レビュアー:
▼
夏目漱石先生の、永遠の胸キュン小説。
これは「大学に入学するため熊本から上京した青年が、都会に戸惑い翻弄されながら淡い恋をする。」というだけ話なのだ。それをまあ、百年経っても心揺すぶる青春小説の傑作に仕上げた漱石先生はすごいなあ。
熊本から上京する汽車に乗り合わせた男との会話の中で、三四郎は「これから日本は発展するでしょう。」という。すると男は「滅びるね。」という。
三四郎は自分の台詞が教えこまれた常套句で、自分の頭で考えた意見ではないことに気づく。そして今までの自分は「卑怯だった」と思う。帝大入学予定の三四郎は、エリートだけど心が柔らかく素直な青年である。
世界は広く、揺れ動いている。このままでは置き去りにされてしまう。東京に降り立った三四郎を、再度襲うカルチャーショック!人の往来と首都の賑わいに呆然と佇む三四郎。
大学に通い様々な人に出会い、三つの世界を知る三四郎。全てが平穏で全てが寝ぼけている過去。広い閲覧室と高く積み上げた書物の世界。銀匙と泡立つシャンパンと美しい女性の世界。つまりは故郷、学問、年上の女性への憧れめいた恋。この三つを並べたり比べたりかき混ぜたりしている三四郎の
「お光さん」とかいう女性を押し付ける気満々で、お金の使い方を細かく心配する、手紙にしか登場しない故郷の母が三四郎を悩ますところの可笑しさ、ミステリアスな美禰子に振り回される育ちの良さと押しの弱さ。10年ぶりに再読して思ったわ。漱石先生は微笑ましくちょっと物悲しく、どこまでも瑞々しく描いているけれど、三四郎って草食男子よね。
熊本から上京する汽車に乗り合わせた男との会話の中で、三四郎は「これから日本は発展するでしょう。」という。すると男は「滅びるね。」という。
とらわれちゃだめだ。いくら日本のためを思ったって贔屓の引き倒しになるばかりだ。
三四郎は自分の台詞が教えこまれた常套句で、自分の頭で考えた意見ではないことに気づく。そして今までの自分は「卑怯だった」と思う。帝大入学予定の三四郎は、エリートだけど心が柔らかく素直な青年である。
世界は広く、揺れ動いている。このままでは置き去りにされてしまう。東京に降り立った三四郎を、再度襲うカルチャーショック!人の往来と首都の賑わいに呆然と佇む三四郎。
西洋の歴史にあらわれた三百年の活動を四十年で繰り返している明治終盤の東京の明るさは、この作品の雰囲気そのものだ。
大学に通い様々な人に出会い、三つの世界を知る三四郎。全てが平穏で全てが寝ぼけている過去。広い閲覧室と高く積み上げた書物の世界。銀匙と泡立つシャンパンと美しい女性の世界。つまりは故郷、学問、年上の女性への憧れめいた恋。この三つを並べたり比べたりかき混ぜたりしている三四郎の
ストレイ・シープ(迷子)ぶり、その揺れと迷いと滑稽さが、普遍の青春の姿として今も共感を呼ぶところなのだと思う。
「お光さん」とかいう女性を押し付ける気満々で、お金の使い方を細かく心配する、手紙にしか登場しない故郷の母が三四郎を悩ますところの可笑しさ、ミステリアスな美禰子に振り回される育ちの良さと押しの弱さ。10年ぶりに再読して思ったわ。漱石先生は微笑ましくちょっと物悲しく、どこまでも瑞々しく描いているけれど、三四郎って草食男子よね。
お気に入り度:









掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
「本が好き!」に参加してから、色々な本を紹介していただき読書の幅が広がりました。
この書評へのコメント
- Wings to fly2014-06-20 20:32
漱石先生は、三四郎の母校・熊本第五高校でも帝大でも教鞭を執りました。神経質で躁鬱病の漱石先生でしたが、若者たちへの優しい眼差しを感じます。
文庫本の書評はこちらです。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - Wings to fly2014-06-20 20:44
風竜胆さん
はい、腰が据わってませんね(笑)そして頼りないです。でも繊細で優しい男の子です。
そこらへんが、母性本能を微妙にくすぐるのであります^ ^
で、私の故郷が舞台なんですよん♪ 団子坂で菊人形のお祭りがあったなんてね…今は不忍通りの騒音ばかりが聞こえ、風情も何もありませんT_Tクリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - Wings to fly2014-06-20 22:13
efさん
読み返す度に、大学時代に出会い刺激を受けた人々や報われない恋なんかを思い出してしまうのです(笑)だから私にとっては胸キュンなのですよ。まだ実家にいた頃は、三四郎が歩いた道を辿ったりしました。
個人的ノルタルジーをお許し下さい( i _ i )クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - Wings to fly2014-06-20 22:21
三太郎さん
お仲間ですねー♪私も若い頃には自信がなく意気地がなく、思い出したら「ぎゃ〜!」と言いたくなるようなことをたくさんしました。五十路を過ぎた今読むと、実に大らかな気持ちになります。いつか是非もう一度!
書評もお待ちしてます(^^)クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。
コメントするには、ログインしてください。
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:
- ページ数:265
- ISBN:B009IXLLU8
- 発売日:2012年09月27日
- Amazonで買う
- カーリルで図書館の蔵書を調べる
- あなた
- この書籍の平均
- この書評
※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。