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Yasuhiroさん
Yasuhiro
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Twitterでモリミンが早よ「有頂天家族」第三部を書けと煽られているのでそろそろ出るんじゃないかな、と思って再読。笑いが止まらないのはモリミンの「阿呆の血のしからしむる」ところなり。
  森見登美彦の京都ものの人気ナンバーワンシリーズ「有頂天家族」です。最近テレビアニメにもなったので見られた方も多いかと思います。もともと三部作構想で始まったこのシリーズ、モリミンのツイッターや彼のRTを見るとそろそろ第三作を書けとだいぶ煽られておられるようなので、そろそろ出るかな、ふと再読。

  いやあ、何度読んでも(当たり前ですが)面白い。舞台は例によって京都、桓武天皇の遷都以来続く、人間と狸と天狗の三つ巴の地。その京都は下鴨神社、糺(ただす)の森を根城とする下鴨家

  狸族の名門にして阿呆の血のしからしむる家族を簡単に紹介すると、
 
下鴨 総一郎(父、故狸): 京都狸界をたばねる頭領「偽右衛門」として名を馳せた名狸、無念にも金曜倶楽部の狸鍋の具となってしまい他界。この物語終盤の大騒動でその真相が明らかに。

桃仙(母): 息子たちをこよなく愛する良い母。大のタカラヅカファンで男役風の麗人に化けてはビリヤード場に通う。雷が苦手で鳴ると狸に戻ってしまうので、兄弟たちは雷が鳴ると母のもとへ駆けつける。

矢一郎(長男): 下鴨家の跡継ぎの責任感ゆえか真面目すぎるほど真面目。普段は和服の旦那姿だが、怒ると虎と化し「鴨虎」の異名を持つ。次期偽右衛門を夷川早雲と争う。

矢二郎(次男): 無口でおとなしくやる気がない。しかし父譲りの酒豪で偽電気ブランを飲むと偽叡電電車となり京都中を走りまくる。しかし、ある事件にショックを受けてと化し、六道珍皇寺の境内の古井戸で隠居している。

矢三郎(三男): 主人公。父の「面白きことは良きことなり!」というモットーを一番忠実に受け継いでいる。普段は「腐れ大学生」に化けている。兄弟の中で最も「化けの皮」が厚く、狸界でもまれに見る化け力を持つ。

矢四郎(四男): 末っ子で気が弱いがまじめで勉強家。どういうわけかライバルの夷川家の偽電気ブラン工場で働いている。怖がりですぐ尻尾を出すので「尻尾丸出し君」と呼ばれている。電気を発することができ、携帯電話を充電できる特技を持つ。


  そしてその下鴨家の宿敵で夷川発電所の近くの、モリミンファンにはお馴染み偽電気ブラン工場を根城とする夷川家の親玉早雲と阿呆兄弟・金閣銀閣、姿を見せぬ妹海星、落ちぶれてひねくれてスケベの天狗如意ヶ嶽薬師坊赤玉先生、人間から天狗へ化身し空を飛ぶ残酷な美女弁天、狸族を怖れさせる狸鍋を一年に一回主催する「金曜倶楽部」の親玉、「夜は短し愛せよ乙女」の李白=寿老人等々モリミン的キャラが目白押し、いや、毛玉押し。

  そんな毛玉たちと天狗、人間たちの織りなす世界は抱腹絶倒。例えば矢三郎の日常。弁天にそそのかされていたずらをした「魔王杉事件」で赤玉先生が天狗力が衰えてしまったことを申し訳なく思い、せっせと京都市内の天狗先生のアパートへ通うのですが、落魄の赤玉先生も頑固偏屈、会話も一筋縄ではいきません。

  例えばスケベな赤玉先生を慰めようとピチピチJKにも化けますが、赤玉先生には通用するはずもなく、

このぼけなすめ、そんなつまらん小細工するな

と怒鳴られ手近にある物を片っ端から投げつけられ、

このうんこじじいめ、ぼけなすとはどういうことだ、(以下略)

と応戦する毎日。これもお互いを知り尽くしているからできる微笑ましい(半分本気で怒っているが(笑))やりとりです。

  そんな阿呆な日常から始まり、下鴨家と夷川家の確執や四兄弟の現実、赤玉先生と弁天と矢四郎の過去などをモリミン節で闊達に描き、時にはホロリともさせておいて、最終章で人間界をも巻き込む大騒動へなだれ込む。「面白きことは良きことなり!」の狸族の看板に偽りなしの傑作です。
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Yasuhiro
Yasuhiro さん本が好き!1級(書評数:513 件)

馬鹿馬鹿しくなったので退会しました。2021/10/8

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この書評へのコメント

  1. 風竜胆2017-07-31 12:32

    このシリーズ、2作目はここで当たって、書評を書いていますが、これは、未だに放置状態(読みましたが未レビュー)。
    でも面白いので、「第3部書け」という煽りには、乗っかりたいかもw

  2. Yasuhiro2017-07-31 14:13

    風竜胆さん、コメントありがとうございます。おお、二代目の帰朝が献本だったんですか、それは粋ですね、でもこれを読んでいないとそっちを買わないといけないですが(w。風竜胆さんのこの作品のレビュー、読みたいです。

  3. No Image

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