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ホセさん
ホセ
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「お下劣なコロンボ」(私の命名)ことフロスト警部が、今回も次から次へと湧き出てくる事件を、ドタバタの間一髪で解決していく。 遺作になってしまったのだが、我がフロスト警部は不滅です。
295 R・D・ウィングフィールド 「フロスト始末」

「お下劣なコロンボ」(私の命名)ことフロスト警部が、今回も次から次へと湧き出てくる事件を、ドタバタの間一髪で解決していく。
本作では特に「フロストの良い面」がダイナミックに出ていて興奮できた。
遺作になってしまったのだが、我がフロスト警部は不滅です(;´Д`)

ロンドン郊外にあるデントン署に、もうずいぶん長いことフロストは勤めている。
本人には全くその気はなかったのだが、ある事件で重傷を負いつつ犯人を捕まえたことで勲章を受け、
警部に昇進させられてしまった。

一作目「クリスマスのフロスト」の冒頭登場シーンが強烈で忘れられない。
現場検証に先着している同僚にそーっと近づいて、そのお尻にプスッとやって
「浣腸は好きかい?」
と始めている。
どうやら私はこのシーンで、早くもフロストの虜になってしまったようだ(^-^;
今回は、領収書の6を8に書き換えるシーンからだ。期待を裏切らない登場だ♪

ロンドン郊外の設定であるデントン署では、今日もまた新しい事件や揉め事が後を絶たない。
スーパーマーケットへの毒入れと恐喝
強姦事件
複数少女の行方不明
若い女性の死体や、足だけの死体も出てくる

フロストも八面六臂で手を打っては行くのだが、小心者のマレット署長や、フロストを追い出す為にマレットが呼んだスキナー主任警部に、
あれこれと上司面され難題を突きつけられ、手柄は持っていかれてしまう。
だが、マレットはもちろんスキナーでさえも、フロストのように突破力のある捜査を進める事はできない。
フロストは「無茶な捜査」を行っているともいえる。
それでも、時折記憶の中から犯人への繋がりをひらめくし、なんといっても事件を解決までこぎつけるから、署員からの受けはすこぶる良い。
部下の使い方も荒いし、辛辣なこともあるのだが、それは「ホシを挙げる」という最終目的の為に必要だと皆は知っているから。
デキる上役なのだが、すこぶるシャイな人間で、それをおくびにも出そうとはしない。

そして誰よりもフロストは無理をして働いている。
家に帰ってベッドに倒れても、早逝した妻や昔の事件が頭をよぎって眠りは浅いし、大体3‐4時間後にはまた事件の事でたたき起こされている。
唯一熟睡しているのは、署の自分の机の上か、留置場のベッドの上でだ。
捜査の合間に、やっと上階食堂の旨そうな飯が食えるとなると、必ずそこでチャチャが入って食えていない。
夜中の捜査打合せでは、ひと段落したら皆でウィスキー片手にまだ話し合っている。

下ネタ、おとぼけ、茶化し、皮肉、差別用語、そのどれもが切れ味が良い。
手癖も良くないし、経費改竄もしている。
(今回はその経費改竄の揺るがぬ証拠をスキナーに握られてしまい、レクストン署への異動申請にサインさせられる)
捜査は荒っぽいことが多いし、証拠を押さえる為なら壊したり、破ったりもする。

でも我々読者は知っている。
本作でも他でも、殺された少女の現場検証では、フロストは必ず彼女に触れて冷たさを感じ、語りかけることを。

「お嬢ちゃん、どこのどいつがおまえさんをこんな目に遭わせたんだい?」

今回も新しいキャラが冴えている。
フロストとコンビを組むのは、「ウェールズの芋にぃちゃん(タフィ)」ことモーガン刑事。
(フロストをいつも「親父さん」と呼ぶが、「おやっさん」とルビが振られている)
モーガンの抜け作ぶりがすっ飛んでいて、笑えること然りだ。

敵役になる、スキナー主任警部もネチネチといけ好かなくて、とても良い。
念押しの最後に「コンプレンデ?(お分かりか?)」などとスペイン語を混ぜるのも、虫唾が走る。
だが、フロストは最初は「コンプレンデ シニョーラ(奥様)」と返し、
その後も各国の言葉でボケ続ける、「アブソリュマン、パ(うんにゃ、さっぱり)とか、「ハイル、ヒットラー」ってのもあったな。

世間では、フロストのセリフやらドタバタ調といったところが感想の多くなのだが、
フロストのワーカーホリック振りを眺め直してみたら、自分が目一杯仕事に打ち込んでいた時と同じように
「追い詰められたり、こんがらがった時こそ動き回る」事をしている事に気が付いた。
犬も歩けばなんとやら、である。

細かいことは言わないので、エロが好きで少々のグロも大丈夫なミステリ愛好者なら、「クリスマスのフロスト」から読んでみたらいい。
でも何かを食べたり飲んだりしている最中や、電車の中はお勧めできない。
ブブッと吹いたり、腹を捩りながら不気味極まりなく、笑うことになるかもしれないから。

(2017/10/5)
PS シリーズ第6巻だが、作者ウィングフィールドが鬼籍に入ってしまって次はない。
  遺族に許可を得た別作家の若きフロストの翻訳を待つか、それともTVシリーズになった動画を漁ってみようか。
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ホセ
ホセ さん本が好き!1級(書評数:667 件)

語りかける書評ブログ「人生は短く、読むべき本は多い」からの転記になります。
殆どが小説で、児童書、マンガ、新書が少々です。
評点やジャンルはつけないこととします。

ブログは「今はなかなか会う機会がとれない、本読みの友人たちへ語る」調子を心がけています。
従い、私の記憶や思い出が入り込み、エッセイ調にもなっています。

主要六紙の書評や好きな作家へのインタビュー、注目している文学賞の受賞や出版各社PR誌の書きっぷりなどから、自分なりの法則を作って、新しい作家を積極的に選んでいます(好きな作家へのインタビュー、から広げる手法は確度がとても高く、お勧めします)。

また、著作で前向きに感じられるところを、取り上げていくように心がけています。
「推し」の度合いは、幾つか本文を読んで頂ければわかるように、仕組んでいる積りです。

PS 1965年生まれ。働いています。

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この書評へのコメント

  1. 燃えつきた棒2023-12-18 12:06

    レビュー楽しく読ませていただきました。テレビドラマも最高ですよ!モース、ヴァランダーなどを押さえて、堂々頂点を極めているのではないかと思います。ぜひ、ご覧あれ。

  2. ホセ2023-12-18 12:10

    こんにちは。
    ドラマはまだ観れておらず、胸が(少しお下劣に)ワクワクしました♪
    アドバイス、有難うございました!

  3. No Image

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