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三毛ネコ
レビュアー:
読む前はちょっと怖かったのですが、読了してみると、小松左京さんのメッセージが強く残りました。コロナ禍の今だからこそ、読んでもらいたい本です。
謎の病原菌が世界に蔓延する内容だと知り、コロナ禍の中にある自分に対する警告の書になるかと思い、読んでみることにした。

物語は1960年代から始まる。カールスキイ教授と呼ばれる人物が、あるモノを怪しげな男たちに渡す。それはMM88と呼ばれる菌である。受け取った男たちは、レーダーに引っかからない木製機でMM88をヨーロッパに運ぼうとする。しかし、アルプス山脈を越えようとして墜落し、爆発してしまったようだ。事故が起きたのは冬だった。

時は流れ、春になる。そして、異変が起こり始める……。まず、アントニオという男と美人のコールガールが乗った車が事故を起こす。アントニオは死んだ。事故の原因は不明である。コールガールによれば、それほどスピードも出さず、安全運転だったのに、アントニオは急に頭をたれて意識を失ったようだ。そう語ったコールガールは、そのすぐ後に心臓麻痺で死亡した。

場面は変わって東京。最近、「ポックリ病(神経性の心臓麻痺)」で死ぬ人が増えているという。新聞記者の則子は、自分のアパートで2匹のネズミの死骸を発見する。自分では触りたくないので、知り合いの男を呼んで始末してもらった。ところが……。その男は翌日、則子のアパートから車を運転して帰る途中に「運転を誤って」死んだのだ。

イタリアでは野ネズミが集団死する。アルプス山中では羊や山羊、牛が死んでいく。原因は不明だ。死亡原因が調査されたが、その現象はそれまで知られていたどの家畜伝染病とも異なっていた。

人間の世界では新型インフルエンザが発生した。医療関係者はその恐るべき威力に気づいたが、パニックになるのを恐れてそのことについては公表しなかった。

そうしている間に、本当の脅威が人類に迫っていた。もちろん、MM88菌である。

果たして世界は……。そして、人類の運命は?

読んでいくと、現在のコロナ禍とリンクしてきて恐ろしくなる。プロ野球の試合の中止、ミュージカルの上演中止。そして非常事態宣言の発令。医療崩壊までも描かれている。

ネタバレにならないように気をつけなければならないが、アルマゲドンのような展開にもなる。そしてラストは、「そう終息するのか!」と思わせる。さすがに小松左京である。

新型コロナウイルスの対応に世界が苦慮している今こそ、この本に込められたメッセージを人々に届けるべきではないだろうか。
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三毛ネコ
三毛ネコ さん本が好き!1級(書評数:871 件)

フリーランスの産業翻訳者です。翻訳歴12年。趣味と実益(翻訳に必要な日本語の表現力を磨くため)を兼ねてレビューを書いています。サッカーファンです。

書評、500冊になりました。これからも少しずつ投稿していきたいと思います。

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