武藤吐夢さん
レビュアー:
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消防士の仕事が火事消火ではなく、本を焼くというディストピア社会。

タイトルの華氏451度は、紙が焼ける温度なのだという。
主人公は消防士だ。
この小説はディストピア小説なので、消防士の仕事は火事の消火ではなくて、本を焼くことが仕事になっている。
消防士が放火。
かなり矛盾している。
彼らが、本当は何を焼いているのかがわかるとゾッとする。
この世界では、本の所有は認められない。
僕たちの世界で例えると、それは大麻みたいなものだ。
知は力なりという言葉がある。
その知の源泉は、本である。学校である。
本は、過去の遺産や知識を現代まで届けるタイムマシーンだ。
本を焼くという思想は、僕の知る限り秦の始皇帝の焚書坑儒くらいだ。
もしくは、出版の自由を奪う戦争下の思想統制。
それは、思考停止。
つまり、自分の頭で物ごとを考えることを阻害している
国民から知を遠ざけて、あほにする。愚民にする政策だ。
愚民は、あほだから、他人の言うことの真似をする
自分にとって心地よい言葉だけを真実だと受け入れる
ようするに従順な羊に育て、管理しやすいようにするということだ。
それに、主人公の消防士が気づき、仲間の教授とともに戦うという話しだ。
上司は言う
どうして、こんなことをやっているのか
その目的は、平和のためと言うのだ。
確かに、知性的になれば、別の考え方の人と対立する
知識は、化学を進歩させ、破壊力の強い武器も生み出す
理屈としては何となく説得力があるのだが、何か変だ
考えの根本が違う気がした。
主人公の考えを変える二つの出来事がある。
少女クラリスとの出会いと書籍と共に燃えた老女を見て心が変化していきます。
消防士は、国民の通報によって出動します。
つまり、そこには相互監視がある。
それは昔、ナチスや共産主義の国であったシステムです。
たがいに監視させて、自分たちと異端の考えの人間を排除する
つまり、多様性を認めない社会です。
最近、書店がたくさん潰れている。
コロナの影響もありますが、それだけでもないみたいです。
友人に書店主がいますが、かなり経営は厳しいと聞きます。
日本では、本離れが深刻です。
だんだん、自分の頭で物ごとを考えない人が増えていて
インフルエンサーみたいな人が、これいいよと言うと、それにみんなが殺到します
小説の中で教授が言う。
>>昇火士など、ほとんど必要ないんだよ。大衆そのものが自発的に読むのをやめてしまったのだ。
主人公の仕事は、もはや儀式。
そもそも本の需要が減っていたというのです。
本が読まれなくなった理由として挙げられているのが
社会の加速化
時間の問題です。
時間が足りない。
だから、簡略化、省略などが増えている。
ネットのまとめサイトなどが見られるのは、そういうことなのかもしれない。
時間のかかる読書は、敬遠されるという理屈
わからないものは、社会から消すのが近道
という考え方です。
単純化がベストという思考です。
それは、この小説の中の社会に少しずつ近づいているのではと思ってしまいます。
ポピュリズムは怖い。
ヒトラー政権もそれでした。
自分で考えない社会は、下手をすると、とんでもない独裁者を生み出すこともあるのです。
あの人が推薦しているからいいに違いない。
みんながいいと言っているから、いいに違いない。
その結果、ナチス政権が出来ました。
自分の頭で物ごとを考える。
多様性を認める。
それが大切なことだと、改めて痛感しました。
脳を刺激してくれる良い本でした。
2024 10 14
主人公は消防士だ。
この小説はディストピア小説なので、消防士の仕事は火事の消火ではなくて、本を焼くことが仕事になっている。
消防士が放火。
かなり矛盾している。
彼らが、本当は何を焼いているのかがわかるとゾッとする。
この世界では、本の所有は認められない。
僕たちの世界で例えると、それは大麻みたいなものだ。
知は力なりという言葉がある。
その知の源泉は、本である。学校である。
本は、過去の遺産や知識を現代まで届けるタイムマシーンだ。
本を焼くという思想は、僕の知る限り秦の始皇帝の焚書坑儒くらいだ。
もしくは、出版の自由を奪う戦争下の思想統制。
それは、思考停止。
つまり、自分の頭で物ごとを考えることを阻害している
国民から知を遠ざけて、あほにする。愚民にする政策だ。
愚民は、あほだから、他人の言うことの真似をする
自分にとって心地よい言葉だけを真実だと受け入れる
ようするに従順な羊に育て、管理しやすいようにするということだ。
それに、主人公の消防士が気づき、仲間の教授とともに戦うという話しだ。
上司は言う
どうして、こんなことをやっているのか
その目的は、平和のためと言うのだ。
確かに、知性的になれば、別の考え方の人と対立する
知識は、化学を進歩させ、破壊力の強い武器も生み出す
理屈としては何となく説得力があるのだが、何か変だ
考えの根本が違う気がした。
主人公の考えを変える二つの出来事がある。
少女クラリスとの出会いと書籍と共に燃えた老女を見て心が変化していきます。
消防士は、国民の通報によって出動します。
つまり、そこには相互監視がある。
それは昔、ナチスや共産主義の国であったシステムです。
たがいに監視させて、自分たちと異端の考えの人間を排除する
つまり、多様性を認めない社会です。
最近、書店がたくさん潰れている。
コロナの影響もありますが、それだけでもないみたいです。
友人に書店主がいますが、かなり経営は厳しいと聞きます。
日本では、本離れが深刻です。
だんだん、自分の頭で物ごとを考えない人が増えていて
インフルエンサーみたいな人が、これいいよと言うと、それにみんなが殺到します
小説の中で教授が言う。
>>昇火士など、ほとんど必要ないんだよ。大衆そのものが自発的に読むのをやめてしまったのだ。
主人公の仕事は、もはや儀式。
そもそも本の需要が減っていたというのです。
本が読まれなくなった理由として挙げられているのが
社会の加速化
時間の問題です。
時間が足りない。
だから、簡略化、省略などが増えている。
ネットのまとめサイトなどが見られるのは、そういうことなのかもしれない。
時間のかかる読書は、敬遠されるという理屈
わからないものは、社会から消すのが近道
という考え方です。
単純化がベストという思考です。
それは、この小説の中の社会に少しずつ近づいているのではと思ってしまいます。
ポピュリズムは怖い。
ヒトラー政権もそれでした。
自分で考えない社会は、下手をすると、とんでもない独裁者を生み出すこともあるのです。
あの人が推薦しているからいいに違いない。
みんながいいと言っているから、いいに違いない。
その結果、ナチス政権が出来ました。
自分の頭で物ごとを考える。
多様性を認める。
それが大切なことだと、改めて痛感しました。
脳を刺激してくれる良い本でした。
2024 10 14
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よろしくお願いします。
昨年は雑な読みが多く数ばかりこなす感じでした。
2025年は丁寧にいきたいと思います。
この書評へのコメント
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書評一覧を取得中。。。
- 出版社:早川書房
- ページ数:299
- ISBN:9784150119553
- 発売日:2014年04月24日
- 価格:929円
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