買おうかなーと考え中の本だったのでちょうどよかった。
明智家の子孫にあたる著者が、本能寺の謎を解き明かすという内容。
長宗我部の著者と同じで、明治になって苗字を復活させた傍系の末裔だと思われる。
SE職というところも、ちょっと異色の経歴で面白い。
自分の地元は明智光秀の居城があったとところなので
多分日本の中でも、光秀悪評が比較的低いところではないかと思う。
かといってすごく肩入れしてるかっつーと、そうでもないんだけどね!(笑)
この特に「推し」がないところが、滋賀マイナー要因の1つでもあるような気がするが
今回は滋賀の話ではないのでとりま置く。
明智光秀と本能寺の変という当たり前すぎる組み合わせだが、
実は日本史の中でもトップ10入りするくらいの謎を含んでいる。
実行犯は光秀で間違いないのだが
その「動機」が500年近く経つ現代でもハッキリしていないのだ。
統一目前だった信長が光秀に殺され、
天下は秀吉の手に入り、その後徳川幕府を生む。
その大きな分岐点がこの「本能寺の変」だが
天下を二部する勢力だった秀吉vs家康などとは、レベルが違う。
実力者であったとはいえ、信長の家臣に過ぎなかった光秀が
単独で天下に向かって刃を剥いたのだ。
実際、大きな後ろ盾もなかった光秀はそのまま自滅する。
暗愚といえばそれまでだが、光秀は実に有能な武将だったのだ。
何故彼は自ら「勝ち目のない戦い」に挑んだのか?
そこで「黒幕説」が4つある。
後ろ盾があると思って光秀が変を起こしたとすれば、納得がいく。
コレは本書の説ではなく、ちょっとぐぐればフツーに出てくる。
それぞれに説得力と疑問点があり、決着とまではいかない。
①秀吉説・・・変後、一番得をしたのが秀吉であるから。
また余りに迅速に光秀の変に対応したことなどもあげられる。
本書では秀吉が改ざんしたと思われる文献などをあげている。
②家康説・・・本能寺の変が、信長が家康の暗殺を謀ったものとされる説。
さらに家康と光秀が繋がっていたとすると、のちの「光秀=天海説」などにも
繋がり、割とこのネタは歴史ミステリーに使われる。
本書では変後に伊賀越えをした家康の行動を解説している。
③朝廷説・・・信長の天下に危機を感じていた朝廷が、光秀をそそのかしたという説。
公式ではないが、光秀が変後に征夷大将軍に任じられたという噂もある。
また本能寺の変に正義の理由を付けるのに、これ以上の説はない。(笑)
本書ではこちらの説は推していないようだ。
その他はいろいろあるので割愛するが、
本書では「光秀に近しい人物」を一人、変が失敗した原因の1つとして挙げている。
かいつまんでいうと秀吉と家康、そしてある光秀に近しい人物の3人が
それぞれの野望や保身から変に協力できなかった、もしくは
その後に史実が書きかえられた経緯が解説してある。
それがシステムが動くようにバグを解決していく論法と言うか
ある意味、SEと言う職業も納得かなと言う印象を受けた。
他論は「三面記事的なゴシップ」と言う理由でバッサリ切り捨てる反面、
自論に沿う文献はあっさり支柱にして
「~しか考えられない」「に違いない」という帰結論理が目につく。
全体的に「組み立てた論理」を読んだ感が拭えない。
や、本書の構成としては隙無く作られているのだが
なんつーか歴史好きって、新しい説が生まれること自体に
浪漫を感じているような部分があるんだよね。
それが秀吉黒幕説と家康黒幕説の真ん中を採ったような感じだったので
ちょっと肩透かしを食ったのかもしれない。
どちらかに焦点を絞った方が、この本は面白かったのではないかなあ。
個人的に光秀はもうこの頃、痴呆とかになってたんじゃね?と思ったりする。
根拠も証拠もないのだがぐぐったら、ほんとにそう言う本が出てるのねコレが。
実際読んだら「んなワケあるかぁぁぁ!」と思うかもしれないし、
痴呆が浪漫になるのかと言われれば微妙なトコロだが、
それでも現在があると言う事は、過去の何処かにたった一つ真実があるのだ。
そこに辿り着く事も、辿り着けないこともひっくるめて浪漫だ。
「教科書にない部分にこそ歴史の浪漫がある」と言う意味では、
本書は非常に魅力的に作られていると思う。
「あー、ハイハイ本能寺の変ね。光秀がやっちゃったアレでしょ?」
なんて思っている人がいたら、是非読んでほしい一冊だ。
歴史・時代物・文学に傾きがちな読書層。
読んだ本を掘り下げている内に妙な場所に着地する評が多いですが
おおむね本人は真面目に書いてマス。
年中歴史・文豪・宗教ブーム。滋賀偏愛。
現在クマー、谷崎、怨霊、老人もブーム中
徳川家茂・平安時代・暗号・辞書編纂物語・電車旅行記等の本も探し中。
秋口に無職になる予定で、就活中。
なかなかこちらに来る時間が取れないっす…。
2018.8.21
この書評へのコメント
- サンペーリ2014-08-25 11:43
この小説を読んだ時に思ったのですが、
http://www.honzuki.jp/book/21386/review/11054/
有力者が地方に出払っていて(自分の拠点から離れていて)、光秀が天下を取りに行くのに実は絶好のタイミングだった、という説はどうでしょうか?
柴田勝家 : 北陸で上杉と交戦中。
滝川一益 : 関東で北条と対峙中。
羽柴秀吉 : 中国で毛利と交戦中。
織田信孝、丹羽長秀 : 四国出兵のため大阪で兵団形成中。
徳川家康 : 京都観光クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - はるほん2014-08-25 16:46
>サンぺーリさん
おお、この本はまだ未読です。
でもまだ文庫になってないのですね…(しょんぼり)
ですよね。謎として見なければ
光秀はこれ以上の好機はないと踏み切ったと言えますよね。
自分も「結局はその黒幕の部下になるだけ」であれば
光秀の変は意味の無いものになると思うので
やはり一世一代の賭けだったんじゃないかと思います。
ただ彼がもう10歳若ければ、もう一手
何か策を弄していたんじゃないかと思ったり。
無論有り得ない「IF」ですけど
散ることで世を変えた不遇の武将だったんでしょうね。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - 風竜胆2014-08-25 18:41
ちなみに、これが私が本能寺に行ったときの記事です。http://blog.goo.ne.jp/magicgirl/e/450e3657ec8a910f8e901c95e8b7041e
ただし、信長時代の本能寺は、別の場所だったようですが。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 
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- 出版社:文芸社
- ページ数:345
- ISBN:9784286143828
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