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休蔵さん
休蔵
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東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年に向けて、日本に訪れる海外の観光客はどんどん増えている。それは一見良いことのようであるが、手放しで喜べるものでもないらしい。
 観光立国が提唱されたのは、2003年小泉純一郎が首相だった時とのこと。
 その当時は年間1000万人の外国人観光客が目標値としてあげられたそうだ。
 そして、その目標値を達成することはできなかった。
 しかし、観光立国という旗は降ろされていない。
 むしろ、東京オリンピック・パラリンピックに向けてますます盛り上がりを見せている。
 いまや、年間4000万人が目標値となるほど、外国人観光客は日本に溢れている。
 この急激な上昇率は、当然のことながら、観光に関するさまざまな問題を浮き彫りにすることに。
 本書は、観光立国により浮き彫りとなった観光に関わる問題を具体的に示し、解決策を模索している。

 観光立国を推進するために生じた様々な問題。
 例えば交通。
 公共交通手段で運べる人の数は決まっている。
 観光客が多く訪日する以前と同じ考えで運営していては、運ばれずに溢れる人が出てくるのは当然のこと。
 その結果、その街に暮らす人たちの生活に支障が生じるようになってしまった。
 本書はその解決策として「総量規制」と「誘導対策」を主張する。
 つまり、観光スポットに入定できる人数を制限し、観光バスなどを街に入れずやや離れた所で観光客を下ろすといった方法だ。
 そもそも、A地点からB地点まで交通手段を活用し、B地点を見て撤収というのではつまらないではないか。
 
 富士山の入山料という制度が導入されたのは2014年のこと。
 1000円ではあるが、多少の制約にはなったか。
 それでも本書は入山料が安すぎるとする。
 そして、任意にする必要がないことも示した。
 任意というのは役所が責任をとりたくないがための逃げ道とするが、その通りだと思う。
 富士山が好きな日本人は多いはずだし、世界的にもそれなりの知名度があるのではないか。
 でも、あまりにも多くの人が登ったがため、富士山山頂は汚れ始めている。
 ある程度の覚悟を持った方法を採用すべきで、中途半端な任意という道をやめることも選択すべきかもしれない。

 もちろん、観光立国が悪いというわけではないと思う。
 経済がなかなか立ち行かなくなった現在、しかも少子高齢化で先行きが暗い今の日本において、観光業というのは大きな光明であることは間違いない。
 国内で日本文化を見直す動きも出ているようで、自らが生まれ育った国や町を省みる機会にもなるはずだ。
 自分が良いと思う自国の文化を、海外の人も良いと感じてくれ、さらに遠路はるばる訪日してくれるなんて、喜ばしいことではないか。
 そのためにも観光政策をきちんと練り直さなければならないはず。
 一部の観光地にばかり人が訪れる状況も是正したいところだし、結果的にそこばかりにマイナスの影響が及んでしまうことも回避しなければならない。
 本書は「観光亡国」という、やや突っ走った言葉を選んでタイトルを選定しているが、実情の問題を読んでみると納得がいくものであった。
 だからこそ、なんとか手を打つべきなのだろう。
 観光立国でみんなが幸せになるため、ちょっとした問題から少しずつ是正していくべきだろう。

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休蔵
休蔵 さん本が好き!1級(書評数:449 件)

 ここに参加するようになって、読書の幅が広がったように思います。
 それでも、まだ偏り気味。
 いろんな人の書評を参考に、もっと幅広い読書を楽しみたい! 

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