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ぽんきち
レビュアー:
親を送るってこういうことなんだろうな・・・
少々扇情的なタイトルである。Amazonの紹介文にも「父の戒名を自作したところ、僧侶に『人のビジネスに手を出すな』と恫喝され・・・」とあり、何やら穏やかでない。
目次の見出しも、「住職から恫喝を受けました」「檀家はやめるの、やめないの?」「請求二億円!?『争族』の始まり」と、キワモノ感が漂う。

いやいや、一見、いささか露悪的だが、これは存外、真面目で考えさせられる1冊である。

著者は人物ルポなどを手がけるライター。
関西に住む老父とは離れ、首都圏で仕事をしている。
ある日、施設に入所している父が亡くなったと連絡を受ける。関西へと向かう新幹線の車中で、著者は”ふと”父の戒名を自作しようと思い立つ。
にわか勉強だったが、父の人柄や生き様を考え、これだと思う戒名を思いつく。
ところがそれを旦那寺の住職に告げたところ、「おまえさん、何考えているのか知らんが」と威圧的に脅されてしまう。
そこから、「父らしい葬式」を上げるための著者の闘いが始まる。

発端は、「戒名を自分で作ってもよいではないか」という素朴な思いつきと、「なぜお坊さんに恫喝までされなければならないのか」という疑問である。
著者は基本、常識人だと思う。ただ、故人の思いを知っているのに、世間の慣習に流されるのをよしとしなかったのだ。
お坊さん側が心ない言葉を使い、強い態度で出てきたことと、それでも著者が引かなかったことがいささか問題を大きくしたというところだろう。

著者は兄1人、姉2人を持つ末っ子だが、家の事情は少々複雑で、実子であるのは著者1人だった。
兄と父は、父の生前、裁判に至るまでの争いをしている。そのため、遺産相続の話し合いもかなり面倒なことになっていく。
そして父の田舎との関係もまたしがらみに満ち、心地よいものではなかった。

多くの人は、肉親の死で憔悴しているとき、争いごとを強いて始めようとはしないだろう。これが常識といわれれば黙って従っておくだろう。
だが著者は踏ん張った。そして葬式の慣例が現在のようになった背景を追う執念も見せる。友人・知人の経験を尋ね、何人かのお坊さんや元お坊さんに会ってインタビューし、税理士さんに相続の事例について聞き、最後には社会学者の橋爪大三郎に話を聞きに行っている。
ライターとしての経験が生きているのだろうが、文章が読みやすい。
視点も一般人のものに近いように思われ、好感が持てる。

葬式仏教の問題点ばかりではない。
遺産相続の難しさ。肉親であるがゆえのわりきれなさ。人が亡くなった後の事務関係の煩雑さ。
父の死を境にさまざまな問題がわっと湧き出てくる。
人が1人死ぬということは、なるほどこういうことなのだろうな、と思う。自分の場合はどうなるのか、あれこれ考えさせられる。
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ぽんきち
ぽんきち さん本が好き!免許皆伝(書評数:1827 件)

分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。

本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。

あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。

「実感」を求めて読書しているように思います。

赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。そろそろ大雛かな。♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw

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この書評へのコメント

  1. くにたちきち2014-09-18 10:23

    面白い本を紹介して下さり、有難うございます。この際、『葬式は、要らない』(島田裕巳著)を読んでみたいと思います。

  2. ぽんきち2014-09-18 13:06

    くにたちきちさん

    コメントありがとうございます。

    この本の著者も『葬式は、要らない』について触れていました。

    お葬式はいつ来るかわからないものですが、出来る限りの心の準備はしておいた方がよいのかもしれないですね・・・。いろいろ考えさせられました。

  3. No Image

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