shawjinnさん
レビュアー:
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透き通った姿のままで表現される、この世の理不尽や悲しみ、輝きや非情さ。
角川文庫夏フェア2025に挑戦!参加レビューです。
宇宙旅行用の乗り物といって、真っ先にイメージされるのは船であろう。何しろ宇宙船というくらいだし。そういう意味で、銀河を移動する交通手段が鉄道というのは、斬新である。
鉄道を通すには、あらかじめ鉄道網を整備する必要があるし、運行計画も立てる必要がある。鉄道は、大海原を移動する船のように、あるいは道路を走る車両のように、自由に走行できないかわりに、渋滞もない。意思による準備や計画を象徴するかのような乗り物である。また、鉄道は、乗用車、バス、トラック、客船、貨物船、航空機と比べても、輸送量あたりの消費エネルギーは、かなり低いので、効率的な交通手段でもある。
つまり、鉄道という姿には、銀河を貫く整った経路=客観性の光というイメージがついてまわる。これが、舞台装置としての魅力を発揮するのに、大いに役立っている。創唱宗教が見出だしている、宇宙にあまねく存在する真実について、想像しやすい姿をしているといえるかもしれない。
その舞台装置のうえで、水素のように透き通った文章が展開される。そして、その文章は、透き通った姿のまま、生きることも死ぬことも、輝きも闇も、全て表現することができるという驚きの体裁を整えている。これは、論理的に乱れも隙もなく、常に精緻な姿をしている文章には真似のできない特徴である。この世の理不尽や悲しみを、そして、輝きや非情さを、あるがままに表現することに秀でている。そういう文章だからこそ、容赦なく確定していく現実に潜む非情さと、その非情さのなかに存在する輝きをとらえることができるのだと思う。
それは、宮沢賢治が求めていたともいわれる《化学の体裁をした信仰》を体現しているのであろう。───まあ、最終的には、そういうことは全部忘れて、ただ、純粋に展開される美しい描写や物語を楽しめばよいのだろうけれども。
なお、列車を牽引しているのは、アルコールエンジンを搭載したディーゼル機関車か、電気機関車のようである。蒸気機関車ではないようだ。
宇宙旅行用の乗り物といって、真っ先にイメージされるのは船であろう。何しろ宇宙船というくらいだし。そういう意味で、銀河を移動する交通手段が鉄道というのは、斬新である。
鉄道を通すには、あらかじめ鉄道網を整備する必要があるし、運行計画も立てる必要がある。鉄道は、大海原を移動する船のように、あるいは道路を走る車両のように、自由に走行できないかわりに、渋滞もない。意思による準備や計画を象徴するかのような乗り物である。また、鉄道は、乗用車、バス、トラック、客船、貨物船、航空機と比べても、輸送量あたりの消費エネルギーは、かなり低いので、効率的な交通手段でもある。
つまり、鉄道という姿には、銀河を貫く整った経路=客観性の光というイメージがついてまわる。これが、舞台装置としての魅力を発揮するのに、大いに役立っている。創唱宗教が見出だしている、宇宙にあまねく存在する真実について、想像しやすい姿をしているといえるかもしれない。
その舞台装置のうえで、水素のように透き通った文章が展開される。そして、その文章は、透き通った姿のまま、生きることも死ぬことも、輝きも闇も、全て表現することができるという驚きの体裁を整えている。これは、論理的に乱れも隙もなく、常に精緻な姿をしている文章には真似のできない特徴である。この世の理不尽や悲しみを、そして、輝きや非情さを、あるがままに表現することに秀でている。そういう文章だからこそ、容赦なく確定していく現実に潜む非情さと、その非情さのなかに存在する輝きをとらえることができるのだと思う。
それは、宮沢賢治が求めていたともいわれる《化学の体裁をした信仰》を体現しているのであろう。───まあ、最終的には、そういうことは全部忘れて、ただ、純粋に展開される美しい描写や物語を楽しめばよいのだろうけれども。
「あ、あすこ石炭袋だよ。そらの孔だよ。」カムパネルラが少しそっちを避けるようにしながら天の川のひととこを指さしました。ジョバンニはそっちを見てまるでぎくっとしてしまいました。天の川の一とこに大きなまっくらな孔がどおんとあいているのです。その底がどれほど深いかその奥に何があるかいくら眼をこすってのぞいてもなんにも見えずただ眼がしんしんと痛むのでした。
なお、列車を牽引しているのは、アルコールエンジンを搭載したディーゼル機関車か、電気機関車のようである。蒸気機関車ではないようだ。
「それにこの汽車石炭をたいていないねえ。」ジョバンニが左手をつき出して窓から前の方を見ながら云いました。
「アルコールか電気だろう。」カムパネルラが云いました。
ごとごとごとと、その小さなきれいな汽車は、そらのすすきの風にひるがえる中を、天の川の水や、三角点の青じろい微光の中を、どこまでもどこまでもと、走って行くのでした。
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読んでいて面白い~と思った本の読書記録です。
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- 出版社:角川書店
- ページ数:264
- ISBN:9784041040034
- 発売日:1969年07月19日
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