efさん
レビュアー:
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な、何ですって! これがクリスティのベスト10ですって?!
と、思わず叫んでしまいそうになる本です。
ミステリ評論家である著者は、これまでに数千冊に及ぶミステリ作品を読破してきたというのに、クリスティの作品はわずかに7冊しか読んでこなかったと言います。
何故そんなに読まなかったのかという理由について、著者は、「クリスティはこういう風におもしろい」という説明を目にしたことが一度も無かったからだと書いています。
なるほど、クリスティの作品について書かれた文章は多いのです。
しかし、そこで取り上げられている作品は非常に偏っており、例えば、『アクロイド殺し』 、『オリエント急行の殺人』 、『ABC殺人事件』 、『そして誰もいなくなった』 ……等の数作に限定されていると言います。
約100冊にも及ぼうかという邦訳があるにもかかわらず、取り上げられる作品はわずか数作だと言うのです(確かにそうかもしれません)。
だから、クリスティは本当に面白いのかどうかということが分からなかったと言います。
それなら自分で読んでみるしかないだろうということで、何と、現在我が国で普通に入手できるクリスティが書いた作品(別名義ものや、ミステリ以外のものも含めて)全作を読破し、一作ごとに評論を付し、さらに星評価やランキングまでやってしまったというのが本書なのです。
本書のもとは、ネット上での連載記事であり、それに大幅に加筆修正して本書にまとめたということです。
ネタバレを避けており、どうしても記事中に残さなければならなかった部分は墨塗りにして、巻末の『ノート』に墨塗りした部分を書いていますので、未読の作品があっても大丈夫です。
著者はまずポアロの全制覇から始め、その後、ミス・マープル→トミー&タペンス→……とジャンルごとに各個撃破していきます。
そして、それぞれのパートを終えるごとに、そこまでのベスト作品をランキングし、それがどんどん改訂されていくという仕掛けになっています。
私自身、ある程度はクリスティ作品を読んではいますが、それは有名作品+ポアロもの全作品程度で、例えばミス・マープルものやトミー&タペンスものなどは、短編で数編読んだことがある程度です。
ですので、本書を読んでも知らない作品の方が圧倒的に多かったのです。
で!
問題は著者が選んだランキングです。
まずは、ポアロ作品だけを全制覇した後に挙げられた、ポアロものだけのベストテンを見ていただきましょう。
1 カーテン
2 五匹の子豚
3 白昼の悪魔
4 ABC殺人事件
5 死との約束
6 もの言えぬ証人
7 杉の柩
8 アクロイド殺し
9 マギンティ夫人は死んだ
10 ナイルに死す
ご覧になられていかがでしょうか?
おそらく、多くの方は「嘘っ!」と思われたのではないでしょうか?
さらに、これが、クリスティの全作品を読破した後どうなったかというと……
1 カーテン
2 五匹の子豚
3 終わりなき夜に生まれつく
4 ポケットにライ麦を
5 春にして君を離れ
6 白昼の悪魔
7 鏡は横にひび割れて
8 謎のクイン氏
9 死との約束
10 NかMか
となります。
一般に、クリスティの名作、代表作と言われている『アクロイド』も『オリエント急行』も『ABC』も『そして誰も……』も、一つもランクインしていないのです。
いや、それはそれで良いのです。
あくまでも個人の好みなのですから、どのようなランキングになっていようとそれは一向にかまわないことなのです。
そうなのですが、それにしてもここまでとは……と、私は絶句してしまいましたよ。
確かに、私はクリスティの作品を半分も読んでいませんし、また、著者と私の好みの違いというのも大きいのかもしれません。
とにかく、クリスティには様々な魅力があるのだろうということだけは得心させられました。
また、著者のコメントで、その通り!と同意した点もありました。
例えば、「クリスティはトリック・メイカーではない」という趣旨の指摘は私もまったくその通りだと思いました。
これは一見、意外に感じられるかもしれません。
だって、『アクロイド』だって『オリエント急行』だってすっごいトリックを生み出しているじゃないかと。
その2作はそうです。
著者も同じ意見なのですが、この2作はそうだけれど、それ以外の作品は、実はそれほどのトリックは使われていないと、著者も指摘しますし私も同意します。
他の作品も、その結末にはひどく驚かされるのですが、それはトリックによる驚愕ではなくて、叙述の妙等によってあっと言わされているのであり、よくよく見てみると、犯行に用いられている方法には大したトリックは無いのです。
そんな鋭い指摘も交えながら、とにかくクリスティの全作品を舐め尽くしたといった趣の一冊であり、またクリスティ作品を読みたくなってくること請け合いです。
読了時間メーター
□□□ 普通(1~2日あれば読める)
ミステリ評論家である著者は、これまでに数千冊に及ぶミステリ作品を読破してきたというのに、クリスティの作品はわずかに7冊しか読んでこなかったと言います。
何故そんなに読まなかったのかという理由について、著者は、「クリスティはこういう風におもしろい」という説明を目にしたことが一度も無かったからだと書いています。
なるほど、クリスティの作品について書かれた文章は多いのです。
しかし、そこで取り上げられている作品は非常に偏っており、例えば、『アクロイド殺し』 、『オリエント急行の殺人』 、『ABC殺人事件』 、『そして誰もいなくなった』 ……等の数作に限定されていると言います。
約100冊にも及ぼうかという邦訳があるにもかかわらず、取り上げられる作品はわずか数作だと言うのです(確かにそうかもしれません)。
だから、クリスティは本当に面白いのかどうかということが分からなかったと言います。
それなら自分で読んでみるしかないだろうということで、何と、現在我が国で普通に入手できるクリスティが書いた作品(別名義ものや、ミステリ以外のものも含めて)全作を読破し、一作ごとに評論を付し、さらに星評価やランキングまでやってしまったというのが本書なのです。
本書のもとは、ネット上での連載記事であり、それに大幅に加筆修正して本書にまとめたということです。
ネタバレを避けており、どうしても記事中に残さなければならなかった部分は墨塗りにして、巻末の『ノート』に墨塗りした部分を書いていますので、未読の作品があっても大丈夫です。
著者はまずポアロの全制覇から始め、その後、ミス・マープル→トミー&タペンス→……とジャンルごとに各個撃破していきます。
そして、それぞれのパートを終えるごとに、そこまでのベスト作品をランキングし、それがどんどん改訂されていくという仕掛けになっています。
私自身、ある程度はクリスティ作品を読んではいますが、それは有名作品+ポアロもの全作品程度で、例えばミス・マープルものやトミー&タペンスものなどは、短編で数編読んだことがある程度です。
ですので、本書を読んでも知らない作品の方が圧倒的に多かったのです。
で!
問題は著者が選んだランキングです。
まずは、ポアロ作品だけを全制覇した後に挙げられた、ポアロものだけのベストテンを見ていただきましょう。
1 カーテン
2 五匹の子豚
3 白昼の悪魔
4 ABC殺人事件
5 死との約束
6 もの言えぬ証人
7 杉の柩
8 アクロイド殺し
9 マギンティ夫人は死んだ
10 ナイルに死す
ご覧になられていかがでしょうか?
おそらく、多くの方は「嘘っ!」と思われたのではないでしょうか?
さらに、これが、クリスティの全作品を読破した後どうなったかというと……
1 カーテン
2 五匹の子豚
3 終わりなき夜に生まれつく
4 ポケットにライ麦を
5 春にして君を離れ
6 白昼の悪魔
7 鏡は横にひび割れて
8 謎のクイン氏
9 死との約束
10 NかMか
となります。
一般に、クリスティの名作、代表作と言われている『アクロイド』も『オリエント急行』も『ABC』も『そして誰も……』も、一つもランクインしていないのです。
いや、それはそれで良いのです。
あくまでも個人の好みなのですから、どのようなランキングになっていようとそれは一向にかまわないことなのです。
そうなのですが、それにしてもここまでとは……と、私は絶句してしまいましたよ。
確かに、私はクリスティの作品を半分も読んでいませんし、また、著者と私の好みの違いというのも大きいのかもしれません。
とにかく、クリスティには様々な魅力があるのだろうということだけは得心させられました。
また、著者のコメントで、その通り!と同意した点もありました。
例えば、「クリスティはトリック・メイカーではない」という趣旨の指摘は私もまったくその通りだと思いました。
これは一見、意外に感じられるかもしれません。
だって、『アクロイド』だって『オリエント急行』だってすっごいトリックを生み出しているじゃないかと。
その2作はそうです。
著者も同じ意見なのですが、この2作はそうだけれど、それ以外の作品は、実はそれほどのトリックは使われていないと、著者も指摘しますし私も同意します。
他の作品も、その結末にはひどく驚かされるのですが、それはトリックによる驚愕ではなくて、叙述の妙等によってあっと言わされているのであり、よくよく見てみると、犯行に用いられている方法には大したトリックは無いのです。
そんな鋭い指摘も交えながら、とにかくクリスティの全作品を舐め尽くしたといった趣の一冊であり、またクリスティ作品を読みたくなってくること請け合いです。
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幻想文学、SF、ミステリ、アート系などの怪しいモノ大好きです。ご紹介レビューが基本ですが、私のレビューで読んでみようかなと思って頂けたらうれしいです。世界中にはまだ読んでいない沢山の良い本がある!
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- 出版社:講談社
- ページ数:426
- ISBN:9784062189682
- 発売日:2014年05月14日
- 価格:2970円
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