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michakoさん
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《浮雲》の二葉亭四迷、また当時彼の周囲にいた夏目漱石、石川啄木、樋口一葉などが登場しこの時代感を味わえます。
「二葉亭四迷ってどんな人?」と聞かれたら、どう答えますか?
名前を知る人は多いものの、その作品を読んでいる人の数は知名度に比例しないのではないかと…勝手に予想している。

二葉亭四迷・本名長谷川辰之助。(てっきり芥川龍之介や堀辰雄のように辰年生まれなのかと思い込んでいたがこれは違っていたよう)
自身を「くたばって仕舞(め)え」と卑下したことからこの名前をつけたというインパクトは大きい。
言文一致体で書かれた『 浮雲』は、日本の近代小説の開祖と言われる。
ただ、近代小説の開祖と言われながら彼はその後ロシア文学の翻訳を手掛け、『浮雲』のような小説は数年後に続編めいた話を書いた以外残していない。
東京朝日新聞の特派員となりロシアに赴き、そして肺を悪くし帰国を目指すもベンガル湾上で亡くなっている。
ん?
なんかこの人つかめないな・・・
これが私の二葉亭四迷に対する印象だった。
『浮雲』は出版されるまでにあれこれあったようだが、作品自体は読んでみると世相がくっきり浮かび上がって面白い。
こんな生き生きした人物像が描ける人なのに、小説を書かずロシア?朝日新聞??とぼんやりしてしまう。

「文学は男子一生の業にあらず。」
二葉亭四迷はそう考えていたようなので、小説を書かなくなったのはこの辺に理由があるんだろう。
ただ、文学は好き、ロシアも好きなのでロシア文学の翻訳などは好んでやっていたという感じか。
東京朝日新聞といえば、この時期夏目漱石も、また石川啄木もいたわけで、彼らのエピソードも楽しめる。
また国木田独歩や、貧困に喘ぐ才女樋口一葉、また一葉と美男美女ということで噂にも上った川上眉山の自殺などのエピソードも絡む。
東京が郊外に向かって野放図に発達し、その結果生まれた新興住宅地に都市型の犯罪が出現するのが明治末期という時代とあり、現代ととても似ている。
が、この時代にあって現代にないものを「生活上の誠実な態度と志の高さ」と著者はあげている。
(二葉亭四迷は食事と女性に遠慮なくお金を使う人で、それをいちいち書き記し記録に残しながらお金は貯めないという「真面目な浪費家」と。なるほど、かなり人物像がわかってきたw)

ドキュメンタリータッチな書き方で、正直最初は「もっと小説風だと入りやすいのにな」とも感じたが、読みすすめるうちしっかり気分が入り込んできた。
事実が一番面白いのですよねぇ。そこは肝心な部分です。
今までぼんやりしていた二葉亭四迷という人物、かなりクリアに見えてきました。
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michako
michako さん本が好き!1級(書評数:1633 件)

夏休み。久しぶりに1週間じっくり母と向き合えた気がします。

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この書評へのコメント

  1. Jun Shino2019-09-17 20:37

    おお〜二葉亭四迷。フィンランドのアキ・カウリスマキという映画監督に佳作の「浮き雲」という作品がありまして、カウリスマキは日本びいきで二葉亭四迷の小説に影響を受けたと聞きかじり、読もうかな、と思ったままだいぶ過ぎました。最近図書館で「間諜二葉亭四迷」という小説を見かけて興味を持ちました。たしかに茫洋とした人物像ですね。「間諜」読んでみようかな。いやまず「浮き雲」からですね。

  2. Yasuhiro2019-09-17 20:54

    こんばんは、懐かしい本で楽しく読ませていただきました。この本にも書いてあったと記憶していますが、漱石とは袖触れ合う程度ですが、朝日新聞で一緒でした。その辺りを漱石は「長谷川君と余」という追悼文で書いています。これを読むと確かに長谷川君は文士である事を恥じていた節がありますね。青空文庫ですぐ読めますのでよろしければご一読ください。

    https://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/762_14960.html

  3. michako2019-09-18 07:11

    >Jun Shinoさん
    おはようございます。朝はギクシャク・・。
    実は私、ちょっと怪我人でしてこちらもなかなか来れずにいました。
    これ読んだのもお盆くらいで^ ^
    カウリスマキ??初めて知ったお名前です。
    で、浮雲から影響を受けてるんですね。観てみたいなあ。
    浮雲は思ったより読みやすく楽しめましたよ。おススメします。

  4. michako2019-09-18 07:20

    >Yasuhiroさん
    おはようございます。懐かしいという事はかなり以前に読まれたんですね。
    私はたまたまこの本を見かけ、タイトルにワクワクしました^ ^
    読んでみると意外と冷静な書き方で、読み物というよりは史実通りに書こうとされたのでしょうね。
    おかげで色々な人物と出会えて、この年代は豊富だなあと改めて感じました。
    「長谷川君と余」引用ありがとうございます!
    何かで私も読んでいましたがまた読ませて頂きました。
    漱石の文章って、追悼文でもどこかおかしみがありますよね。

  5. Jun Shino2019-09-18 09:23

    なんと、お怪我だいじょぶですか?お大事に。。

  6. Yasuhiro2019-09-18 10:29

    >Michako さん
    お怪我をされていたとは存じませんでした、お大事に。

    関川夏央は故谷口ジローと組んだ明治漫画、「坊ちゃんの時代」シリーズでハマってしまい、その頃彼の著作を集中的に読みました。もし未読でしたらおすすめです。

    最終巻にリンクしてしまいました、訂正できないようですみません。

  7. michako2019-09-18 17:37

    >Jun Shinoさん
    >Yasuhiroさん
    怪我してからもう1か月になるので、いい加減周囲の人には全く心配されず
    それでも痛みは相変わらずなのでお言葉にじ~んといたしましたw
    ありがとうございます。
    肩と肋骨のヒビらしいのですが、夏の間スマキになっていました…。
    暑かった…

    坊っちゃんの時代、図書館になぜか1巻だけあるようです!
    予約できないので次回あったらきっと借りてまいりますっ。

  8. かもめ通信2019-09-18 19:56

    ええっ!michakoさん!大けがじゃないですか!
    おまけに猛暑の夏にスマキとは(><)
    お大事になさってくださいね。

    二葉亭四迷、なかなか面白いキャラですよね。
    一時期はまって青空文庫で内田魯庵の文章を中心に読みまくりましたw

  9. michako2019-09-18 21:07

    >かもめ通信さん
    ああ、なんてお耳の良いかもめ通信さん(o^^o)
    ありがとうございます。
    元気なんですよ。ジムも行けますし。
    しかしこの猛暑にスマキって、ゆったりした服しか着れず
    いつもどこかカユイんですがかくことも出来ずでした。
    元々体が固いのでこれはさらに進むなあとちょっと怖いです。
    老化ですよね。そう、老化・・(´-`)

    あ、そうか青空文庫!利用してませんでした。
    これいいですね。ありがとうございます!

  10. No Image

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