レビュアー:
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monoさんの”文章入門” NO.2
「文章が上手くなりたい」と、あれこれ指南書を手に取ってみたけれど、どれも同じ内容のものにしか映らず、決め手にかける。
違う、違う、と頭を悩ますうちに運悪く、わけ知り顔で書いた頃のひどい文章を目にし、「うん? これを書いたの、わたし……⁉」と、驚きガックリと肩を落とす。おまけに「このひと、嫌いです」と、かるい殺意まで覚える。
そう呟いたが最後、画面を睨みつけるや、わなわな震える手でパソコンを持ちあげ、ベランダから放り投げたい衝動に駆られる(または叩きつける)。印字したものなら、瞬時に破り捨てたのは想像にかたくない。
胸の前で両手を組み、「ああ、文章が上手くなりたい……」と消え入るような声を口から漏らし、潤んだ瞳でポッカリと空に浮かんだお月様なぞを仰ぐ。新たにお祈りでも捧げ、平安をとり戻そうと誓ったタイミングで、メディアで話題となったこの本を手にした。
本書は、コミックナタリー初代編集長の著者が「良い文章とは完読される文章である」とのコンセプトをもとに、全5章形式の構成で77のトピックスを見出し付きで紹介する「できるビジネスシリーズ」の一冊。文章の上達法を、各注意点を見開きページでゆったりと紹介してくれるので、読者はひとつひとつの内容を噛みしめながら、そのポイントを学ぶことができる。
・属性を問う主語は「こと」で受ける
・時間にまつわる言葉は「点」か「線」かに留意する
・「企画」「作品」……ボンヤリワードにご用心
・便利な「こと」「もの」は減らす努力を
・名詞と呼応する動詞を選ぶとこなれ感が出る
など、ファッション誌も顔負けの小洒落れた見出しで、言葉の置き方から具体的な言葉遣いまで、細かい点を突っ込んでくれるところもありがたい。
とはいえ、この類の本は、すでに世に多く出回っているのかもしれない。私が注目したのは構成部分にある。本書を見渡すと、「書く前に準備する」の第1章を除きその大部分が、文を書く際の注意点にあてられている。
ふむ、ふむ。確かに文を書く際のざっくりとしたプランニングは必要なのだろうし、実際にものを書き進める際の注意点に割かれることも、その性格からして当然だ。ただ、各トッピクスをよくよく確認すると、推敲する際の確認事項にもあてはまるものが多いことにも気づく。
第1章「書く前に準備する」ことを説いた次章が、いきなり「読み返して直す」となっていることも示唆に富む。試しに、書店で文章の上達法を説いた本を手にとってみたところ、その際の注意点と推敲作業とは、きっちりとカテゴリー分けして書かれており、前者の比重が圧倒的に大きかった。本書が優れているのは、双方を分けずに、推敲の作業にも等しく目配せをした点にあるのではないか。
結局のところ、私がこの本から学んだのは、
ことにあった。結論を出したものの、いまだに推敲が上手くいかず、四苦八苦しながら、文に手を入れる現状に変わりはないのだが……。殺意を覚えずに文章を見返す日は、いつやってくるのやら。しばらくお月様を眺める日が続きそうだ。
*文章入門関連本
内田樹「街場の文体論」
違う、違う、と頭を悩ますうちに運悪く、わけ知り顔で書いた頃のひどい文章を目にし、「うん? これを書いたの、わたし……⁉」と、驚きガックリと肩を落とす。おまけに「このひと、嫌いです」と、かるい殺意まで覚える。
そう呟いたが最後、画面を睨みつけるや、わなわな震える手でパソコンを持ちあげ、ベランダから放り投げたい衝動に駆られる(または叩きつける)。印字したものなら、瞬時に破り捨てたのは想像にかたくない。
胸の前で両手を組み、「ああ、文章が上手くなりたい……」と消え入るような声を口から漏らし、潤んだ瞳でポッカリと空に浮かんだお月様なぞを仰ぐ。新たにお祈りでも捧げ、平安をとり戻そうと誓ったタイミングで、メディアで話題となったこの本を手にした。
本書は、コミックナタリー初代編集長の著者が「良い文章とは完読される文章である」とのコンセプトをもとに、全5章形式の構成で77のトピックスを見出し付きで紹介する「できるビジネスシリーズ」の一冊。文章の上達法を、各注意点を見開きページでゆったりと紹介してくれるので、読者はひとつひとつの内容を噛みしめながら、そのポイントを学ぶことができる。
・属性を問う主語は「こと」で受ける
・時間にまつわる言葉は「点」か「線」かに留意する
・「企画」「作品」……ボンヤリワードにご用心
・便利な「こと」「もの」は減らす努力を
・名詞と呼応する動詞を選ぶとこなれ感が出る
など、ファッション誌も顔負けの小洒落れた見出しで、言葉の置き方から具体的な言葉遣いまで、細かい点を突っ込んでくれるところもありがたい。
とはいえ、この類の本は、すでに世に多く出回っているのかもしれない。私が注目したのは構成部分にある。本書を見渡すと、「書く前に準備する」の第1章を除きその大部分が、文を書く際の注意点にあてられている。
ふむ、ふむ。確かに文を書く際のざっくりとしたプランニングは必要なのだろうし、実際にものを書き進める際の注意点に割かれることも、その性格からして当然だ。ただ、各トッピクスをよくよく確認すると、推敲する際の確認事項にもあてはまるものが多いことにも気づく。
第1章「書く前に準備する」ことを説いた次章が、いきなり「読み返して直す」となっていることも示唆に富む。試しに、書店で文章の上達法を説いた本を手にとってみたところ、その際の注意点と推敲作業とは、きっちりとカテゴリー分けして書かれており、前者の比重が圧倒的に大きかった。本書が優れているのは、双方を分けずに、推敲の作業にも等しく目配せをした点にあるのではないか。
結局のところ、私がこの本から学んだのは、
書き上げただけの文章は、脱稿するまでの全体のプロセスからすると、あくまで(ことばの)素材を集めたにしか過ぎない、
ことにあった。結論を出したものの、いまだに推敲が上手くいかず、四苦八苦しながら、文に手を入れる現状に変わりはないのだが……。殺意を覚えずに文章を見返す日は、いつやってくるのやら。しばらくお月様を眺める日が続きそうだ。
*文章入門関連本
内田樹「街場の文体論」
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(2019/11/16)
この書評へのコメント
- mono sashi2017-04-08 15:32
下手くそピアノさん
コメントありがとうございます。
誇張した表現はあるものの、じぶんの書いた文章を読み返すと、
そのような気持ちに襲われることがあるんですよね。
もうちょっと、マシな文章が書けるようにがんばります>_<
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- 出版社:インプレス
- ページ数:208
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