弁当男子

タイトルを見ると、自分でお弁当を作る料理上手な男子の話だと思うでしょ？違うんです。自分でメシなんか作ったこともないのに「浮気したあんたの作った飯なんか食えるかっ！」・・・思い込みで世界に反抗し母親に激昂するのは、中二病の典型的症状だねえ。

大地は高校一年生。両親は離婚し、母と二人で暮らしている。生活を支えるため二つの仕事を掛け持ちして働く母は弁当を作ってくれない。昼休み、席を寄せて手作り弁当のふたを開ける同級生の姿を見るのが嫌で、大地は屋上でパンを食べていた。孤高になる為に・・・（と自分では思っている）。
「味見をしてくれないか。」
「その弁当は先生が作ったものなんだがな。」
万場先生に無理やり手渡されたのは、上段には焼きそばと唐揚げのみ、下段にはご飯がびっしり、白と茶色だけで構成された愕然とするような弁当であった。

母と息子、先生と生徒の、手作り弁当をめぐるハートフルな物語。PHP研究所の小説コンテストに「ありがとう大賞」というのがあり、本書はその特別賞を受賞しているそうだ。大地の葛藤と母の愛情、ふたりを見守る先生のちょっとしたお節介、ストーリーは予想通りに展開してゆき予想通りに終わるが、読み終わった後「これ、ちょっといい話だったよね。」と思える。

生活指導担当の美術教師、万場先生の策略にまんまと引っ掛かってゆく大地。「ひとりの生徒にここまで関心を持ってくれる先生がホントにいるのか？」などとあまり深く考え過ぎず、「男の子ってしょうがないわね、バカだけど可愛いわぁ。」とか「大地のお母さん、息子に遠慮しすぎ。もっと叱ればいいのに。」とか、テレビドラマにぶつぶつ言いながら鑑賞するように読むのがよろしいかと。

そして毎日早起きしてお弁当作っておられるお母様方、ご苦労様です。「母の手作り弁当は、子どもに世界で一番愛されている。」という素晴らしい結末に、きっと幸せな気分になられることでしょう。