素通堂さん
レビュアー:
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全国の少年少女に告ぐ。おじさんをもっと敬いなさい!!
小学六年生の雪男(ゆきお、です。ゆきおとこじゃない)君、彼は両親と妹の4人家族です。
そしてもう一人、彼の家には居候がいるのです。それは彼のおじさん。お父さんの弟です。
このおじさん、大学で講師をやっているらしいのですが、雪男君は思います。「おじさんが先生だなんて、教わる生徒がかわいそうだな」って。
なぜならこのおじさん、週に四日しか講義がないというので、それ以外はずっと自分の部屋の万年床でぐうたらマンガばかり読んでいるのです。
運動はからきしダメ。ある時野球のメンバーが足りないのでおじさんを誘った時のこと。
おじさんが「俺はピッチャーしかやりたくない」と駄々をこねるので仕方なくピッチャーをやらせたら、38-0で大敗。そしておじさんは言うのでした。
「キャッチャーがよくなかったんだよ。やっぱり大学の野球部のレギュラークラスじゃないとね」
週に四日しか講義がないのだから、お金なんてもちろん持っていません。
雪男君が、もう六年生なんだからマンガの週刊誌なんて買うのはやめなさい、とお母さんに言われて買ってこないと、おじさんは言うのでした。
「俺は毎日頭を使っているんだからね。たまにはマンガを読んで頭をリラックスさせないといけないのだ。だからマンガを買ってきなさい」
おじさんがほしいと言うのだから、当然代金はおじさんが払ってくれるのだろう、と思っていると、おじさんは言うのでした。
「でも、お前だって読むんだろう? だったら半分出しなさい」
まったく、なんてケチなんだろう! 大人のくせに!
それでも一応先生なのだから勉強は得意なんだろう、と宿題を見てもらおうとすると、おじさんは
「なんだ、こんな問題も分からないのか。俺が雪男ぐらいの頃はこんな問題3秒で解いてしまったものさ」
なんて言いながら、スタスタとどこかへ立ち去ってしまうのでした。……分からないんだね、おじさん。
そんな困ったおじさん、ある日ふと思いつくのです。そうだ、外国へ行こう! と。
そのためにはどうすればいいか。おじさんは言うのでした。
「外国に行くには色々な方法がある。たとえば国や学校からお金を出してもらって留学する。……でもおじさんはきっと賢すぎるから、試験官の人が嫉妬しておじさんを落としてしまうだろうな。だからこの方法はだめだ。あとは密航するという手もあるな。……でもそれは犯罪だ。おじさんはそんな愚かなことはしない。……なに? イカダに乗って海を渡る? 残念。おじさんは体力がないからね」
「じゃあ、どれもダメじゃないか」と雪男君が言うと、おじさんは試験も受けず、犯罪にも手を染めず、イカダも作らずに外国に行く方法を発見したのだ! と言うのです。
その方法とは……ウィスキーとフウセンガムの懸賞を当てる、ということでした。
さあ、ここから大変です。おじさんは雪男君たちには「おやつは必ずフウセンガムにするように」と命令し、雪男君のお父さんが毎晩飲むお酒も今までの外国産のウィスキーから懸賞が当たる国産のウィスキーにしてしまいます。
挙句の果てには家に来たお客さんにまでフウセンガムやウィスキーを勧め、その空き箱をもらおうとする始末。さすがにこれは雪男君のお母さんに怒られますが。
おじさんは言うのでした。
「おじさんには念力があるのだ。おじさんが当てようと本気で思ったら、必ず当たる。嘘だなんて思うと、承知しないぞ」
さてさてこの困ったおじさん、本当に外国に行くことができるのでしょうか。
このとんでもなく困ったおじさん、実は作者である北杜夫さん自身がモデルとなっているそうです。
まだ作家として売れる前、医大を卒業して助手となったころは給料がなかった北さんは、まさにこのおじさんのように兄の家に居候して、マンガばっかり読んで暮らしていたので甥っ子たちには決して尊敬されなかったとのこと。
「おじさんのけちん坊! おじさんのお寝坊!」と言われ、腹を立てて子どもたちを追いかけまわしてますますダメなおじさんとなったようです。
僕も甥っ子がいますが、彼らは決して僕のことを尊敬なんてしていません。まったく、困ったことです。けしからん!
そういえばこの間、こんなことがありました。
うちの甥っ子の一番大きい子は今年から中学生になり、スマホを買ってもらったのです。
それで時折彼からLINEでメッセージが届くのですが、この間届いたのを見てびっくり。
それは、こんなメッセージなのでした。
「このメッセージを十人の友達に送ったら、いいことがあるよ。でも、もし送らなかったら、不幸になるよ」
こ、こ、これは……不幸の手紙!?Σ(゚口゚;
なにを送ってきとんねん!!
甥っ子よ、君はおじさんを一体なんだと思っているのだ?
そんなわけで、僕はこの本を「どうしようもないなあ、このおじさんは」と笑いながら読む一方、こっそり自分の胸に手を当ててみるのでした。
だ、大丈夫! ここまでひどくないさ!! ……多分。
そしてもう一人、彼の家には居候がいるのです。それは彼のおじさん。お父さんの弟です。
このおじさん、大学で講師をやっているらしいのですが、雪男君は思います。「おじさんが先生だなんて、教わる生徒がかわいそうだな」って。
なぜならこのおじさん、週に四日しか講義がないというので、それ以外はずっと自分の部屋の万年床でぐうたらマンガばかり読んでいるのです。
運動はからきしダメ。ある時野球のメンバーが足りないのでおじさんを誘った時のこと。
おじさんが「俺はピッチャーしかやりたくない」と駄々をこねるので仕方なくピッチャーをやらせたら、38-0で大敗。そしておじさんは言うのでした。
「キャッチャーがよくなかったんだよ。やっぱり大学の野球部のレギュラークラスじゃないとね」
週に四日しか講義がないのだから、お金なんてもちろん持っていません。
雪男君が、もう六年生なんだからマンガの週刊誌なんて買うのはやめなさい、とお母さんに言われて買ってこないと、おじさんは言うのでした。
「俺は毎日頭を使っているんだからね。たまにはマンガを読んで頭をリラックスさせないといけないのだ。だからマンガを買ってきなさい」
おじさんがほしいと言うのだから、当然代金はおじさんが払ってくれるのだろう、と思っていると、おじさんは言うのでした。
「でも、お前だって読むんだろう? だったら半分出しなさい」
まったく、なんてケチなんだろう! 大人のくせに!
それでも一応先生なのだから勉強は得意なんだろう、と宿題を見てもらおうとすると、おじさんは
「なんだ、こんな問題も分からないのか。俺が雪男ぐらいの頃はこんな問題3秒で解いてしまったものさ」
なんて言いながら、スタスタとどこかへ立ち去ってしまうのでした。……分からないんだね、おじさん。
そんな困ったおじさん、ある日ふと思いつくのです。そうだ、外国へ行こう! と。
そのためにはどうすればいいか。おじさんは言うのでした。
「外国に行くには色々な方法がある。たとえば国や学校からお金を出してもらって留学する。……でもおじさんはきっと賢すぎるから、試験官の人が嫉妬しておじさんを落としてしまうだろうな。だからこの方法はだめだ。あとは密航するという手もあるな。……でもそれは犯罪だ。おじさんはそんな愚かなことはしない。……なに? イカダに乗って海を渡る? 残念。おじさんは体力がないからね」
「じゃあ、どれもダメじゃないか」と雪男君が言うと、おじさんは試験も受けず、犯罪にも手を染めず、イカダも作らずに外国に行く方法を発見したのだ! と言うのです。
その方法とは……ウィスキーとフウセンガムの懸賞を当てる、ということでした。
さあ、ここから大変です。おじさんは雪男君たちには「おやつは必ずフウセンガムにするように」と命令し、雪男君のお父さんが毎晩飲むお酒も今までの外国産のウィスキーから懸賞が当たる国産のウィスキーにしてしまいます。
挙句の果てには家に来たお客さんにまでフウセンガムやウィスキーを勧め、その空き箱をもらおうとする始末。さすがにこれは雪男君のお母さんに怒られますが。
おじさんは言うのでした。
「おじさんには念力があるのだ。おじさんが当てようと本気で思ったら、必ず当たる。嘘だなんて思うと、承知しないぞ」
さてさてこの困ったおじさん、本当に外国に行くことができるのでしょうか。
このとんでもなく困ったおじさん、実は作者である北杜夫さん自身がモデルとなっているそうです。
まだ作家として売れる前、医大を卒業して助手となったころは給料がなかった北さんは、まさにこのおじさんのように兄の家に居候して、マンガばっかり読んで暮らしていたので甥っ子たちには決して尊敬されなかったとのこと。
「おじさんのけちん坊! おじさんのお寝坊!」と言われ、腹を立てて子どもたちを追いかけまわしてますますダメなおじさんとなったようです。
僕も甥っ子がいますが、彼らは決して僕のことを尊敬なんてしていません。まったく、困ったことです。けしからん!
そういえばこの間、こんなことがありました。
うちの甥っ子の一番大きい子は今年から中学生になり、スマホを買ってもらったのです。
それで時折彼からLINEでメッセージが届くのですが、この間届いたのを見てびっくり。
それは、こんなメッセージなのでした。
「このメッセージを十人の友達に送ったら、いいことがあるよ。でも、もし送らなかったら、不幸になるよ」
こ、こ、これは……不幸の手紙!?Σ(゚口゚;
なにを送ってきとんねん!!
甥っ子よ、君はおじさんを一体なんだと思っているのだ?
そんなわけで、僕はこの本を「どうしようもないなあ、このおじさんは」と笑いながら読む一方、こっそり自分の胸に手を当ててみるのでした。
だ、大丈夫! ここまでひどくないさ!! ……多分。
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twitterで自分の個人的な思いを呟いてたら見つかってメッセージが来て気持ち悪いのでもうここからは退散します。きっとそのメッセージをした人はほくそ笑んでいることでしょう。おめでとう。
今までお世話になった方々ありがとうございました。
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- 出版社:新潮社
- ページ数:227
- ISBN:9784101131238
- 発売日:1981年05月01日
- 価格:419円
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