走れ!移動図書館: 本でよりそう復興支援

指折り数えてみたら、私と 「公益社団法人シャンティ国際ボランティア会（SVA）」とのつきあいもかれこれ２０年ほどになるようだ。
始めて出会ったころはたしか、「曹洞宗国際ボランティア会」という名称で、主にタイにある難民キャンプ等を中心にボランティア活動をしていたはずだ。

阪神・淡路大震災のとき、それまでアジアの各国で行っていた緊急災害援助活動のノウハウを生かしていち早く支援活動に動き、沢山あった支援団体の中でも、とりわけ息長く持続的な活動を続けて注目を浴びた。

それまで拠点としていた仏教国を飛び出して、アフガニスタンなどにも活動の場を広げ、子どもたちに絵本を届ける運動や、現地に学校を作る活動など、今や押しも押されぬ国際的なボランティア組織に発展している。

その活動には常に注目してきたので、東日本大震災直後から、赤十字をはじめ様々な団体が支援募金を募っている中、私はすぐにSVAに募金をしたし、自分になにができるかと自問自答しながら、現地入りしたスタッフから送られてくる報告をむさぼるように読んできた。

けれどもそのSVAが、震災間もない時期に、避難生活を送る人たちに救援物資を届けるなどの活動と並行して図書館活動を始めようとしていると聞いたとき、正直にいうと、まだ時期尚早なのではないかと思ってしまったことも事実だった。

この本を読んで、被災地を走る移動図書館がどんな意味を持ってきたのか、どれほど多くの人を励ましてきたのか、改めて実感した。

なぜ「本を寄付する」のではなく「本を貸し出す」図書館活動なのか。
雨の日も風の日も、台風でも雪が降ってもなぜ図書館は走って行くのか。
被災地の人びとはどんな本を欲し、本に何を求めてきたのか。

献身的な活動に頭がさがることは想定内だったが、読みながら涙が止まらなかったのは想定外だ。

この経験が再び活かされるような事態は、起きない方がいいのかもしれないが、日常生活においてもこうした経験から学ぶことは多いはず。

本好きな人ならば、ぜひとも読んでおきたい１冊だ。


＜関連書籍レビュー＞
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