※ちなみに年配の方にはカバーを「表紙」という方が多い。
たとえ、本の知識が豊富でも接客が素晴らしくとも
それが出来ないヒトを一人前の書店員とはいえない。
これは言いすぎだろうか、言いすぎに決まっている。
しかし、それくらい書店員にとってはカバーかけは重要ということだ。
そして、重要だけど誰にでも出来てしまうことでもある。
慣れてくると「いりません」と言われたにもかかわらず
手が勝手にカバーをかけてしまっていることがある。
そんなとき優しいお客さんなら困惑した表情でこちらを見つめつつ
「や、そのままでいいですよ」と言ってくれ、怖いお客さんなら
「いらないって言ったろうがー」とブチ切れられる。時々クレームになる。
この場を借りて言い訳させてもらえるならば、
書店員は決してお客サマの言葉を無視しているわけではない。
頭では「カバー不要」とわかっているのだが
つい癖で手が自然とカバーをかけてしまっているだけなのだ。
だからもし、書店でそんな書店員に出くわしたならば
どうか生温かい目で見守ってやってください。ね
さて、言い訳が長くなりすぎました。ごめんなさい。
本書ではカバーの歴史、各書店の歴代カバーの写真をみることができる。
評論家の紀田順一郎氏の寄稿された文章によると
戦時中は紙不足によりカバーは一時廃止されていたようだ。
戦後には復活し、1960頃になると書店が自前のカバーを作り始める。
1970年頃にはそれまで数冊まとめてカバーをつけていたのが
1冊1冊にカバーをかけるようになり、その流れの中で文庫カバーも誕生する。
各書店のカバーデザインの多さにも目を奪われる。
まるで切手コレクションをみているようなワクワク感がある。
どこも個性豊かで自前のカバーに思い入れがあるのだなあということが伝わってくる。
書皮友好協会の全国大会の書皮大賞の受賞作品に、
作家の名前や顔イラストが描かれているもの、浮世絵みたいなイラストのもの、
地元色(北海道のお店だとアイヌ絵)を活かしたものをみつけたり、
以前いたお店や現在勤めているお店のカバーを発見したり、
弘栄堂書店のカバーが昔から変わっていないことに驚いたり、
カバーの展覧会のようでパラパラと眺めているだけで楽しい。
個人的には早川書店と松明堂のカバーが好き。
現在では特殊サイズでもない限り、希望されればかけるのが
当然のようになっている各書店の無料カバー。
書店によって紙質、サイズ、かけ方が微妙に違うのはお気づきでしたか?
工場からお店にきた時点で既に折り目がつき糊付けがされている店、
お店で店員が一から折って手作りしている店。
カバーのかけ方にしても本のサイズに合わせて折りたたむだけの店、
折りたたむ前に本の表紙をカバーに挿しこむ店(後者の方が若干
手間はかかるものの本はずれにくい)、挿し込みが右にある店、左にある店。
紙質の柔らかい店にちょっと硬めの店、とカバーひとつでも
お店によってかなり違うものです。
最近では広告にカバーを使用したり、フェアの対象書籍を
購入するとプレゼントなどカバーの在り方も少しずつ
変わってきているような気がする。
以前までは書籍を包装する紙くらいにしか捉えられていなかったようだが
ここ最近ではカバーを目的に本を購入するなんて人がいるのだ。
昨年の集英社から始まった購入者対象のカバープレゼントフェア。
今年の夏の文庫フェアでは集英社に加えて角川までブックカバー
プレゼントとなっている(昨年まではストラッププレゼント)。
(個人的には防水でリバーシブルの集英社のカバーの方に惹かれている
のだが角川の方はデザインは8種類と多めでちょっと捨て難い)
そうしたカバー欲しさに文庫を大量購入するヒトの気持ちがわからなくもない。
これまであまり意識したことはなかったが私もなかなかのカバーマニアらしい。
私にとってはカバー選びも含めて「読書」なのかもしれない。
いつか全国の書店を巡り、各地の書店でカバーを集める旅をしてみたいなんて夢をみた。





■ 登録日 2012/07/26 
■2024年 近況■
某サイトで読んだり、備忘録的に記したり、
BLソムリエとしても色々楽しく参加中。
【めも】
2013/4/14 50書評 到達。
2013/11/19 100書評 到達。
2014/10/26 150書評 到達。
2019/1/15  200書評 到達!
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| 読んで楽しい: | 32票 | |
|---|---|---|
| 参考になる: | 13票 | 
この書評へのコメント
- ef2014-07-13 07:42書店にお勤めの経験があるんですか~。大変興味深く読ませていただきました。そうそう、イマドキの文庫って出版社によってサイズが違うじゃないですかぁ。あの辺りは同じサイズでまかなっているのですかね? 
 最近はネットで本を買うことが多くなって、当然のようにカバーはないです。
 自分でブックカバーを何種類か買って持っているのですが、どうしても合わないサイズのがあるんですよね。そういう時には昔本屋さんで頂いた紙のカバーを折り直して使ったりしています。
 たまにはリアル書店に行って、店員さんの見事な早業でカバーをかけてもらおうっと!
 
 追記:あ。札幌にお住まいなんですね。私もH17,18と札幌に住んでいました。当時は紀伊国屋書店にはお世話になりました~。
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- 雅也-カヤ-2014-07-13 08:10>efさん 
 
 おはようございます。コメントありがとうございます。
 はい、一度は別の職に就いてみたりもしたのですが結局出戻って現在も書店員やっております^^;
 
 うんうん、厄介なことに微妙に違いますよね。
 前いたお店では若干のサイズ違いが気になる方が案外多いということで文春用とか幻冬舎用とか出版社ごとに型を用意して文庫サイズのものを折り直していました。
 早川の文庫に関しては明らかに文庫では小さいので新書サイズのものを折り直したり、早川用の型を用意して一からつくっていたりします。
 基本的にカバーを折り直すときは外側で折り直しの線が見えないように大きいサイズのものを小さく作り直すということをしています。
 
 あまり気にしたことはありませんでしたが、確かにネット購入だとカバーってついてないですね。
 amazonとか楽天とかも自前のカバーを用意したらいいのに!
 ネットでしか手に入らないカバーとしてそれはそれで価値がありそう♪クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。
- 雅也-カヤ-2014-07-13 13:48>そのじつさん 
 
 お洒落なカバーですね。
 あ、お菓子の包装紙なんですか?
 言われなければ全然わかりませんでした。
 そっかあ、包装紙をカバーに再利用するっていう手もあるんですね。いいかも!
 ただ包装紙だと少し硬めなのでちょっと難しいかもですね(私もハンドクリームは欠かせませんw)
 そのじつさんはとってもお上手にかけているように見えます(*´ー`*)
 私が今カバーかけが出来るようになっているのも、修行中私の下手っぴなカバーかけで我慢してくれた心やさしいお客さんたちのおかげだと思っていますwクリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。
- サンペーリ2014-07-13 15:29以前、東京堂書店さんのインタビュー企画で、 
 書店員のみなさんが、
 「最初、あのカバー掛けはなかなかうまくできなくて苦労しました(笑)」
 「でもこのカバーの掛け方だけは譲れないんです。」
 とコメントされているのを思い出しました。
 http://news.honzuki.jp/?p=8714クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。
- 雅也-カヤ-2014-07-13 23:12>Kuraraさん 
 
 ありがとうございまーすw
 楽しいと言っていただけてよかったです!
 本の内容をちょっと脱線し過ぎたかなあと思ってました。
 
 あちゃー。4種類って結構選びようないですね・・・無念(-∧-;)
 うちの店は逆にまだまだストックがいっぱい余っているみたいですw
 私は集英社の方は2種類ゲットしたのですが角川はまだです。
 柄はてぬぐいブランド「かまわぬ」とのコラボのものを狙っています♪
 
 「こけしや」、知らなかったのでぐぐってみました。
 東京にしかないお店なのですね!
 包装紙がお洒落なのも納得です~(・∀・)クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。
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- 出版社:出版ニュース社
- ページ数:151
- ISBN:9784785201159
- 発売日:2004年12月31日
- 価格:2700円
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