書評でつながる読書コミュニティ
  1. ページ目
詳細検索
タイトル
著者
出版社
ISBN
  • ログイン
無料会員登録

Kuraraさん
Kurara
レビュアー:
さぁ、みんな一緒に「ハイ、ハイ、ドウドウ」「ハイ、ドウドウ」♪
ほかに読む予定だった本の山に割り込んで来た谷崎作品。
それもこれも山田詠美氏の「賢者の愛」を読んだら、どうしても
こちらも読まずにはいられない状況になってしまった。

「賢者の愛」を読み終わって早々に図書館に飛んだくらいだから
山田さんの作品から、ものすごい「圧」が私にかかったのだと
今になって思う。

「痴人の愛」、もうタイトルからして、どうにも哀しい性のようなものを
感じ取ってしまうわけだが、内容は想像以上の滑稽さが贅沢なほど
盛り込まれていて、ノンストップで読みたくなる面白さを秘めているから
嫌になってしまう。

主人公河合譲治、28歳。サラリーマンをしている普通の男性が、
カフェの女給、ナオミ・15歳と出合い、どんどん彼女のペースに
飲み込まれ、自分を失っていくという単純なストーリーなのだが、
その飲み込まれ方たるや、もうどうにかしてあげてーって叫びたくなるほど。

ナオミという女は美少女で日本人離れをしたスタイルを持つ。
そんな彼女虜になってしまった譲治は「友達のように暮らそう」という
誘い文句で彼女を自分の元で養育し、自分の理想とするレディに・・・
という熟年男性のような夢を抱き、やがて彼女を妻にするのだが・・・・。

これが大変なの。本当に大変なのですよ。
我儘でお金遣いは荒いし、感情の起伏が激しい。
それに15歳だった少女はどんどん美しさを増し、
ダンスを習い、周りにはいつも取り巻きの男性たちが
群がるようになる。
そんな男性たちといつしかナオミはやりたい放題の生活。

で、ついにナオミの浮気が発覚し、譲治も勢いで「出ていけー」と
なるのですが、彼女が居なくなってしまうと、余計に彼女のことが
恋しくなり、後悔しまくる譲治。

そこをうまく読み取っているのか、「荷物を取りに来た」という
口実で彼女は毎日のように譲治の家に帰って来ては、
誘惑するような態度を示し、彼を翻弄させる。

その悪女っぷりというか、女王様っぷりというか・・・・。
やがて譲治は仕事を辞め、遺産に手をつけてしまう。
そのお金もまたナオミが浪費してゆくというものすごい崩壊っぷりが
見事に描かれているのだ。

もう後半は譲治がナオミに飼いならされた犬のような状態になってしまい、
思わずポカンと口を開けたまま、私までもが「痴人」のようになってしまった。

で、目的であった山田詠美氏の「賢者の愛」との比較ですが、

・賢者の愛 ─────女が年上。彼女は直巳に溺れることなく、自分の思い通りの
            男性に育てあげる。二人の話にとどまらず、その周りの人々
            との人間模様をグイグイ掘り下げてゆく。
            心理的に迫って来る描写にゾクゾク感が満載。


・痴人の愛 ─────男が年上。彼はナオミに溺れまくり、自分の理想とはほど遠い女性に
           育ってしまう。話自体はナオミと譲治、ふたりの関係性を
           描いたもの。文字から状況が鮮明に見えてくるような
           描写に苦笑。

と言った大まかな違いがあるものの、どちらの小説も傍観者的に読むには面白く、
「強烈さ」においても大差ない。変な人々に思わず苦笑してしまうシーンが
多かったのは間違いなく「痴人」の方でした。

一見、「賢者」の主人公の方が勝ち組のように聞こえるかもしれないけれど、
いや、なんというか痴人は痴人でこれまた幸せそうなのである。

「ハイ、ハイ、ドウドウ」

ナオミを背中に乗せて這いまわる譲治の姿。
誰になんと言われようと、これが彼の至福の時なのだろう。
自分が崩壊したって、今日も明日も、

「ハイ、ハイ、ドウドウ」

これが「痴人の愛」なんだな~きっと(笑)

というわけで、突然飛び込んできた谷崎作品。
こういう機会に読めて良かった。そして、これを読むことによって
ようやく山田作品の方も読み終えた実感が湧いたことも記しておこう。


※挿絵がポツリポツリと入っていてなかなか良かったです。
山田詠美「賢者の愛」の書評
お気に入り度:本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント
掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
Kurara
Kurara さん本が好き!1級(書評数:811 件)

ジャンルを問わず、年間200冊を目標に読書をしています。
「たしかあの人が、あんなことを言っていたな…」というような、うっすら記憶に残る書評を書いていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。

読んで楽しい:30票
参考になる:6票
共感した:1票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

  1. 風竜胆2015-02-25 23:13

    ここでは、もっぱら変態さんという評判の谷崎氏ですが、この作品も、その評価通りみたいですねw 
    でも読んでみたいww

  2. Kurara2015-02-25 23:23

    風竜胆さん♪
    タニザーキ、思ったより読みやすく、変な人々勢ぞろいで楽しかったです。
    どの作品が一番「変度」が高いのかリサーチの意味も含め、他もチェレンジしてみたいと思っていますw
    月さん、早く起きてー。次回満月3月6日あたりに起き上がるのだ!!
    こってりした書評をお待ちしてますのよ(-"-)

  3. はるほん2015-02-26 07:08

    ( ゚∀゚)o彡°タニザキ!タニザキ!
    やはりこれも読まねばあああああ!
    いつか本棚の「た」行がコンプリされてしまいそう。

    なんていうか難しい変態じゃなくていいですよね、谷崎。
    明るい前向きな変態というか。(何ソレ)

    こちらも月さん宛ての脳内目覚ましガンガンに鳴らしてお待ちしてますw

  4. Kurara2015-02-26 21:46

    はるほんさん♪
    新潮文庫でそろえると、本棚が燃えるようなタニザキレッドな世界へ~w
    そうそう、わかりやすーい、変態ちゃん。ついつい読んでしまうから厄介です。およそこんな作品を書くように見えない谷崎の顔写真。このギャップがまたすごいですよね。

    余談ですが今、新潮の方で別作品を読もうとおいてあるのですが、新潮の方はかなりきっちり注釈があるんですね。中公はほとんどなかったから、ある意味中断されることなく読み進められて良かったデス。巻末注釈は結構、面倒だったりするので。。

  5. はるほん2015-02-26 21:58

    おおう、こちらも新潮で1冊買ったとこですよ!
    かぶってたら笑えますな♪
    評が上がるまでお互い楽しみにしてましょうww

  6. Kurara2015-02-26 22:05

    はるほんさん♪
    ひゃー、小さくブレーク中ですねw えぇ、えぇ、楽しみが増えました!
    ナニガデルカナ、ナニガデルカナ♪ 

  7. かもめ通信2015-02-27 06:58

    谷崎って『源氏物語』の現代語訳ぐらいしか読んだことがないような…。
    『陰翳礼讃』は、私の好きなイタリア人作家が「すごく良い!」といっていたという理由で積んではいるのですが……。
    みなさんのレビューを見ているとなんだか面白そうだから、私もなにか読んでみようかなあ。。。。

    ちなみに私、巻末注釈は最後にさらっと目を通す程度でほとんど参照しません。
    ちょっと「?」があったとしても、流れが中断される方がずっと煩わしいので。

  8. はるほん2015-02-27 08:34

    いらっしゃいませ、かもめ通信さま。
    変態谷崎を追求する会へ…(微笑)

  9. かもめ通信2015-02-27 08:37

    はるほん先輩!手始めにどんな作品から始めたら良いですか?
    お手柔らかにご指導お願いします。<(_ _)>

  10. はるほん2015-02-27 14:35

    自分もまだ谷崎の山の裾におりますのでねえ…。
    一般には「春琴抄」が名高いらしいですが未読です。
    「猫と庄造と二人のをんな」はライトで読みやすかったですよ。
    源氏からはじめたなら「少将滋幹…」も悪くないかも。

    むしろ一緒に谷崎を発掘して、私達を導いてください…!

  11. 素通堂2015-02-27 19:28

    おおお、谷崎、いいですよねえ☆昔京都のヴィレッジバンガードで壁一面に新潮文庫の谷崎を面出しで並べていたのを見たことがあります。あれは圧巻だったなあ。

  12. Kurara2015-02-27 22:13

    全員で力を合わせて全作品、やっつけたいですねw
    でもって、どの作品が変態度が高かったか決着をつけたいです!

    素通堂さん♪
    ヴィレバン、やっぱり場所が違ってもやることが濃い!
    私は下北のによく行きますが、本当にいろんなものを吸い取られ、ふらふらになって出てきますw 壁一面谷崎なんてやられた時には鼻血がでそうですww

  13. 風竜胆2015-02-27 23:16

    なんか、とんでもない企画が進行中?w

  14. はるほん2015-02-28 07:26

    1、2、3、4、5…。
    おや、いつのまにか5人いるじゃないですか(素通堂さんも!?)
    変態追随戦士タニザキファイブがここに結成…(されませんて)

  15. 風竜胆2015-02-28 19:47

    はるほんさんに、Kurara さんに、かもめ通信さんに、素通堂さん、んっ!?4人しかいないw
    ところで、タニザキレッドは、はるほんさん?それともKuraraさん?

  16. Kurara2015-02-28 21:12

    おっ!戦闘態勢ばっちりですねw 

    タニザキレッドは、もちろーんはるほん先生ですな。
    わたしはモモレンジャー(なんか違うw

    長期戦で行きましょう!
    あ、リーダーは別枠なんですか?スペシャル変態追随戦士とか?w

  17. かもめ通信2015-03-06 12:55

    いやー私はまだ谷崎文学の入り口にも立っていないのでなんちゃら戦士団(?)に入れて貰う資格がないような気もしますが,それはさておき。
    神奈川近代文学館で谷崎潤一郎展が開かれると聞き込んできたので,先輩方にご注進に伺いましたww
    https://www.kanabun.or.jp/te0174.html

  18. Kurara2015-03-06 20:54

    かもめ通信さん♪
    情報ありがとうございます。
    「痴人たちの〈恋〉と〈愛〉」平野啓一郎氏の講演会、興味深いです。
    神奈川近代文学館なんですねぇ~近いようで遠いなぁ~><

  19. かもめ通信2015-03-18 10:03

    初谷崎,『陰翳礼讃』のレビューを書きましたがとても皆さんのようにおもしろいものはかけませんでした(^^;)
    もし谷崎ブームのテンションを下げてしまったらごめんなさい。(汗)
    といいつつ次は何を読もうかなあ~と物色中。

  20. Kurara2015-03-18 21:09

    かもめ通信さん♪
    あ、コメント見る前に拝見しちゃいましたw
    いえいえ、テンション下がりませんよ~今なら谷崎って文字だけで条件反射的にテンション上がりますw というか、今マハさんの新刊読み始めたんですが、数ページ目に谷崎潤一郎の文字が・・・もうびっくり通り越して怖いw とりつかれたかも!?
    さて、かもめ通信さんが何を次に読まれるのか、そこも注目!

  21. No Image

    コメントするには、ログインしてください。

書評一覧を取得中。。。
  • あなた
  • この書籍の平均
  • この書評

※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。

『痴人の愛』のカテゴリ

フォローする

話題の書評
最新の献本
ページトップへ