かもめ通信さん
レビュアー:
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東京駅の構内には、キップをなくした子どもたちが暮らすちょっと不思議な空間があるというのだけれど、(建て替え工事の際に、取り壊されたりはしていないよね?!)と、ちょっと心配したりする。
昭和51年生まれの小学生イタルは、切手コレクター。
自分の生まれた年の切手を買い求めるために一人で電車に乗っていたが、降車駅でキップを無くしてしまったことに気づく。
慌てるイタルに声をかけて来た少し年上の女の子が言い放つ。
「キップをなくしたら、駅から出られないんだよ」
女の子に連れられて、東京駅の地下で暮らすことになったイタルは、改札を出ない限りは電車乗り放題、キヨスクの商品はタダで貰える、社員食堂も駅弁も食べ放題などの特権を与えられるとともに、同じ境遇の仲間たちとともに“駅の子ども”としての仕事に就くことになる。
展開はまさに、ファンタジーの王道でもある“行きて帰りし”物語だ。
駅というとても身近なところにある異世界に迷い込んだ少年は、様々な経験を通して仲間とともに成長し、時を経てやがて元の世界に戻っていく。
だがそんな仲間の中に、元の世界には戻ることが出来ない女の子が一人、紛れ込んでいた。
その子がなくした物はいったい何だったのか。
それが物語のもう一つのテーマになっている。
この小説が初めて雑誌に掲載されたのは平成16年(2004年)頃からだというから、物語の中に登場する青函連絡船は既に廃止されていた。
次々と出てくる電車やその車輌の中にも、既に無くなってしまっていたものがあるのかもしれない。
子どもたちはキップをなくしたが、その代わりにたくさんのものを受け取った。
けれども毎日たくさんのものを失い続けている私たち大人は、代わりにどんなものを受け取っているのだろうか……そう考えるとちょっと切ない。
自分の生まれた年の切手を買い求めるために一人で電車に乗っていたが、降車駅でキップを無くしてしまったことに気づく。
慌てるイタルに声をかけて来た少し年上の女の子が言い放つ。
「キップをなくしたら、駅から出られないんだよ」
女の子に連れられて、東京駅の地下で暮らすことになったイタルは、改札を出ない限りは電車乗り放題、キヨスクの商品はタダで貰える、社員食堂も駅弁も食べ放題などの特権を与えられるとともに、同じ境遇の仲間たちとともに“駅の子ども”としての仕事に就くことになる。
展開はまさに、ファンタジーの王道でもある“行きて帰りし”物語だ。
駅というとても身近なところにある異世界に迷い込んだ少年は、様々な経験を通して仲間とともに成長し、時を経てやがて元の世界に戻っていく。
だがそんな仲間の中に、元の世界には戻ることが出来ない女の子が一人、紛れ込んでいた。
その子がなくした物はいったい何だったのか。
それが物語のもう一つのテーマになっている。
この小説が初めて雑誌に掲載されたのは平成16年(2004年)頃からだというから、物語の中に登場する青函連絡船は既に廃止されていた。
次々と出てくる電車やその車輌の中にも、既に無くなってしまっていたものがあるのかもしれない。
子どもたちはキップをなくしたが、その代わりにたくさんのものを受け取った。
けれども毎日たくさんのものを失い続けている私たち大人は、代わりにどんなものを受け取っているのだろうか……そう考えるとちょっと切ない。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:角川書店
- ページ数:293
- ISBN:9784048736039
- 発売日:2005年07月30日
- 価格:1575円
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