はるほんさん
レビュアー:
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OED(「O」おお「E」えらいモン「D」出さはったなぁ)
文庫と間違えて注文してしまい、めずらしくハードカバー本。(泣笑)
普段本当に文庫しか読まないので、
文字やページの大きさにすんごい違和感。
先日舟を編むを読んで、もうちょい辞書寄りの本が読みたくて購入。
結果から言うと、やっぱり辞書編纂と言うのは地味な仕事なので
人物に焦点を当てざるを得ないのかなというカンジ。
が、物語自体はとても魅力的であり
また辞書編纂の流れがなんとなくだが見えた気がした。
「オックスフォード英語大辞典(OED)」。
本屋で売っている「英語辞典」ではなく、「英語大辞典」だ。
紙媒体のものは2版までで、最新版はCDになっている。
紙媒体のものをネットで捜してみたが、
辞書としてはバージョンが古いからか、20巻セットで10万円くらい。
本棚に入れると棚がたわむらしい。そらそうだ。(笑)
完全版となるまでに約70年の歳月をかけたという
世界最大かつ最高の辞書と言われる英語辞典だ。
無論それまでにも辞書はあったが、今と違って
「難易な言葉」を集めたアンチョコみたいなものが
当時は辞書と呼ばれていたらしい。
その後、日常語を含めた辞書も出るには出たが
個人の解釈で書かれたユニークな用語もふんだんに含まれており
読物としては楽しそうだが、学校の宿題にはちょっと不向きそうだ。
そこで「完全な英単語の集大成」なる辞書を作ろうということになる。
通常の英語辞典(日本から見ると英英辞典)は
音節と発音と意味、あとはいくばくかの変化形や用例が載っているが
OEDは年代ごとに変化した場合の意味も順に載せ、
その用例をキッチリ書き出しているのだ。
日本で言うなら、こんなカンジだろうか。
「げきオコスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム」と知って噴飯した。
ともあれ、こんな情報量の本を「1から」作ると言えば
その途方も無さは言わずとも知れるだろう。
年代別に本を探して読み、「a」「b」「c」…と単語を拾っていく。
その上単語ごとに用例を付け、本としてまとめると言うのだから
聞いてるだけで頭がパーンとなりそうだ。
だが、それをやったのだ。
博士と、ある「狂人」が。
比喩ではない。
「狂人」は精神病棟から手紙でその事業に参加し
本を読み、用例を黙々とメモし、送り続けたのだった。
7割は博士と狂人のキャラに焦点に充てられているのだが
むしろ「孤独な場所にしか居られなかった」狂人が
辞書編纂という仕事に大いに貢献したところから
これはこれで説得力があった。
しかしこの本のお蔭で、「価格」と辞書の内容が
ちゃんと釣り合っているのだということがよく分かった。
実は昔、オックスフォードの英英辞典を持っていた。
その頃は辞書の価値がイマイチ分かっていなかったので
コンパクトのちょっと安いヤツで済ませてしまった。
今思えば、語彙や用例数が多少違ったのだろう。
まあその時分では、高いのを買っていたとしても
ちゃんと使いこなせなかっただろうが。
自分が読み飛ばしていた用例の向こう側に
こんな歴史があったのだなあ、と感慨深い気持ちになる。
見てみたいなあ、と思う。
CD版ではなく、大きな表紙をうんしょと持ち上げて
大量の紙を繰って語を探すという行為を、久しくしていない。
想像を超える膨大なメモに追われて作られた辞書は
そうして一語一語探すのが、ある意味儀礼なのかもしれない。
い、いやでもコレは絶対買いませんけどね!!!(汗)
普段本当に文庫しか読まないので、
文字やページの大きさにすんごい違和感。
先日舟を編むを読んで、もうちょい辞書寄りの本が読みたくて購入。
結果から言うと、やっぱり辞書編纂と言うのは地味な仕事なので
人物に焦点を当てざるを得ないのかなというカンジ。
が、物語自体はとても魅力的であり
また辞書編纂の流れがなんとなくだが見えた気がした。
「オックスフォード英語大辞典(OED)」。
本屋で売っている「英語辞典」ではなく、「英語大辞典」だ。
紙媒体のものは2版までで、最新版はCDになっている。
紙媒体のものをネットで捜してみたが、
辞書としてはバージョンが古いからか、20巻セットで10万円くらい。
本棚に入れると棚がたわむらしい。そらそうだ。(笑)
完全版となるまでに約70年の歳月をかけたという
世界最大かつ最高の辞書と言われる英語辞典だ。
無論それまでにも辞書はあったが、今と違って
「難易な言葉」を集めたアンチョコみたいなものが
当時は辞書と呼ばれていたらしい。
その後、日常語を含めた辞書も出るには出たが
個人の解釈で書かれたユニークな用語もふんだんに含まれており
読物としては楽しそうだが、学校の宿題にはちょっと不向きそうだ。
そこで「完全な英単語の集大成」なる辞書を作ろうということになる。
通常の英語辞典(日本から見ると英英辞典)は
音節と発音と意味、あとはいくばくかの変化形や用例が載っているが
OEDは年代ごとに変化した場合の意味も順に載せ、
その用例をキッチリ書き出しているのだ。
日本で言うなら、こんなカンジだろうか。
やばい【やば・い】形どうでもいいが、最近ネットで「ムカツク」の最強級が
元は江戸時代、盗人たちの隠語だったとされる。
①80年代:危険なさま、不都合なさま 例)やばい状況
②90年代以降:肯定的な意味を含む 例)このアイスやばいんだけどw
③近年:とにかく大変な状況を含む 例)○○がやばすぎるwww
④近年:説明不可能 例)「やだこれフツーにやばいんですけど」
「げきオコスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム」と知って噴飯した。
ともあれ、こんな情報量の本を「1から」作ると言えば
その途方も無さは言わずとも知れるだろう。
年代別に本を探して読み、「a」「b」「c」…と単語を拾っていく。
その上単語ごとに用例を付け、本としてまとめると言うのだから
聞いてるだけで頭がパーンとなりそうだ。
だが、それをやったのだ。
博士と、ある「狂人」が。
比喩ではない。
「狂人」は精神病棟から手紙でその事業に参加し
本を読み、用例を黙々とメモし、送り続けたのだった。
7割は博士と狂人のキャラに焦点に充てられているのだが
むしろ「孤独な場所にしか居られなかった」狂人が
辞書編纂という仕事に大いに貢献したところから
これはこれで説得力があった。
しかしこの本のお蔭で、「価格」と辞書の内容が
ちゃんと釣り合っているのだということがよく分かった。
実は昔、オックスフォードの英英辞典を持っていた。
その頃は辞書の価値がイマイチ分かっていなかったので
コンパクトのちょっと安いヤツで済ませてしまった。
今思えば、語彙や用例数が多少違ったのだろう。
まあその時分では、高いのを買っていたとしても
ちゃんと使いこなせなかっただろうが。
自分が読み飛ばしていた用例の向こう側に
こんな歴史があったのだなあ、と感慨深い気持ちになる。
見てみたいなあ、と思う。
CD版ではなく、大きな表紙をうんしょと持ち上げて
大量の紙を繰って語を探すという行為を、久しくしていない。
想像を超える膨大なメモに追われて作られた辞書は
そうして一語一語探すのが、ある意味儀礼なのかもしれない。
い、いやでもコレは絶対買いませんけどね!!!(汗)
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歴史・時代物・文学に傾きがちな読書層。
読んだ本を掘り下げている内に妙な場所に着地する評が多いですが
おおむね本人は真面目に書いてマス。
年中歴史・文豪・宗教ブーム。滋賀偏愛。
現在クマー、谷崎、怨霊、老人もブーム中
徳川家茂・平安時代・暗号・辞書編纂物語・電車旅行記等の本も探し中。
秋口に無職になる予定で、就活中。
なかなかこちらに来る時間が取れないっす…。
2018.8.21
この書評へのコメント
- ぽんきち2015-04-05 11:19
あはは、はるほん先生のOED書評を読みたいに1票。
大丈夫、やった人、いますから。
OED全20巻、総計21,730ページ、重量にして60kg、1年間で読み通したらしいっすw。
はるほん先生ならきっと、この本に負けない楽しいレビューを書いてくれるはずっ☆クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - miol mor2015-04-05 17:25
はるほんさん
今までに出た電子版(3-4種類?)はほぼすべて持っていますが、どれも紙の第1版にはあった語源情報の一部(ヘブライ語部分)が欠落していました。まあ、一般にはほとんど必要ないでしょうけれど。人にあげる前にそこを全部写そうかと思ったのですが、あきらめました。
一冊づつの重みが体感的にはダンベルよりずっと重く、まじめな話、引きすぎると腕が痛くなってしばらく持てなくなります。ちょっと違う単語を調べるたびにこれなので、実際、一冊づつを通読するほうが楽でしょう。取っ替え引っ替え出来るのは、恐らく徹夜可のプログラマと同じくらいの年齢限界(29歳くらい?)があるように感じました。もう、一種のスポーツですね。ただ、電子版に引っ越せば、年齢限界が消えますwクリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 
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