーファンです。

書評、500冊になりました。これからも少しずつ投稿していきたいと思います。

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