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chiezoさん
chiezo
レビュアー:
いつの間にか共犯者になった気分で、心拍数が上昇しそうなサスペンス。
美術館のキュレーター志望でありながら百貨店外商部で仕事をこなす直美。
大学時代の同級生で親友の加奈子が、夫のDVに耐えている事を知った直美は
加奈子の平穏な生活を取り戻そうと考えをめぐらせる。
30歳を目前にした2人の女が、自分の人生を取り戻すために出した結論は。


「いっそ、二人で殺そうか。あんたの旦那」
親友同士の二人の女はDV夫を「排除」する事を決意した。


「ナオミの章」と「カナコの章」の2部に分けて描かれる本作。
ナオミのパートでは、完全犯罪を企んだ殺人計画から実行まで
カナコのパートでは、夫殺害後、完全犯罪の綻びに怯える女2人の姿を
視点を変えて読ませる手法は、たまらなくスリリング。

美術館を擁する百貨店に勤務をするも、希望の美術関連の業務ではない
富裕客の使い走りのような外商部で働く直美。
自分とは全く違う消費生活の顧客に忸怩たる思いで接する毎日。

そんなままならない仕事の中で出会いが、彼女達の完全犯罪に
インスピレーションを与えていくのが面白い。中国人の図々しさや逞しさ
不法入国者やチャイナタウンでしか活動しない中国人労働者の現実。

同じ北陸地方からの上京組という事だけで、親友として付き合う加奈子が
夫からの暴力に耐えている事を知る直美。直美の両親も、父が母に暴力を振るっていた
過去があったせいで、なんとしてでもDV夫から加奈子を救わなければと思いつめる。

正義感の強い女って、とにかく頑固で融通が利かない。
直美は、殴られても健気に絶える加奈子の痛々しい姿に同情を越えた
怒りに似た正義の鉄槌を下そうと思いつく。

当のDV被害者である加奈子は、常に泣き寝入りし自ら声を上げないタイプ。
夫に殴られても、離婚話で夫の怒りを増幅させる事を不安に思ってしまう。

加奈子の旦那を殺そうと言い出したのは直美で、計画を練ったのも直美。
素人の考え付く完全犯罪は、「成功すれば」の条件付きにもかかわらず
バレるはずがないと思い込んでしまう危うさ。

計画の詳細を語らずに他人を動かすとか、結構大胆に移動するとか
危なっかしいアラサー女二人の犯罪に、読んでるアタシも
「そ、そんな事して、大丈夫?」とドキドキしてくる。
これは、もはや読みながら共犯者になっている気分だ。

そして考え付く限りの完全犯罪を行った後は、加奈子の視点。

夫が失踪した妻を演じることから始まる。職場から、出社しない夫を心配して
電話がかかってきたり、夫の両親に夫の行方を尋ねたりと
家出された妻がやるであろう姿を演じる。

新たな登場人物達に疑念を抱かせて、殺人計画を実行する2人に不安を与え続け
次第に計画が綻びを見せ始める。

「だから思ったのよー、結構大胆に動き回ってたしねぇー(汗」
この完全犯罪を、計画から実行まで一連の流れとして眺めているアタシは
完全なる共犯者目線で読んでいるから、彼女達のドキドキが伝播してくる。

じわりじわりと追い詰められていく加奈子。
基本、受け身な人生を送ってきた彼女が、想定外の出来事で俄然強くなる。
直美以上の強さを持ち始める彼女の変化が、カナコパートの醍醐味。

さて、いよいよ女2人が追い詰められるけれど、女ってヘコたれない。
全ては自分の人生を取り戻す為に行ったことだから。
絶対に捕まらない!と決意した彼女達の強いこと、強いことw

やっぱり女は、生きる性なのよ。
ちょっとやそっとじゃ怯まないし、諦めない。
心の中では、早鐘が通常の数倍速で打とうと、平然とした顔をしていられる。

とんでもない事をやらかしちゃった女達だけど
ここまで徹底してやりきっちゃったら、拍手と賛辞を送りたいほどだ。
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chiezo
chiezo さん本が好き!1級(書評数:1003 件)

読書熱は一向に下がらず、本を読み続けてはいるのですが
なかなか当サイトを訪れる事が出来ず
「読んだ本」ばかりが増え続けております。

皆さんの書評を拝読できず、投票行為も止まったままですが
時折、投票されましたメールを戴き恐縮しきりでございます。

またチョボチョボと「読んだ本」から書評へと
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この書評へのコメント

  1. sayu2015-02-25 18:15

    ものすごく気になっていた本なのですが、chiezoさんの書評を拝見して、すご~~~~く読みたくなりました。。。
    奥田さんも、悪女を書かせればかなり天下一品ですよね…。
    気になりますっっっ!!

  2. chiezo2015-02-26 16:52

    ■sayuさん■
    一連の犯罪行為を俯瞰すると、気分はすっかり共犯者です。
    何気ない行動が命取りになりゃしないか、いつかバレるんじゃないかとか
    妙にソワソワしながらドキドキする作品でしたw
    是非、sayuさんも共犯者にっっ!

  3. No Image

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