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Wings to fly
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今までの探偵小説では、偉い探偵の相棒にトンマな探偵が現われて大マチガイの推理をはたらかせてあんまりバカすぎたようです。(読者への口上・坂口安吾)
時は明治18年、神楽坂の町道場の主・泉山虎之介は探偵にあこがれている。犯罪現場の巡査たち(剣術の弟子)、お前ら邪魔だよ。自慢の「心眼」で私が真相を見抜くのだ!・・・そんな虎之介の隣家には、洋行帰りの美青年が住んでいた。結城新十郎、虎之介の話を聞いただけで真犯人を当ててしまう憎いヤツ。

新十郎は虎之介の案内で現場へ出掛けるようになり、いくつかの難事件を解決した。博識で鋭敏な元徳川家重臣の息子は、今や警視庁から絶大な信用を得た紳士探偵である。虎之介の剣術の先生は、天下稀代の頭脳の持ち主・勝海舟。時折、虎之介は海舟の屋敷を訪ねて行く。

本書は、坂口安吾が書いた捕物帖仕立ての推理小説全20編の連作短編集だ。当事者が用心深く心に隠した感情を、新十郎が見抜き事件を解き明かす。人間ドラマの面白さと、手掛かりが全て提示された謎解きの面白さ。軽妙洒脱にテンポよく語られるものの、中味は良く練られた本格推理ものである。各話だいたい同じスタイルで書かれている。

1.虎之介が海舟の屋敷で事件を語り始める。
2.その事件の詳細。
3.海舟が推理する。
4.新十郎が犯人を見つけ、事件解決。
5.推理がはずれた海舟が負け惜しみを言う。

安吾は「読者への口上」の中で、「2」の部分に推理のタネを揃えてあるからおヒマの折のお友達として犯人当てを楽しんで欲しいと述べている。本書執筆数年前の安吾の文章を、青空文庫で見つけた。

謎ときゲームとしての推理小説は、探偵が解決の手がゝりとする諸条件を全部、読者にも知らせなくてはならぬこと、謎を複雑ならしめるために人間性を納得させ得ないムリをしてはならぬこと、これが基本ルールである。「推理小説について」(東京新聞・昭和22)
短編で推理小説を読ませるにはドイルの行き方が頂点で、つまり捕物帖の推理が適しているのである。「推理小説論」(新潮・昭和25)

推理小説は文学・芸術とは別のもの、最高級の娯楽品として考えていた安吾なのである。楽しかった!私の推理は全然当たらなかったけれど。ああ、虎之介と同じく私の「心眼」もヤブニラミなのであった。でもいいや、勝海舟だって当たらなかったんだもん。

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Wings to fly
Wings to fly さん本が好き!免許皆伝(書評数:862 件)

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この書評へのコメント

  1. Wings to fly2014-04-22 06:12

    私が読んだのは電子図書版です。文庫の正・続2冊分が入っていました。

  2. No Image

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