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かもめ通信
レビュアー:
もう○十年若かったなら、この本をGパンの尻ポケットに無造作につっこんで、あてもないそぞろ歩きに出かけたくなったに違いない……そんなことを考えながら読んだ詩集。
miol morさんの書評を拝見したとき
私の頭の中では確かにカチッと音がした。
けれども私にはその音の原因がさっぱりわからなかった。

ウラジーミル・マヤコフスキーという詩人の名前は
その死をめぐる“謎”が話題をよんだというエピソードと共に
うっすらと記憶に残っていたがそれが原因とも思えなかった。

問題はそうこのタイトル『ズボンをはいた雲』の方だ。
いったいどこで、目にしたことがあるのだろう?

考えても考えても思い浮かばないので
この本を出した土曜社のHPを覗いてみてようやく腑に落ちた。

10代の頃、夢中になって読んだ大江健三郎の『日常生活の冒険』
この中に引用された一節が、物語とともに記憶の底から浮かび上がってきた。

そのマヤコーフスキイが廿二歳のとき、《ズボンをはいた雲》という詩を書いたのさ、そして廿二歳ということの意味をかたっているんだ、それを知っているかい?(大江健三郎著『日常生活の冒険』より)


結局、私は大江健三郎氏の本とこの詩集を買い
物語の登場人物と詩人と自分自身の22歳の頃の思い出に
どっぷりつかることになった。

 ぼくの精神には一筋の白髪もないし、
 年寄りにありがちな優しさもない!
 声の力で世界を完膚なきまでに破壊して、
 ぼくは進む、美男子で
 二十二歳。


“ズボンをはいた雲”はマヤコフスキー自身であると同時に
『日常生活の冒険』に登場する斎木青年自身にもなり
そして詩集や小説に夢中になった読者自身にもなる。

それはいつも、いつの時代も
色を変え、形を変えつつも、常に空に浮かぶ
普遍的で、それでいて一瞬たりとも同じではない雲のように
誰かの元に訪れている
青春というあちこちとんがった
思い出すと少し気恥ずかしい季節と共に。


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かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2229 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

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この書評へのコメント

  1. miol mor2014-11-17 10:50

    かもめ通信さん

    いやあ、憶いだせてよかったですね。
    確かにこの詩集はジーンズのポケットに似合うと思います。ジーンズ、買いに行こうかな w

  2. かもめ通信2014-11-17 11:54

    miol morさん!本当に良かったです。
    あのあともうちょっとで思い出せそうなのに、なぜだか思い出せない時のはがゆさときたら!ww

    ジーンズのポケット!似合いそうでしょう?
    公園のベンチでおもむろに詩集を取り出しつい読みふけっていたら
    木枯らしにふかれてブルッとふるえる~そんなmiol morさんの姿を勝手に想像させていただきますw

  3. かもめ通信2014-12-04 20:50

    訳者の小笠原豊樹さんの訃報が。
    マヤコフスキーに魅せられて大学を中退して翻訳家になったという報道。
    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141204-00050066-yom-ent
    すごいな。マヤコフスキーも小笠原さんも。いろんな意味で。。。。
    ご冥福をお祈りします。

  4. No Image

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