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風竜胆さん
風竜胆
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太宰と並ぶ、お友達になりたくない文士代表の石川啄木が、若い歌人に見せた嫉妬の炎w
 
東海の 小島の磯の 白砂に われ泣きぬれて 蟹とたはむる
はたらけど はたらけど猶 わが生活 楽にならざり ぢつと手を見る


 石川啄木の「一握の砂」(1910年(明治43):東雲堂書店)に収められた歌である。この歌を読んでみて、啄木に対してどのような感じを抱くだろうか。真面目で感性が豊かで、勤勉な青年? とんでもない。実際の啄木は、知人、友人から借金を重ねて女遊びを重ねた、どうしようもない男だったのだ。もちろん借金は返さない。太宰が、お友達になりたくない文士の東の横綱なら、この啄木は、西の横綱に推挙しても良いだろう。

 さて、この「女郎買の歌」は、当時東京朝日新聞に勤務していた啄木が、同紙に発表したものだ。内容は、「創作」という短歌専門雑誌に掲載されていた近藤元の歌に対する批判。このような歌である。

 
潮なりの滿ちし遊廓くるわにかろ/″\と われ投げ入れしゴム輪の車
潮なりにいたくおびゆる神經を しづめかねつゝ女をば待つ
新内の遠く流れてゆきしあと 涙ながして女をおこす


啄木は、これらの歌を、「女郎買ひに行つた歌だつたのだ。」とあきれる。そして、この雑誌の中の、近藤の第二歌集の広告文にある一文に対して、次のような反応を見せる。

 「糜爛せる文明の不幸兒! 最も新らしき短歌! プウ!」

 「プウ!」て何やねん!

 そして、偉そうに次のように書いている。

 
「次の時代といふものに就いての科學的、組織的考察の自由を奪はれてゐる日本の社會に於ては斯ういふ自滅的、頽唐的なる不健全なる傾向が日一日若い人達の心を侵蝕しつゝあるといふ事を指摘したまでゞある。」


 いったい、どの口でそんなことが言えるのだろう。啄木自身もかなり不健全な生活をして心が侵蝕されていたのではないか。単に若い(といっても啄木とそれほど差があるわけではないが)歌人が歌集を出すというので、嫉妬しているだけのように思えるのだが。はた迷惑さでは太宰と双璧をなす啄木の本領発揮というところか。


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風竜胆
風竜胆 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2800 件)

昨年は2月に腎盂炎、6月に全身発疹と散々な1年でした。幸いどちらも、現在は完治しておりますが、皆様も健康にはお気をつけください。

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この書評へのコメント

  1. 風竜胆2015-06-24 17:00

    ほんと、青空文庫はお宝の山です。
    それにしても、どうして、昔の作家って、こんなに、突っ込みやすいんでしょうw

  2. No Image

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