yukoさん
レビュアー:
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「外交とは、人を信じることから始まると。誰かに与えた無償の愛は、必ず倍になって返ってくる。」
果たして、そんな風に思っている外交官が、この世の中に一体何人いることだろう・・・
一九三八年、若き外交官である棚倉慎はポーランドの首都ワルシャワ、日本大使館に赴任してきます。
彼は訪日中に祖国を失ったロシア人である父と、日本人の母の元に生まれ、
見た目はどう見ても日本人には見えないような風貌。
そのことについてずっと幼いころから、自分とは一体何者なのかということを考え続けてきた慎。
彼には幼い時にほんの数時間出会っただけの、ポーランドの少年との大切な思い出がありました。
かつて、ロシア革命で親を失い、行き場を失ったシベリア戦災孤児たちに日本だけが手を差し伸べ、彼らは、ウラジオストックから海を渡り、日本に上陸して、仏教系の育児院に迎え入れられました。
そして気の毒な子供たちに日本中は涙し、全国から寄付や見舞いが集まったのでした。
その育児院から逃げ出してきたらしい、菫色の瞳をした美しい少年。
彼の名はカミル。
慎が九歳でカミルが十歳。
二人は互いの悩みを打ち明けた、たった一日だけの友でした。
そんな思い出を持ち、赴任してきたポーランド・・・平原の国。
ドイツとロシアに蹂躙され続けた国、ポーランド。
かつて日本に来ていたシベリア孤児たちの組織、『極東青年会』の仲間たち、
列車で偶然出会ったユダヤ人カメラマンのヤン、
アメリカ人記者のレイ、
様々な人と出会い、慎は人として、己の信条に従い、ドイツに侵攻されたポーランドのために自分ができることをしようと、奮闘するのですが、状況はどんどん悪化し・・・
ユダヤ人ゲットーができ、
ワルシャワ蜂起が起こり。
そんな中、日本人である慎の運命は・・・
さすがは須賀しのぶ、『芙蓉千里』シリーズでも、ロシア革命について詳しく書いていましたし、今作も期待をはるかに超える素晴らしい作品でした。
『紺碧の果てを見よ』と同じく、戦時下での友情物語である本作。
自分たちの想いだけではどうにもならない、戦争に彼らは振り回され、苦しめられ、
それでも、人としてどうあるべきかということだけを考えて、
慎は、敵国であるアメリカ人記者や、決して彼らの気持ちはわからないであろうユダヤ人のヤンと、友情を育み、ひたすらにまっすぐに、彼は己の信じる道を進んでいきます。
先輩外交官は、
「人が、人としての良心や信念に従ってしたことは、必ず相手の中に残って、倍になって戻ってくるんだ。」と言う。
そしてそれは、異国の人達の中にまさに残って、倍になって慎たちに戻ってくる。
国と国の板挟みになり、戦争を止めたいという願いは届かず、運命は悲しいものであったけれど、
慎の人生は素晴らしく美しいものであったと思いたい・・・
カティンの森事件が、物語中起きます。
これについては、ポーランドの偉大なる映画監督、アンジェイ・ワイダが、祖国の悲しい事件を映画化した作品を見ていたので知っていたのですが、
ワルシャワ蜂起についてはちらっとその名を聞いたことがあるのみ。
美しいヨーロッパの小さな国のひとつ、ぐらいにしか今まで思っていませんでした。
何度も隣国によって、分割され、国自体も消滅したポーランド。
天文学者のコペルニクス、キュリー夫人、ショパン、映画監督のロマン・ポランスキー、アンジェイ・ワイダ、意外にもたくさん知っているポーランドの著名人たち。
大正時代にポーランド孤児を受け入れた育児院の福田会は今でもポーランドと交流があるのだとか。
あまりにも何も知らなかったポーランドのことを知ることができて良かった。
そして、
本当に彼らの友情に、国を超え、ただ人として己の信条にのっとって行動した彼らの勇気に、ただただ胸が熱くなる物語でした。
彼は訪日中に祖国を失ったロシア人である父と、日本人の母の元に生まれ、
見た目はどう見ても日本人には見えないような風貌。
そのことについてずっと幼いころから、自分とは一体何者なのかということを考え続けてきた慎。
彼には幼い時にほんの数時間出会っただけの、ポーランドの少年との大切な思い出がありました。
かつて、ロシア革命で親を失い、行き場を失ったシベリア戦災孤児たちに日本だけが手を差し伸べ、彼らは、ウラジオストックから海を渡り、日本に上陸して、仏教系の育児院に迎え入れられました。
そして気の毒な子供たちに日本中は涙し、全国から寄付や見舞いが集まったのでした。
その育児院から逃げ出してきたらしい、菫色の瞳をした美しい少年。
彼の名はカミル。
慎が九歳でカミルが十歳。
二人は互いの悩みを打ち明けた、たった一日だけの友でした。
そんな思い出を持ち、赴任してきたポーランド・・・平原の国。
ドイツとロシアに蹂躙され続けた国、ポーランド。
かつて日本に来ていたシベリア孤児たちの組織、『極東青年会』の仲間たち、
列車で偶然出会ったユダヤ人カメラマンのヤン、
アメリカ人記者のレイ、
様々な人と出会い、慎は人として、己の信条に従い、ドイツに侵攻されたポーランドのために自分ができることをしようと、奮闘するのですが、状況はどんどん悪化し・・・
ユダヤ人ゲットーができ、
ワルシャワ蜂起が起こり。
そんな中、日本人である慎の運命は・・・
さすがは須賀しのぶ、『芙蓉千里』シリーズでも、ロシア革命について詳しく書いていましたし、今作も期待をはるかに超える素晴らしい作品でした。
『紺碧の果てを見よ』と同じく、戦時下での友情物語である本作。
自分たちの想いだけではどうにもならない、戦争に彼らは振り回され、苦しめられ、
それでも、人としてどうあるべきかということだけを考えて、
慎は、敵国であるアメリカ人記者や、決して彼らの気持ちはわからないであろうユダヤ人のヤンと、友情を育み、ひたすらにまっすぐに、彼は己の信じる道を進んでいきます。
先輩外交官は、
「人が、人としての良心や信念に従ってしたことは、必ず相手の中に残って、倍になって戻ってくるんだ。」と言う。
そしてそれは、異国の人達の中にまさに残って、倍になって慎たちに戻ってくる。
国と国の板挟みになり、戦争を止めたいという願いは届かず、運命は悲しいものであったけれど、
慎の人生は素晴らしく美しいものであったと思いたい・・・
カティンの森事件が、物語中起きます。
これについては、ポーランドの偉大なる映画監督、アンジェイ・ワイダが、祖国の悲しい事件を映画化した作品を見ていたので知っていたのですが、
ワルシャワ蜂起についてはちらっとその名を聞いたことがあるのみ。
美しいヨーロッパの小さな国のひとつ、ぐらいにしか今まで思っていませんでした。
何度も隣国によって、分割され、国自体も消滅したポーランド。
天文学者のコペルニクス、キュリー夫人、ショパン、映画監督のロマン・ポランスキー、アンジェイ・ワイダ、意外にもたくさん知っているポーランドの著名人たち。
大正時代にポーランド孤児を受け入れた育児院の福田会は今でもポーランドと交流があるのだとか。
あまりにも何も知らなかったポーランドのことを知ることができて良かった。
そして、
本当に彼らの友情に、国を超え、ただ人として己の信条にのっとって行動した彼らの勇気に、ただただ胸が熱くなる物語でした。
「真実が正しく伝えられ、平和が訪れてはじめて、彼らは共に桜を見ることができるだろう。」
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仕事のことで鬱状態が続いており全く本が読めなかったのですが、ぼちぼち読めるようになってきました!
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- 出版社:祥伝社
- ページ数:504
- ISBN:9784396635084
- 発売日:2016年10月12日
- 価格:1998円
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