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たけぞう
レビュアー:
#POP作った)人を失うことを静かに深く問う。
心が震えました。
この感動をつたないなりに精一杯伝えようと思います。
一人でも多くの方が共鳴してもらえれば嬉しいです。

震災の話です。
これまでも何十という作品が発表されていますが、福島で実際に被災した
彩瀬さんの持つ世界観は、その中でも特別なものではないでしょうか。
ノンフィクションも書かれていますので、背景を深く知りたい方にはお薦めです。

湖谷真奈。近くの病院で健康診断を受け、血液検査をしたらひじの内側に
赤黒いあざが出来ていました。
内出血です。あざを見ながら、唐突に、わたしには体があるんだと思いだしました。
少し加減を間違えるだけで傷がつき、強い力がかかれば駄目になる有限のもの。
真奈の心のなかに、すみれの名前が浮かびます。叫びたい気分で。

遠野君が仕事場まで会いに来ます。
なんとなく用件を察した真奈は、仕事の終わりまで待ってと言い、本当に待っていた
遠野君を見て心が沈みます。
ホテルのバーなので、夜は遅くなります。
だから帰ってしまってくれていい、そんな期待も透けます。

遠野君は、一緒に住んでいたすみれのものを処分するから、真奈に引き取りたい
ものはないか来てくれと言うのです。
すみれは、あの日を最後に帰ってきていないのでした。

不穏な出だし、沈み込むような展開。
帰ってきていないなら、再会の期待はできるのでしょうか。
逡巡する真奈、折り合いをつけようとする遠藤君。
きっと何度も堂々巡りをしてきたのでしょう。

人を大切に思うとはどういうことでしょうか。
忘れるということはどういうことでしょうか。
あなたのその気持ちは、いったい、誰のためのものでしょうか。

深く深く、思索の海に沈んでいきます。
そしてもう一つの、並行する幻想的な世界。

心と心の交わりは、相手のためか、自分のためか、読んでいるうちに混沌と
してきます。
最後に救われる世界となり、物語は結末を迎えます。
でも、読んだわたしの中では物語はずっと続いている、そんな気がします。
人を失うことを静かに問う作品でした。
    • やっぱり本が好き!企画で作ったPOPです。
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たけぞう
たけぞう さん本が好き!免許皆伝(書評数:1471 件)

ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。

自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
四番目のアドレスは「作ってみた」の書評です。
よかったらのぞいてみて下さい。

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