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かもめ通信
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実話に基づいた物語は読み応えがあり、文字で表現された絵画を鑑賞するのも楽しい。同時に絵画の鑑賞ポイントや描く手法、画家にとって絵を描く意味といったことが、さりげなく語られてることにも感銘をうける。
終戦から3,4年を経た沖縄を舞台に、米軍の若き精神科医である主人公と、ニシムイと呼ばれた美術村に集まってひたすら制作に打ち込んでいた若き芸術家たちとの交流を描いた物語。

かつて美術館等に勤務し、キュレーターとしても活躍してきた経歴を持つという著者お得意の美術ネタはさすがのクオリティ。

実話に基づいた物語は読み応えがあり、いつもながら文字で表現された絵画を鑑賞するのが楽しい。

同時に絵画鑑賞のポイントや絵を描く手法、画家にとって絵を描く意味とは……といったことが、登場人物たちのやりとりを描く中で、肩肘張らず、もったいぶらず、さりげなく語られてることにも感銘をうける。

ニシムイの芸術家たちが、戦後間もない時期に様々な困難に直面しながらも、まがりなりにも創作を続け、それによって収入を得ることができたのは、肖像画や風景画を土産や記念品として買い求める米軍将校たちとのつながりがあったからこそ。
だからこそ、ニシムイ・コレクションの多くはアメリカに渡ったのであろうし、商業美術とみなされて、その芸術性を正当に評価されない時期もあったに違いない。
語り終えられたそのあとの、ニシムイ・コレクションがたどる運命にも思いをはせる。

そうした余韻を味わうことができるのも、著者がこの作品をただ単に美しい友情の物語で終わらせず、沖縄の苦しい立場やその未来をしっかりと見据えて描き出しているからだとも思う。

物語のモデルとなったスタインバーグ氏のニシムイ・コレクションを直に見る機会はそうそう得られそうにないが、いつか沖縄に行って県立美術館に収蔵されているニシムイの作家達の作品をゆっくり鑑賞してみたい。
そんな気持ちになった。


(参考メモ)沖縄県立美術館作家紹介のページにて、玉那覇正吉、具志堅以徳、金城安太郎、安次嶺金正、安谷屋正義ら、ニシムイの作家たちの作品の一部をみることができる。
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かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2229 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

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この書評へのコメント

  1. かもめ通信2014-08-01 07:04

    ROOK<文学で美術鑑賞>棚
    http://rook.hn/note/no706/index.html

  2. No Image

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