yukoさん
レビュアー:
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中国残留孤児で、帰国してから27年間兄だと信じてきた男が、実は偽物ではないかと疑いを抱く、盲目の主人公。見えない故に、音や匂いの感覚は研ぎ澄まされる。真っ暗闇、なんて孤独なのでしょうか・・・
主人公の村上和久は中途失明者。
41歳で失明しました。
幼少期に、和久は母と共に満州から引き揚げてきたのですが、
その当時の過酷な生活のせいで失明したと和久は母を責めてきました。
和久には三歳年上の兄の竜彦がいましたが、満州ではぐれてしまいました。
1983年、兄は訪日調査に参加し、母が息子だと確認して永住帰国。
しかし、DNA鑑定は行っていませんでした。
和久の孫娘の夏帆は腎臓が悪く、母親であり、和久の一人娘である由香里の腎臓を移植したのですが、
1年半しかその腎臓は持たず、和久の腎臓を移植しようと検査したのですが、
数値が悪く、移植はできないと言われます。
失明したことで妻や娘に八つ当たりし続けた結果、家族を失った和久は、
腎臓を提供することで家族を取り戻そうと思っていたのに、移植できず・・・
そこにかかってきた兄からの電話。
生体腎移植では、血族六親等ならびに姻族三親等までしかドナーになれない、
そうだ、兄に頼もう!
そう和久は思い、実家の岩手へと由香里と帰省します。
ところが兄の竜彦は頑なに拒否。
適合するか、検査するだけでさえも嫌だととことん拒否します。
失明していたので、顔も見ていない兄。
子供の時はとても優しかったのに、今や自分勝手で乱暴で・・・
帰省するとヒ素が家にあるなど、いろいろなことが重なり、
兄は偽中国残留孤児なのではないか?だから適合検査を拒否するのではないか?
と和久は疑い始め、
兄と共に残留孤児の訴訟を起こしている仲間や、満州で一緒だった人を訪ね、調べていくのです。
そして、
和久のもとへ届く、怪しい点字の俳句の郵便。
兄は、本当に自分の兄なのでしょうか・・・
第60回江戸川乱歩賞受賞作品。
前半は老齢の失明者のくどくどとした文句のようなつぶやきになかなか感情移入できずで・・・なかなか読み進められず、時間がかかるかなぁと思っていたのですが、
途中から俄然面白くなって一気に読みました。
主人公が中途失明した完全なる失明者であるが故、
見えていた時代の記憶がとても鮮明に語られるシーンと、
全く見えない今の生活の、真っ暗な世界とのシーンの対比が素晴らしく、
見えないが故に、音や、匂いといった「見える」以外の感覚が研ぎ澄まされていて、その描写がこちらまでドキドキしてしまって。
あぁ、見えないとこんなにも恐ろしいのかと。
そして全盲者の生活など、とても細かく丁寧に書かれていて、
どうやって飲み物をこぼさずコップに注ぐのかなど、初めて知ったことがたくさんでした。
しかし、見えないが故に、
いろんな出来事を頭の中で自分でつなぎわせ、どんどん疑心暗鬼に陥っていく主人公の気持ちが痛々しくて・・・。
ミステリとしても素晴らしかったですが、
それにくわえて、家族とは何か、ということについてもとてもよく書かれていたと思います。
結局はすべて、家族を思うがゆえの、いろんな「優しい嘘」でした。
歴史問題などもからめつつ、なかなか面白い、一気に読ませてくれる作品でした。
41歳で失明しました。
幼少期に、和久は母と共に満州から引き揚げてきたのですが、
その当時の過酷な生活のせいで失明したと和久は母を責めてきました。
和久には三歳年上の兄の竜彦がいましたが、満州ではぐれてしまいました。
1983年、兄は訪日調査に参加し、母が息子だと確認して永住帰国。
しかし、DNA鑑定は行っていませんでした。
和久の孫娘の夏帆は腎臓が悪く、母親であり、和久の一人娘である由香里の腎臓を移植したのですが、
1年半しかその腎臓は持たず、和久の腎臓を移植しようと検査したのですが、
数値が悪く、移植はできないと言われます。
失明したことで妻や娘に八つ当たりし続けた結果、家族を失った和久は、
腎臓を提供することで家族を取り戻そうと思っていたのに、移植できず・・・
そこにかかってきた兄からの電話。
生体腎移植では、血族六親等ならびに姻族三親等までしかドナーになれない、
そうだ、兄に頼もう!
そう和久は思い、実家の岩手へと由香里と帰省します。
ところが兄の竜彦は頑なに拒否。
適合するか、検査するだけでさえも嫌だととことん拒否します。
失明していたので、顔も見ていない兄。
子供の時はとても優しかったのに、今や自分勝手で乱暴で・・・
帰省するとヒ素が家にあるなど、いろいろなことが重なり、
兄は偽中国残留孤児なのではないか?だから適合検査を拒否するのではないか?
と和久は疑い始め、
兄と共に残留孤児の訴訟を起こしている仲間や、満州で一緒だった人を訪ね、調べていくのです。
そして、
和久のもとへ届く、怪しい点字の俳句の郵便。
兄は、本当に自分の兄なのでしょうか・・・
第60回江戸川乱歩賞受賞作品。
前半は老齢の失明者のくどくどとした文句のようなつぶやきになかなか感情移入できずで・・・なかなか読み進められず、時間がかかるかなぁと思っていたのですが、
途中から俄然面白くなって一気に読みました。
主人公が中途失明した完全なる失明者であるが故、
見えていた時代の記憶がとても鮮明に語られるシーンと、
全く見えない今の生活の、真っ暗な世界とのシーンの対比が素晴らしく、
見えないが故に、音や、匂いといった「見える」以外の感覚が研ぎ澄まされていて、その描写がこちらまでドキドキしてしまって。
あぁ、見えないとこんなにも恐ろしいのかと。
そして全盲者の生活など、とても細かく丁寧に書かれていて、
どうやって飲み物をこぼさずコップに注ぐのかなど、初めて知ったことがたくさんでした。
しかし、見えないが故に、
いろんな出来事を頭の中で自分でつなぎわせ、どんどん疑心暗鬼に陥っていく主人公の気持ちが痛々しくて・・・。
ミステリとしても素晴らしかったですが、
それにくわえて、家族とは何か、ということについてもとてもよく書かれていたと思います。
結局はすべて、家族を思うがゆえの、いろんな「優しい嘘」でした。
歴史問題などもからめつつ、なかなか面白い、一気に読ませてくれる作品でした。
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仕事のことで鬱状態が続いており全く本が読めなかったのですが、ぼちぼち読めるようになってきました!
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- 出版社:講談社
- ページ数:340
- ISBN:9784062190947
- 発売日:2014年08月06日
- 価格:1674円
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