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百聞は一見に如かず。地図から見える世界の過去と現在。
世界史は難しい。
なぜ難しいかといえば、空間と時間が膨大に広がり、複雑な事象が絡まり合っているからだ。流れを把握しなくてはならないが、地理的にも時間的にも広範囲にわたる出来事が影響し合っていて、解きほぐすのが難しいのだ。
本書ではこれを、トピックスに沿った地図から読み解いている。例えばある宗教、例えば1つの帝国といった軸を作り、何枚かの地図で流れを再構成しているのだ。1つのトピックスについて理解を深め、それをいくつも重ね合わせていくうちに、重厚な歴史の姿が徐々に立ち上がっていくという、なかなかスリリングな読書体験が得られる。
章は大きく5つに分けられる。
・現在の政治問題の背景を探る「今の世界を読む」
・現在進行形ではないが、現代の世界の様相にも強く影響している「近現代の戦争と世界」
・米ソの対立後、世界はどう変化したのかを概観する「冷戦終結から新時代」
の3章はどちらかというと現代国際問題に直結する部分だろう。
後半の2章
・主要宗教や言語を俯瞰する「世界を理解する宗教地図」
・栄枯盛衰を繰り返してきた群雄割拠の「帝国の興亡」
はさらに一層深い世界史の地盤を示す。
各章はさらに細かいトピックスに分けられる。
各トピックスを執筆しているのがその時代・その地域の専門家(いくつかでは編集部)であり、それぞれのトピックスに割かれる紙数がさほど多くないのも長所だろう。ニュースなどで興味を持ったトピックスだけ、空き時間に1つ2つのテーマだけといった読み方も出来る。
各トピックスに、参考となる映画や一般書籍が添えられているのも楽しい。こうしたものの鑑賞から時代への理解を深めるのも1つの手だろう。
何より驚かされるのは、ダイナミックな地図である。主題の地域にフォーカスするだけではなく、南北が反転した地図、北極を中心とした地図、斜めから見下ろす地図などもある。
中心に据える点や見る方向が違うとこんなにも見えてくるものがあるのかという新鮮な驚きがある。
日本と中国・韓国の関係(領海の広がり、ガス田の分布、何よりその近さ)。大航海時代のスペインとポルトガル勢力のせめぎ合い(なぜブラジルだけポルトガル語なのかが一目瞭然)。大宗教の伝播・拡散の道筋。東西冷戦の様相。
静止図である地図が動画のように動いて見え、歴史の大きな流れが生き生きと感じられる。
歴史観や解釈は専門家によって異論もあろう。ここに述べられたものがすべて定説かどうかもわからない。
だが、地図を手引きに世界史への深い理解を得ることはまた、現代社会の背景を知ることでもある、ということも、本書は教えてくれる。
ニュースで見かける事件の裏側には、世界史のあんな出来事、こんな出来事があるのかもしれない。
それを知る、とっかかりとなる1冊である。
*以下、私的な話になりますが。
高校のとき、世界史を選択していました(現在は必修となっていますね)。
その際、教えてくださったS先生は、(今にして思えば)なかなか意欲的な方で、毎回独自の視点で地図入りプリントを作ってきてはアツく語ってくださったものでした。先生のフリーハンドの地図があまり見やすくなかった(爆)こともあって、当時はその価値がわからず、「世界史わかんねー(==;)」と密かに思っていたのでした。今ならもう少し一生懸命聞くのになぁ・・・といささか残念です。
S先生の思い出話を書いて、この本を頂戴しました。ありがとうございます。地図が美しく、わかりやすいことに何より感動しています(^^;)。折に触れて眺め、レファレンスとして役立てたいと思います。S先生、デキソコナイの生徒でしたが、世界史、改めて勉強していきたいと思いますのでお許しください・・・。
なぜ難しいかといえば、空間と時間が膨大に広がり、複雑な事象が絡まり合っているからだ。流れを把握しなくてはならないが、地理的にも時間的にも広範囲にわたる出来事が影響し合っていて、解きほぐすのが難しいのだ。
本書ではこれを、トピックスに沿った地図から読み解いている。例えばある宗教、例えば1つの帝国といった軸を作り、何枚かの地図で流れを再構成しているのだ。1つのトピックスについて理解を深め、それをいくつも重ね合わせていくうちに、重厚な歴史の姿が徐々に立ち上がっていくという、なかなかスリリングな読書体験が得られる。
章は大きく5つに分けられる。
・現在の政治問題の背景を探る「今の世界を読む」
・現在進行形ではないが、現代の世界の様相にも強く影響している「近現代の戦争と世界」
・米ソの対立後、世界はどう変化したのかを概観する「冷戦終結から新時代」
の3章はどちらかというと現代国際問題に直結する部分だろう。
後半の2章
・主要宗教や言語を俯瞰する「世界を理解する宗教地図」
・栄枯盛衰を繰り返してきた群雄割拠の「帝国の興亡」
はさらに一層深い世界史の地盤を示す。
各章はさらに細かいトピックスに分けられる。
各トピックスを執筆しているのがその時代・その地域の専門家(いくつかでは編集部)であり、それぞれのトピックスに割かれる紙数がさほど多くないのも長所だろう。ニュースなどで興味を持ったトピックスだけ、空き時間に1つ2つのテーマだけといった読み方も出来る。
各トピックスに、参考となる映画や一般書籍が添えられているのも楽しい。こうしたものの鑑賞から時代への理解を深めるのも1つの手だろう。
何より驚かされるのは、ダイナミックな地図である。主題の地域にフォーカスするだけではなく、南北が反転した地図、北極を中心とした地図、斜めから見下ろす地図などもある。
中心に据える点や見る方向が違うとこんなにも見えてくるものがあるのかという新鮮な驚きがある。
日本と中国・韓国の関係(領海の広がり、ガス田の分布、何よりその近さ)。大航海時代のスペインとポルトガル勢力のせめぎ合い(なぜブラジルだけポルトガル語なのかが一目瞭然)。大宗教の伝播・拡散の道筋。東西冷戦の様相。
静止図である地図が動画のように動いて見え、歴史の大きな流れが生き生きと感じられる。
歴史観や解釈は専門家によって異論もあろう。ここに述べられたものがすべて定説かどうかもわからない。
だが、地図を手引きに世界史への深い理解を得ることはまた、現代社会の背景を知ることでもある、ということも、本書は教えてくれる。
ニュースで見かける事件の裏側には、世界史のあんな出来事、こんな出来事があるのかもしれない。
それを知る、とっかかりとなる1冊である。
*以下、私的な話になりますが。
高校のとき、世界史を選択していました(現在は必修となっていますね)。
その際、教えてくださったS先生は、(今にして思えば)なかなか意欲的な方で、毎回独自の視点で地図入りプリントを作ってきてはアツく語ってくださったものでした。先生のフリーハンドの地図があまり見やすくなかった(爆)こともあって、当時はその価値がわからず、「世界史わかんねー(==;)」と密かに思っていたのでした。今ならもう少し一生懸命聞くのになぁ・・・といささか残念です。
S先生の思い出話を書いて、この本を頂戴しました。ありがとうございます。地図が美しく、わかりやすいことに何より感動しています(^^;)。折に触れて眺め、レファレンスとして役立てたいと思います。S先生、デキソコナイの生徒でしたが、世界史、改めて勉強していきたいと思いますのでお許しください・・・。
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分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。
本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。
あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。
「実感」を求めて読書しているように思います。
赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。そろそろ大雛かな。♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw
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- 出版社:実務教育出版
- ページ数:224
- ISBN:9784788911482
- 発売日:2015年06月23日
- 価格:2700円
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