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たけぞう
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冬場は虫に、夏になったら植物に。
「家守綺譚」「村田エフェンディ滞土録」「冬虫夏草」と関連シリーズになっている。
綿貫が主人公という視点では、家守綺譚と冬虫夏草の二作だが、家守綺譚と村田エフェンディ滞土録の対をなす部分をご存知であれば、期待通り冬虫夏草もつながっている部分がある。
現実世界と精神世界を意識しながら読むと、幻想譚の仕掛けが垣間見えて楽しくなってくる。だから、できれば上記の順に読むことをお薦めする。

タイトルの冬虫夏草は、本文でサナギタケの章があり、ようやく意味が分かった。
コウモリガの幼虫が活動していて、糸状菌の一種に感染する。
菌糸が内部で増殖し、ちょうどサナギになったときに体表を突き破り、茸の子実体が外へ現れる。つまり、ガの幼虫が冬にサナギになったら、成虫が生まれる代わりに夏に茸が生えてきたという形になるのだ。
これが冬虫夏草。

綿貫はこれを題材に用い、種を越えての異類婚、すなわち恋愛を成就させようとする形に当てはめて、散文を書き進めている。
この発想力が、梨木さんの不思議世界のタネの一つのような気がする。

前作同様、各章は植物をモチーフとしている。全三十九種類。
初めて聞く植物も多く、その名前を知るだけでも気持ちが高ぶる。
カワウソ、河童、イワナたちとの共存共栄も前作同様。
現代文明と森羅万象の狭間で揺れる物語であった。

今回は、伊勢の山奥が主な舞台である。
この世界の旅にお出になるならば、いってらっしゃいと声を掛けたい気持ちである。
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たけぞう
たけぞう さん本が好き!免許皆伝(書評数:1465 件)

ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。

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