ホセさん
レビュアー:
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時代小説のニューウェーブかライトノベルなのだろうか。こういう時代小説は初めて。
長くもなく重たくもない、でも切味がいいから、後々耳に残る歌謡曲のようだ。
31 朝井まかて 「御松茸騒動」
時代小説のニューウェーブかライトノベルなのだろうか。こういう時代小説は初めて。
長くもなく重たくもない、でも切味がいいから、後々耳に残る歌謡曲のようだ。
大阪出張の帰りに新幹線で一杯やりながら読み終えて、東京駅で疲れも飛んで、明日も仕事やるかぁ、という感じ。
尾張藩江戸詰め、切れ者の評判高い榊原小四郎は父を亡くしたばかりの19歳。
一家を背負い、生真面目な小四郎には野心もあり勤めに励むのだが、周りは腑抜けたサラリー侍ばかり。
亡き父の朋友だが、お調子者・抜け作・女たらしと頼りない三人組、通称「三兵衛」の不祥事に巻き込まれて、生真面目さも裏目に出て上司に厭われて、
小四郎は尾張藩の「御松茸同心」に飛ばされる。
尾張名産の松茸をより多く収穫して、江戸や殿様へ謹上する役目なのだが、
任地は名古屋から遠く離れた山の奥、そして松茸の収穫は年々減っていて・・・
軽妙に物語は進み、登場人物もアイディアも豊かだ。
でも時代背景やテーマも掘り下げないから、普通の時代小説が交響曲としたなら、この本は出来の良い歌謡曲だ。(普通の時代小説:藤沢周平/池波正太郎/司馬遼太郎/山本周五郎・・・)
歌謡曲のサビとして耳に残ったのは三兵衛たちだ。
小四郎も勿論良い造詣なのだが、若くてちょっと堅物だから、物語の中で何でもやらせる訳にはいかない。
そこに三兵衛の隠居爺たちが、いつどこからともなく現れて絡んでくる。爺たちは小太郎をからかい、仕事を手伝い、夜は酒盛りなのだが、彼らが出てくると懐かしい歌のサビ(だけどコーラス)に聞こえてくる。
同じく御松茸同心に飛ばされて15年の栄之進、現場の上野村で小太郎が住込む先の山守権左衛門と孫娘の千草、と役者たちもいい味を出している。
大した話もしないうちに亡くなってしまった父が実は・・・
その父が仕えた大殿は実は・・・
といったカラクリもテーマも、少し急ぎがちの終盤に現れて、シャンシャンと物語の幕は降りた。
まだ世に出ていない優れた作家の卵なら、この本のアイディアを拝借して現代の小説を1つ2つあつらえるだろう。
(2015/3/19)
時代小説のニューウェーブかライトノベルなのだろうか。こういう時代小説は初めて。
長くもなく重たくもない、でも切味がいいから、後々耳に残る歌謡曲のようだ。
大阪出張の帰りに新幹線で一杯やりながら読み終えて、東京駅で疲れも飛んで、明日も仕事やるかぁ、という感じ。
尾張藩江戸詰め、切れ者の評判高い榊原小四郎は父を亡くしたばかりの19歳。
一家を背負い、生真面目な小四郎には野心もあり勤めに励むのだが、周りは腑抜けたサラリー侍ばかり。
亡き父の朋友だが、お調子者・抜け作・女たらしと頼りない三人組、通称「三兵衛」の不祥事に巻き込まれて、生真面目さも裏目に出て上司に厭われて、
小四郎は尾張藩の「御松茸同心」に飛ばされる。
尾張名産の松茸をより多く収穫して、江戸や殿様へ謹上する役目なのだが、
任地は名古屋から遠く離れた山の奥、そして松茸の収穫は年々減っていて・・・
軽妙に物語は進み、登場人物もアイディアも豊かだ。
でも時代背景やテーマも掘り下げないから、普通の時代小説が交響曲としたなら、この本は出来の良い歌謡曲だ。(普通の時代小説:藤沢周平/池波正太郎/司馬遼太郎/山本周五郎・・・)
歌謡曲のサビとして耳に残ったのは三兵衛たちだ。
小四郎も勿論良い造詣なのだが、若くてちょっと堅物だから、物語の中で何でもやらせる訳にはいかない。
そこに三兵衛の隠居爺たちが、いつどこからともなく現れて絡んでくる。爺たちは小太郎をからかい、仕事を手伝い、夜は酒盛りなのだが、彼らが出てくると懐かしい歌のサビ(だけどコーラス)に聞こえてくる。
同じく御松茸同心に飛ばされて15年の栄之進、現場の上野村で小太郎が住込む先の山守権左衛門と孫娘の千草、と役者たちもいい味を出している。
大した話もしないうちに亡くなってしまった父が実は・・・
その父が仕えた大殿は実は・・・
といったカラクリもテーマも、少し急ぎがちの終盤に現れて、シャンシャンと物語の幕は降りた。
まだ世に出ていない優れた作家の卵なら、この本のアイディアを拝借して現代の小説を1つ2つあつらえるだろう。
(2015/3/19)
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語りかける書評ブログ「人生は短く、読むべき本は多い」からの転記になります。
殆どが小説で、児童書、マンガ、新書が少々です。
評点やジャンルはつけないこととします。
ブログは「今はなかなか会う機会がとれない、本読みの友人たちへ語る」調子を心がけています。
従い、私の記憶や思い出が入り込み、エッセイ調にもなっています。
主要六紙の書評や好きな作家へのインタビュー、注目している文学賞の受賞や出版各社PR誌の書きっぷりなどから、自分なりの法則を作って、新しい作家を積極的に選んでいます(好きな作家へのインタビュー、から広げる手法は確度がとても高く、お勧めします)。
また、著作で前向きに感じられるところを、取り上げていくように心がけています。
「推し」の度合いは、幾つか本文を読んで頂ければわかるように、仕組んでいる積りです。
PS 1965年生まれ。働いています。
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