かもめ通信さん
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翻訳家の鴻巣友希子さんがゲストを迎え、翻訳について縦横斜めに語り倒し、翻訳のヒミツに迫る面白企画の第2弾!今回はなんと現代日本文学界の5人の作家と対決?!(*本文は敬称略で)
作家・片岡義男と翻訳家・鴻巣友希子が同じ文章を翻訳して対決(?!)し、翻訳について縦横無尽に語り合った『翻訳問答 日本語と英語行ったり来たり』がとても面白かったので、第二弾も必ず買おうと決めていた。
発売と同時に入手したのに読み終えるまでかなりの時間を要したのは、興が削がれたからではなく、じっくりゆっくりかみしめながら読み進めたからに他ならない。
なにしろ今回の企画は、翻訳家の鴻巣友希子が現代日本文学界を背負って立つ名うての作家5名を相手に大立ち回りをするというのだ。
トップバッターは奥泉光。
対決のお題は“I Am a Cat”?!
なんとあの『吾輩は猫である』の英訳からの抜粋を互いに翻訳し合うというものだ。
続いて登場するのは円城塔。
こちらは英語版『竹取物語』を題材にした翻訳対決。
角田光代とは同じく英語版の『雪女』で対決し、水村美苗とはちょっと趣向を変えて互いに造詣が深いという『嵐が丘』で対決。
トリを務めるのは星野智幸との『アラビアンナイト』、星野の訳はスペイン語版からのものだという。
ただ単に抜粋部分を訳し合って、並べてみたというだけではない。
対談の中でどんなことに留意したか、躓いたところ、気になったところはどんな点かに言及されると、それぞれがどんな視点や姿勢で翻訳に挑んでいるかがつまびらかにされていく。
訳者によって味わいが変わってくることもよくわかる。
またそれぞれの作品に対する掘り下げ方も半端ではなく、一つ一つがかなりの読み応え。
あるある感がいっぱいの「先取りの剽窃」をめぐるあれこれも興味深かった。
それにしてもさすがはプロの翻訳家。
鴻巣友希子の多才ぶりには舌を巻く。
ノーマルバージョンの翻訳だけでなく、村上春樹風の『キャット・イン・ザ・ライ』の他、児童文学風、ヤンキー小説風等々、あらすじを押さえつついかにもそれらしい文体で翻訳する腕は見事なものだ。
これほどの才能を見せつけられると、翻訳小説を読むに当たっては語学力に信をおけるというだけでなく自分と感性の合う訳者を選ぶ必要があるのではないかという気がますますしてくる。
読みやすいとか語彙が豊富だとか以前に、原典をどうとらえるか、その雰囲気をどう伝えているかが選択のポイントか。
もっとも原典を読み込めないのだから、その作品の持ち味も読み手である私の想像の域をでないのが残念なところではあるのだが。
そんなことをあれこれと考えながら、この『翻訳問答』シリーズを読み進めているうちに、翻訳というものに対する私の考え方は大きく変わってきた気がする。
私は今まで“日本的な意味での(原文が透けて見えるような)「透明な翻訳」”というものを好んできたけれど、この翻訳問答シリーズを読んで翻訳小説というものへの考え方が随分柔軟になったような。いろいろあるんだな。いろいろあっていいんだな。いろいろ読めて幸せだなあと。
『嵐が丘』の翻訳読み比べをしてから、水村さんの『本格小説』を読んでみようかな。
語学力があれば『本格小説』の日英版読み比べもしてみたいところだけれど。
ボルヘス版アラビアンナイト、誰か翻訳してくれないかしら?
等々、この本にどっぷりはまってしまったなあ~と思っていたら最後に予告が?!
えっ?!第3弾も出るの?!
これはもう読むしかない!!
発売と同時に入手したのに読み終えるまでかなりの時間を要したのは、興が削がれたからではなく、じっくりゆっくりかみしめながら読み進めたからに他ならない。
なにしろ今回の企画は、翻訳家の鴻巣友希子が現代日本文学界を背負って立つ名うての作家5名を相手に大立ち回りをするというのだ。
トップバッターは奥泉光。
対決のお題は“I Am a Cat”?!
なんとあの『吾輩は猫である』の英訳からの抜粋を互いに翻訳し合うというものだ。
続いて登場するのは円城塔。
こちらは英語版『竹取物語』を題材にした翻訳対決。
角田光代とは同じく英語版の『雪女』で対決し、水村美苗とはちょっと趣向を変えて互いに造詣が深いという『嵐が丘』で対決。
トリを務めるのは星野智幸との『アラビアンナイト』、星野の訳はスペイン語版からのものだという。
ただ単に抜粋部分を訳し合って、並べてみたというだけではない。
対談の中でどんなことに留意したか、躓いたところ、気になったところはどんな点かに言及されると、それぞれがどんな視点や姿勢で翻訳に挑んでいるかがつまびらかにされていく。
訳者によって味わいが変わってくることもよくわかる。
またそれぞれの作品に対する掘り下げ方も半端ではなく、一つ一つがかなりの読み応え。
あるある感がいっぱいの「先取りの剽窃」をめぐるあれこれも興味深かった。
それにしてもさすがはプロの翻訳家。
鴻巣友希子の多才ぶりには舌を巻く。
ノーマルバージョンの翻訳だけでなく、村上春樹風の『キャット・イン・ザ・ライ』の他、児童文学風、ヤンキー小説風等々、あらすじを押さえつついかにもそれらしい文体で翻訳する腕は見事なものだ。
これほどの才能を見せつけられると、翻訳小説を読むに当たっては語学力に信をおけるというだけでなく自分と感性の合う訳者を選ぶ必要があるのではないかという気がますますしてくる。
読みやすいとか語彙が豊富だとか以前に、原典をどうとらえるか、その雰囲気をどう伝えているかが選択のポイントか。
もっとも原典を読み込めないのだから、その作品の持ち味も読み手である私の想像の域をでないのが残念なところではあるのだが。
そんなことをあれこれと考えながら、この『翻訳問答』シリーズを読み進めているうちに、翻訳というものに対する私の考え方は大きく変わってきた気がする。
私は今まで“日本的な意味での(原文が透けて見えるような)「透明な翻訳」”というものを好んできたけれど、この翻訳問答シリーズを読んで翻訳小説というものへの考え方が随分柔軟になったような。いろいろあるんだな。いろいろあっていいんだな。いろいろ読めて幸せだなあと。
『嵐が丘』の翻訳読み比べをしてから、水村さんの『本格小説』を読んでみようかな。
語学力があれば『本格小説』の日英版読み比べもしてみたいところだけれど。
ボルヘス版アラビアンナイト、誰か翻訳してくれないかしら?
等々、この本にどっぷりはまってしまったなあ~と思っていたら最後に予告が?!
えっ?!第3弾も出るの?!
これはもう読むしかない!!
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
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- かもめ通信2016-05-23 20:19
たけぞうさん!
鴻巣さんと水村さんは「嵐が丘」の一部を日本語訳にして対決しています。
といっても鴻巣さんの場合は、既に出版されている翻訳本の引用ですが。
で、私がもし語学力があれば読み比べてみたい!と思ったのは
「本格小説」と「本格小説の英訳版」です。
この英訳版は水村さんご本人が、訳者と共同作業で作り上げたのだそうです!
その英訳作業をめぐるエピソードがねえ。とっても興味深かったんですよ!
変更を余儀なくされた部分とか、どんなところに気を配ったかとか!ねえ。
日本語を英語に訳すという作業が紹介されたことで
外語を日本語に訳すことの難しさについてもあらためて考えさせられるという、
これまた深~い構成の対談でした!クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - かもめ通信2016-05-23 21:40
たけぞうさん
ハルキやばなな以外にも海外進出している日本の小説はそれなりにありそうですよ。
以前そのテの話題になったときは『妻が椎茸だったころ』なんかも英訳されている!と驚いた記憶が。
上橋菜穂子なんかも結構読まれているんじゃないかな。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 
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