かもめ通信さん
レビュアー:
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実を言うと自分でも自覚がある。小説に関して言えば私はきわめて「保守的」だって。だからちょっとおそるおそるではあるけれど、とにもかくにも読んでみた。 #彩流社祭
新刊小説の帯や紹介文に“実験的”と書いてあるのを見るとそれだけで作品を読んでみたくなってしまうという著者木原善彦氏と違って、こと小説に関して言えば私はきわめて“保守的”だ。
それでも木原氏が翻訳を手がけられたアリ・スミスの 『両方になる』はすこぶる面白かったし、イタロ・カルヴィーノの 『冬の夜ひとりの旅人が』は大好物で、フリオ・コルタサルの 『石蹴り遊び』は、いずれゆっくり読もうと水声社版を積んである。
ウラジミール・ナボコフの 『青白い炎』は、去年作品社から新訳( 『淡い焔』)が出て、日本翻訳大賞でも話題になっているから読みたい本のリストにはいれてあるし、同じく日本翻訳大賞で注目されている木原氏の翻訳本ウィリアム・ギャディス 『JR』は、どんな中味なのかあの分厚さからして気にせずにはいられない。
そんなわけで、おそるおそる読んでみたこの本。
「実験小説」の定義からはじまって、ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』、ナボコフ『青白い炎』、コルタサルの『石蹴り遊び』へと続いていく。
聞いたことはあるけれど読んでいない本だけでなく、まったく聞いたことのない本もあって、時々読んだ本がでてくるとホッとしたりもするのだが、その読んだ本についてでさえも、(え?そんな仕掛けがあったの!?)と驚いてしまったりする。
読んだことのある本の中には気に入っている本もあれば、まったく肌に合わなかった本や、途中で挫折した本もあったのだが、なぜ肌にあわなかったのかということも、おぼろげながらわかるような気がしてきたりもする。
テーマ毎にまとめられた章の最後には取り上げられた作品と類似する手法を用いた実験小説の簡単な紹介も載っていて、細部まで興味深い。
とはいえ、一応は最後までページをめくってみたものも、正直なところちっとも読めた気がしないので、これはこの先きっと、あの本この本を読み終えた後に、思い出したように戻ってくるべき本なのだろうとも思う。
そうなのだ。
こういう本を手にしてしまったからには、ある程度覚悟はしていたのだが、またまた読みたい本のリストが延びてしまった。
※2019 本が好き! #彩流社祭参加レビューです。
※どんな作品が取り上げられているか興味を持たれた方は、書誌情報に出版社のHPからひいてきた目次を載せておいたのでそちらをご確認ください。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
この書評へのコメント
- かもめ通信2019-03-18 06:02
只今掲示板にて<2019 本が好き! #彩流社祭>開催中。
https://www.honzuki.jp/bookclub/theme/no346/index.html?latest=20
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- 出版社:彩流社
- ページ数:262
- ISBN:9784779122811
- 発売日:2017年01月23日
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