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かもめ通信
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4月16日は康成忌。今回の文学忌レビューはタイトルで選んだこの長編?!
1956年に朝日新聞に連載された小説。
私はKindleで読んだのだが、文庫版だと600ページ近い長編だ。
長いと言えば長いが冗長な感じはなく、川端の他の作品同様、日本語の美しさが印象的だ。

両親の不仲のために母親と二人だけで大阪で暮らしていたさかえは、ある日、家を飛び出して、母の女学校時代の友人である市子を頼って東京に行く。
資産家の家付き娘だった市子は弁護士の佐山と結婚していて、子どもはいないが歳より10は若く見える美しさと優雅さで周囲を魅了する女性だ。
さかえは憧れの市子の家に転がり込むが、佐山家には既にさかえと同じ年頃の妙子という若い女性が居候していた。
妙子の父は殺人容疑で拘留されていて、その弁護を市子の夫佐山が担当、身寄りのない彼女を夫婦が預かっていたのだった。

共に若くて美しい女性でありながら、影を持たざるを得ない妙子と、よく言えば自由奔放、悪く言えば自己中心的で周囲を翻弄する策士でもあるさかえ。
二人とも市子に憧れながらも、市子に接する態度も、好きになる相手も、想いの遂げ方も全く違う。
その若さと熱さと愚かさが市子夫婦をはじめ周囲を振り回す。

さかえと妙子と市子という三人の女性を中心に“女であること”を、描いた物語は、“女”の魅力を存分に描いたというよりは“女”のいやったらしさを詳細に描ききったという風で、著者が男性であることを疑いたくなるほどにリアルだ。

女が三人集まれば、姦しいだけじゃない、ぐちゃぐちゃした複雑な感情が芽生えることこれ必至だと、○十年女として生きてきた私は思わす納得するのだが、ノーベル賞作家でもある天下の文豪にはなはだ失礼とは思いつつも、こんな風に女を見きってしまう川端という男は、果たして人生、楽しかったのかどうか……女たちに翻弄されるぐらいの方が幸せだったのでは…などと、思ってしまうのだった。


<関連レビュー>
雪国
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かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2238 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

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この書評へのコメント

  1. 三太郎2016-04-16 06:24

    まことに恥ずかしながら(^^;川端の作品もまだ読んだことがありません。

    僕は”女たちに翻弄され”たこともないのですが、このような危ない小説は読まないほうがよいでしょうか。

    川端は若いころに”女(少女)に翻弄され”たことがあったようで、女性について考えつづけたのかも。

  2. かもめ通信2016-04-16 08:34

    三太郎さん、大丈夫です。(?)
    私も国語の授業以外で川端を読むのは、これが2作目ですから。(^^;)

    >このような危ない小説は読まないほうがよいでしょうか。
    いやいや、世の中には“翻弄されている”と気づかずに、手のひらの上で心地よく過ごされておられる方もいらっしゃるでしょうから、そこのところはなんとも……ww

  3. calmelavie2016-04-16 22:40

    こんばんは。

    僕もそれほど川端文学には精通していないですが、新潮文庫の『眠れる美女』は、妖しくも美しく、限りなく堕ちてゆきそうな作品が三つ載っています。
    「眠れる美女」「片腕」「散りぬるを」
    いずれも、ある意味、危ない小説かも知れません。

    巻末で、解説者が、「眠れる美女」について、こう書いています。

    「――この作品を文句なしに傑作と呼んでいる人は、私の他には、私の知るかぎり一人いる。それはエドワード・サイデンスティッカー氏である。およそ氏と私との文学観は夏と冬ほどちがっているのに、会うたびにいつもこの作品の話が出て、この作品の話となると、それまで喧嘩をしていたわれわれが握手をすることになる。」

    この解説者の名前は、三島由紀夫です。

    ちょっと興味が湧きませんか?

  4. かもめ通信2016-04-17 09:23

    calmelavieさん
    実は康成忌レビューを書くにあたって、Kindleにいくつかの作品の冒頭サンプルをダウンロードして、どれを読もうかと考えたのですが…『眠れる美女』は確かに危なそうでしたねww

    このレビューを読んでくださった読友さんから別の場所で、川端とブルーストには通じるものがあるというコメントをいただきまして……私はブルーストも未読なのですが、もしかしてもしかすると、三島とも同じように通じるのかもしれませんね??
    ちなみに……大きな声では言えませんが、三島作品も、未だに1作も読んだことがありません。
    三島由紀夫の命日は……えーと、11月25日?
    それまでにはなにか1つでも………でもねえ。苦手な気がするんですよね。あの写真のイメージが強すぎて……ゴニョゴニョ

  5. calmelavie2016-04-17 22:34

    かもめ通信さん、こんばんは。

    プルーストのキーワードは「マドレーヌ」でしょうか。残念ながら僕にはそれしかわかりません(笑)。

    三島の自決の瞬間を川端は目撃しています。
    その川端も自死の道を選びました。
    通じるところは確かにあったのかも知れません。

    三島の文学作品、僕もさほど読んでいません。彼の思想と行動に直結した文章のほうをよく読んでいたように思います。
    以前、三島と共に自決した森田必勝に関する『烈士と呼ばれる男』という本のレビューを投稿したのですが、そちらをごらんになっていただければ嬉しいです。(あまり好みではないかも知れませんが。)

    三島作品を読むなら、『美しい星』はいかがでしょう。
    北杜夫お薦めの、SF小説です。(古いですかね?面白くて密度の高い内容ですよ。)

  6. 三太郎2016-04-17 22:30

    三島の「美しい星」を元に今度、映画が創られます。タイトルは同じです。リリ-・フランキー、橋本愛らが出演するとか。僕は橋本のファンなのできっと観ると思います。

  7. calmelavie2016-04-17 22:54

    三太郎さん

    そういえばそんな広告を新聞で見かけたような気がします。
    最近はシネマから遠ざかっているので……。

    >橋本愛
    娘が、「貞子3D」の橋本愛が無茶苦茶かわいいと身もだえしておりました。
    そうか、じゃあオレも観ようと、テレビ放映をブルーレイに録画しておいたのですが、僕、誤って消してしまいました。
    いつか、レンタルで借りてこようと思います。
    「貞子3D」
    でも、橋本愛のかわいさ以外は、つまらない映画だと娘は申しておりましたが……。

  8. 三太郎2016-04-17 23:04

    橋本はNHKの朝ドラ「あまちゃん」以来のファンなのですが、彼女の出る映画はホラーやグロいのが多くて、僕は観れるものが限られています。「くちづけ」とか脇役の時の方が愛らしいですね。

  9. calmelavie2016-04-17 23:18

    三太郎さん

    僕は『HOME 愛しの座敷わらし』のテレビ放映で、初めて橋本愛を知りました。

    でも、ここ、かもめ通信さんの家ですよね。
    怒られますね、きっと。

  10. かもめ通信2016-04-18 06:14

    あははっcalmelavieさん、大丈夫です。怒りませんよw
    「美しい星」、読みたい本のリストに入れてみました。
    実はSFも苦手なんですが、毒を食らえばなんとやらで「憂国忌」までにはがんばってみようかな。

    で、お二人お薦めの橋本愛さん……あいにく私、TVを観ないからなあ~と思いつつ、検索してみたら~あら、この方なら知っています!観たことがある程度ですが……。
    おじさまキラーなんですねww

  11. 三太郎2016-04-18 20:10

    >おじさまキラーなんですね

    彼女はたぶん万人受けするタイプではないでしょう(^^;
    熊本出身のためか、容貌がはっきり縄文顔です。
    で、僕は親近感を持っているのです(^^)

  12. かもめ通信2016-11-25 06:27

    上↑でお薦め戴いた三島由紀夫の『美しい星』、読みました!&書きました!
    http://www.honzuki.jp/book/13380/review/162609/

    意外なことに(?)おもしろかったです!
    お薦めありがとうございましたw

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