ホセさん
レビュアー:
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自分の代わりに生物や物を現す事ができる「表出者」たちの中編が2つ。
字面だけを追うと筒井康隆ばりのサイコアクションに見えるが、その裏には現代のぞっとする傾向への揶揄や比喩を見つける事ができて、興奮した。
62 三崎亜記 「手のひらの幻獣」
自分の代わりに生物や物を現す事ができる「表出者」たちの中編が2つ。
字面だけを追うと、筒井康隆ばりのサイコアクションに見えるが、その裏には現代のぞっとする傾向への揶揄や比喩を見つける事ができて、興奮した♫♫
月並みな言い方だが「現代に対する示唆に、とても富んでるSF小説」だ♫♫
呼び出されて役所へ行ったら、となり町との戦争の戦闘員の赤紙を渡される、
長編「となり町戦争」の妙な現実感が忘れらなくて、
また短篇集「バスジャック」でも、いやぁこの世界はあり得るぞ~との後味が残り、
その中の「動物園」で奇妙なエスパーのお話も楽しんだ。
そのエスパーたちの続編が出ると見て手にしてみた。
「表出者」は異端の存在だが、その能力を使って普段はサラリーマンとして動物園に通う。
園の花形のライオンのエルフやゾウの花子が、病気になったり怪我をした時のピンチヒッター役だ。
表出のやり方は、
①その動物をイメージして
②自分の意識と結びつける
③そしてその像を表出する範囲を決めて(バリアを張るようなもの)
④最後に①②の像を③の中に固定する。
力がある表出者は他人を操る事も可能だ。
悪用すれば大変な事になるので、政府と連携した会社で、厳しいマニュアルに縛られて、表出者たちは孤独な仕事を続けている。
管轄は科学庁だったり文部省だったり。
他国では「表出者が軍事目的で使われている」とも聞こえてくる。
表出した液体を固体化すれば爆弾と同じだし、人を操る事も可能だから。
【研究所】
表出者であることを早くに親に見つかり、捨てられてそうなところを表出者の会社社長に拾われた柚木は、動物園通いを続けている。
強力な表出者で恩人の社長が、柚月を立ち上がったばかりの新研究所へ行かせる。
そこでは、余りに強い表出者がかつて現して封印され続けていた「表出実体=ウツツオボエ」を、呼び出す作業が進められていた・・・・
現れたウツツオボエは、ハプニングもあり制御を外れ暴れ始めるが、その前に社長が微笑を浮かべ、「面白くなってきましたね」といつもの口癖をはいて立ちはだかる。
【遊園地】
上記【研究所】から数年が経ち、柚月は強力な表出者のたくや君の見張り役として、一緒に動物園回りを続けている。
ある日「たくや君」が遊園地の中からの声を聞き、二人で調べ始めたら・・・・
そこには・・・・
【研究所】のラスト部分に多く見つけたが、文章の行間にぞっとするメッセージが隠れていることに気づくだろう。
・表出者も表出した物も、国からはロボットのように、兵器のように扱われている。
・表出者を電池のように並べて付けて「並列表出」をして、更に強力な表出を行う。
・表出者も表出した物も、往々にして制御できなくなるものだ。
(原発も?新種のウィルスも?人工知能も?)
・子供を使った更に卑劣なテロ行為も可能だ
ラストに、活躍した強力な表出者「たくや君」の正体が明らかになり、小説の中の情景は穏やかに収束していく。
だが、上記の行間に気づいたなら、「この世界の他の国では、そうはなっていないかも」と直ぐに想像できて、またまた忘れられなくなることだろう。
ところで、我々の居るこの世界は・・・果たしてどうかな?・・・
この物語のようになっていかないかな?
(2015/6/4)
自分の代わりに生物や物を現す事ができる「表出者」たちの中編が2つ。
字面だけを追うと、筒井康隆ばりのサイコアクションに見えるが、その裏には現代のぞっとする傾向への揶揄や比喩を見つける事ができて、興奮した♫♫
月並みな言い方だが「現代に対する示唆に、とても富んでるSF小説」だ♫♫
呼び出されて役所へ行ったら、となり町との戦争の戦闘員の赤紙を渡される、
長編「となり町戦争」の妙な現実感が忘れらなくて、
また短篇集「バスジャック」でも、いやぁこの世界はあり得るぞ~との後味が残り、
その中の「動物園」で奇妙なエスパーのお話も楽しんだ。
そのエスパーたちの続編が出ると見て手にしてみた。
「表出者」は異端の存在だが、その能力を使って普段はサラリーマンとして動物園に通う。
園の花形のライオンのエルフやゾウの花子が、病気になったり怪我をした時のピンチヒッター役だ。
表出のやり方は、
①その動物をイメージして
②自分の意識と結びつける
③そしてその像を表出する範囲を決めて(バリアを張るようなもの)
④最後に①②の像を③の中に固定する。
力がある表出者は他人を操る事も可能だ。
悪用すれば大変な事になるので、政府と連携した会社で、厳しいマニュアルに縛られて、表出者たちは孤独な仕事を続けている。
管轄は科学庁だったり文部省だったり。
他国では「表出者が軍事目的で使われている」とも聞こえてくる。
表出した液体を固体化すれば爆弾と同じだし、人を操る事も可能だから。
【研究所】
表出者であることを早くに親に見つかり、捨てられてそうなところを表出者の会社社長に拾われた柚木は、動物園通いを続けている。
強力な表出者で恩人の社長が、柚月を立ち上がったばかりの新研究所へ行かせる。
そこでは、余りに強い表出者がかつて現して封印され続けていた「表出実体=ウツツオボエ」を、呼び出す作業が進められていた・・・・
現れたウツツオボエは、ハプニングもあり制御を外れ暴れ始めるが、その前に社長が微笑を浮かべ、「面白くなってきましたね」といつもの口癖をはいて立ちはだかる。
【遊園地】
上記【研究所】から数年が経ち、柚月は強力な表出者のたくや君の見張り役として、一緒に動物園回りを続けている。
ある日「たくや君」が遊園地の中からの声を聞き、二人で調べ始めたら・・・・
そこには・・・・
【研究所】のラスト部分に多く見つけたが、文章の行間にぞっとするメッセージが隠れていることに気づくだろう。
・表出者も表出した物も、国からはロボットのように、兵器のように扱われている。
・表出者を電池のように並べて付けて「並列表出」をして、更に強力な表出を行う。
・表出者も表出した物も、往々にして制御できなくなるものだ。
(原発も?新種のウィルスも?人工知能も?)
・子供を使った更に卑劣なテロ行為も可能だ
ラストに、活躍した強力な表出者「たくや君」の正体が明らかになり、小説の中の情景は穏やかに収束していく。
だが、上記の行間に気づいたなら、「この世界の他の国では、そうはなっていないかも」と直ぐに想像できて、またまた忘れられなくなることだろう。
ところで、我々の居るこの世界は・・・果たしてどうかな?・・・
この物語のようになっていかないかな?
(2015/6/4)
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語りかける書評ブログ「人生は短く、読むべき本は多い」からの転記になります。
殆どが小説で、児童書、マンガ、新書が少々です。
評点やジャンルはつけないこととします。
ブログは「今はなかなか会う機会がとれない、本読みの友人たちへ語る」調子を心がけています。
従い、私の記憶や思い出が入り込み、エッセイ調にもなっています。
主要六紙の書評や好きな作家へのインタビュー、注目している文学賞の受賞や出版各社PR誌の書きっぷりなどから、自分なりの法則を作って、新しい作家を積極的に選んでいます(好きな作家へのインタビュー、から広げる手法は確度がとても高く、お勧めします)。
また、著作で前向きに感じられるところを、取り上げていくように心がけています。
「推し」の度合いは、幾つか本文を読んで頂ければわかるように、仕組んでいる積りです。
PS 1965年生まれ。働いています。
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- 出版社:集英社
- ページ数:272
- ISBN:9784087715941
- 発売日:2015年03月26日
- 価格:1620円
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