そうきゅうどうさん
レビュアー:
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本書はタイトルに「マクロイ傑作選」という言葉が添えられているが、収められた作品たちは、まさにその名に恥じぬものである。
ヘレン・マクロイの短篇集である本書『歌うダイアモンド』には、タイトルに「マクロイ傑作選」という言葉が添えられている。
こういう「○○傑作選」なる言葉は短篇集ではしばしば見られるもので、ただの売り口上という以上の意味を持たない(そもそも短篇集を編むのに、駄作と分かっている作品をなぜ入れるのか?という話だ)。だから、こんな言葉にいちいち注意を向ける人も少ないと思うが、一応言っておこう。本書に収められた作品たちは「マクロイ傑作選」の名に恥じぬものである、と。
これはブレッド・ハリディによる「まえがき」からもうかがい知ることができる。
本書は原書に収録されている8篇+中篇「人生はいつも残酷」の計9篇からなる。その中から、いくつかの作品について簡単なコメントを。
「東洋趣味(シノワズリ)」は、かつて早川書房から出ていた「世界ミステリ全集」の中の1冊『37の短篇』に「燕京奇譚」というタイトルで収録されていた。清朝末期の北京を舞台にしたミステリで、文字通りマクロイの東洋趣味が横溢した一品。
分身(ドッペルゲンガー)がテーマの「鏡もて見るごとく」は、後の『暗い鏡の中に』の元になった作品。以前「ミステリ・マガジン」にも掲載され、私はそれも読んでいるが、それでもページをめくるのがもどかしくなった。
表題作である「歌うダイアモンド」のダイアモンドとは宝石のそれではなく、トランプのダイヤのことで、そのダイヤのマークに似た物体が編隊をなして、共鳴音を響かせながら飛ぶ姿が目撃される中での、奇妙な連続怪死事件を扱ったミステリ。ミステリ短篇はこれまでもかなりの数を読んできたが、こんな設定の作品は初めて。
「ところかわれば」は異星人とのファースト・コンタクトを描いたSF。相手のことを理解したつもりで、実は誤解していた、というのは星新一のショートショートの中にも同じコンセプトの話があるが、本作はラスト2行でもう一ひねりある。これは今読むべき作品だ。
こういう「○○傑作選」なる言葉は短篇集ではしばしば見られるもので、ただの売り口上という以上の意味を持たない(そもそも短篇集を編むのに、駄作と分かっている作品をなぜ入れるのか?という話だ)。だから、こんな言葉にいちいち注意を向ける人も少ないと思うが、一応言っておこう。本書に収められた作品たちは「マクロイ傑作選」の名に恥じぬものである、と。
これはブレッド・ハリディによる「まえがき」からもうかがい知ることができる。
(前略)これらの短篇の中から作者自身が選んだお気に入りの作品が、本書には収められている。ちなみに、ヘレン・マクロイについて私はミステリ作家と認識してきたが、本書を読むとマクロイのフィールドはミステリに留まらないことが分かる(上でハリディが「私がこれまでに読んだなかで最も独創的な物語」として挙げた4篇は全てSFである)。
「作者自身が選んだ」という言葉に注目してほしい。これはこの種の本の序文ではおなじみの言葉だが、しかし、そうした選集が結局のところ作者の個人的な選択を反映していないこともまた、よくある話である。(中略)本書の読者にとっては幸いなことに、ボンド氏は賢明にもミス・マクロイの選択を受け入れ、彼女は四篇の、私がこれまでに読んだなかで最も独創的な物語を収録することにした──その四篇とは「八月の黄昏に」「Q通り十番地」「ところかわれば」「風のない場所」である。
本書は原書に収録されている8篇+中篇「人生はいつも残酷」の計9篇からなる。その中から、いくつかの作品について簡単なコメントを。
「東洋趣味(シノワズリ)」は、かつて早川書房から出ていた「世界ミステリ全集」の中の1冊『37の短篇』に「燕京奇譚」というタイトルで収録されていた。清朝末期の北京を舞台にしたミステリで、文字通りマクロイの東洋趣味が横溢した一品。
分身(ドッペルゲンガー)がテーマの「鏡もて見るごとく」は、後の『暗い鏡の中に』の元になった作品。以前「ミステリ・マガジン」にも掲載され、私はそれも読んでいるが、それでもページをめくるのがもどかしくなった。
表題作である「歌うダイアモンド」のダイアモンドとは宝石のそれではなく、トランプのダイヤのことで、そのダイヤのマークに似た物体が編隊をなして、共鳴音を響かせながら飛ぶ姿が目撃される中での、奇妙な連続怪死事件を扱ったミステリ。ミステリ短篇はこれまでもかなりの数を読んできたが、こんな設定の作品は初めて。
「ところかわれば」は異星人とのファースト・コンタクトを描いたSF。相手のことを理解したつもりで、実は誤解していた、というのは星新一のショートショートの中にも同じコンセプトの話があるが、本作はラスト2行でもう一ひねりある。これは今読むべき作品だ。
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「ブクレコ」からの漂流者。「ブクレコ」ではMasahiroTakazawaという名でレビューを書いていた。今後は新しい本を次々に読む、というより、過去に読んだ本の再読、精読にシフトしていきたいと思っている。
職業はキネシオロジー、クラニオ、鍼灸などを行う治療家で、そちらのHPは→https://sokyudo.sakura.ne.jp
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- 出版社:東京創元社
- ページ数:378
- ISBN:9784488168100
- 発売日:2015年02月27日
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