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ぱるころ
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アラスカの雄大な自然が持つ、美さと厳しさ。ひとりの人間の無力さを知り、不思議と心が軽くなる。
Jun Shinoさんからこの本を教えていただきました。ありがとうございます。

アラスカを拠点に活動した写真家・探検家 星野道夫(1952-1996)。本書は、20代でアラスカへ渡った星野が現地に根を下ろし結婚、子供が誕生した1993〜95年頃に書かれたエッセイ。

アラスカの大自然が持つ、美しさと厳しさ。「弱いものは生き延びることができない」という自然の摂理を日々目の当たりにし、受け止める一方で、妊娠中の妻や、生まれてくる子供のことは心配でたまらない。この正直な気持ちに、とても人間らしいものを感じた。
自然が刻々と変化するように、ひとりの人間も強さと弱さ、深さと浅さを併せ持っている。大自然の中に身を置くことは、人間を、自分自身を知ることだという気もした。


自分の力ではどうにもできないほどの大きな存在を感じると、圧倒されて息苦しくなることもある。けれど、この本はそうではない。星野道夫の文章は、読む人の心をスッと軽くする。

どうして、価値観の違うあの人に勝手な期待をしたのだろう。
どうして、良く思われたいと願ってしまったのだろう。
気づけばページを開いたまま、そんなことを考えていた。


星野道夫がヒグマの事故で亡くなったことは、衝撃的で残念な出来事だと思っていた。しかし読み進めるにつれて、その死をどう捉えるべきか分からなくなってくる。

池澤夏樹は解説でこのように述べている。
『それは生きているものの勝手な願いでしかない。本当は彼のために彼の死を悼む資格はぼくたちにはないのではないか。』

星野は最終章『ワスレナグサ』に、生まれたばかりの子どもへの思いを綴っていた。
『あわただしい、人間の日々の営みと並行して、もうひとつの時間が流れていることを、いつも心のどこかで感じていたい。
そんなことを、いつの日か、自分の子どもに伝えゆけるだろうか。』

いつか子どもが大きくなって、語り合える日を思い描いていたのだろうか…
星野の言葉は人の心の深い部分に届き、これからも多くの心を救っていく。

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ぱるころ
ぱるころ さん本が好き!1級(書評数:147 件)

週1〜2冊、通勤時間や昼休みを利用して本を読んでいます。
ジャンルは小説・エッセイ・ビジネス書・自己啓発本など。
読後感、気付き、活かしたい点などを自分なりに書き、
また、皆さんからも学びたいと考え参加しました。
よろしくお願いします。

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この書評へのコメント

  1. Jun Shino2023-12-09 14:48

    認識遅れましてすみません(*_ _)人ゴメンナサイ

    書評読みながら思わずホロリとしてしまいました。星野道夫は新妻と小さい子供を残して、美しい写真とエッセイを遺して、でしたね。

    星野道夫の作品は奥に悠久、深遠なものを感じます。北の野生の大地への憧れもかき立てますね。他の作品もぜひ
    ^_^

  2. ぱるころ2023-12-09 14:16

    Jun Shinoさん、素敵な本を教えていただきありがとうございました。
    星野道夫の文章は心に沁みますね。北の大きな自然から、自分や他人を許すという心の持ちようを学んだように思います。他の作品も読んでみたいです^ ^

  3. No Image

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