よみかさん
レビュアー:
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大きな声では言えないけど書いちゃいます。
中年と呼ばれる域に入り、若い頃とはまた違った初体験が増えてくるのを感じたという著者。自らの老化現象や祖母の死、尋常でない日常を知ることになった東日本大震災など、驚きや新鮮さに満ちた酒井さんの日常が、さっくり且つからりとしたトーンで語られる。
「中年」というと成人として分別もあり老成した人種と客観的には見られます。しかし、自分もその年代に達してみて感じるのですが、人間としての基本仕様は初期設定からそう変わるものではないようです。物事に対するアンテナとでもいうのでしょうか。酒井さんのアンテナの感度はいくつになってもシャープでウィットに富んでいます。
人生初のインフルエンザにかかり、5日間のドクターストップを受けて酒井さんが各所へ仕事のキャンセルの電話を入れると、相手は一様にちょっといきいきとした声で驚いてくれます。酒井さんは、インフルエンザには、それほどの重病ではないけれど、普通の風邪とは違うイベント感もあって、皆が心配してくれるのがちょっと嬉しい、といいます。
仕事は滞り同僚に迷惑をかけておいて、大きな声では言えませんが、今冬のインフルエンザ罹患者としてはこの「嬉しい」という気持ちわからないでもないんですよね。そんな、常識ある大人としては通常表立って口にするのは憚られるようなことを、酒井さんは見逃さずシラっと書いています。
そう言えばめったに積もることのない都会の大雪にも、実はこの密かなイベント感がないでしょうか。交通機関は乱れ、会社からは帰宅命令が出ていつもより早めの帰宅。足がなく家に帰れないかもしれないという状況にも関わらず、ニュースで報道される、駅などでインタビューを受ける人の顔には笑みさえ浮かび、そこには妙なテンションの高さがあります…。大変は大変だけど大地震の時ほど、せっぱつまった感じがないのです。
一方で 生まれて初めて飼ったという三匹のカブトムシ。見ていて飽きないといい、彼らに興味津々の酒井さんは半世紀を生きてなお茶目っ気もたっぷりです。
恥ずかしいので一々口にはしませんが、思えば自分は、人生も後半に入ろうという大の大人が考えることとしてどうよ?というようなことも(ほんとに下らないこと…汗)も、実は日頃考えたりしています。こうあるべきという中年像は持っているつもりでしたが、実際に自分がこの年代に立ってみると「なんだこの程度か」と己の成長の無さに愕然とすることしばしば。 同時に、中年なりに浮かんでは消えるまだまだ初めて尽くしの酒井さんの日常に笑ったり共感したりしつつ、もしかしてこんな自分でも許されるのか…と、妙な安心感がわいてきたりするのでした。
「中年」というと成人として分別もあり老成した人種と客観的には見られます。しかし、自分もその年代に達してみて感じるのですが、人間としての基本仕様は初期設定からそう変わるものではないようです。物事に対するアンテナとでもいうのでしょうか。酒井さんのアンテナの感度はいくつになってもシャープでウィットに富んでいます。
人生初のインフルエンザにかかり、5日間のドクターストップを受けて酒井さんが各所へ仕事のキャンセルの電話を入れると、相手は一様にちょっといきいきとした声で驚いてくれます。酒井さんは、インフルエンザには、それほどの重病ではないけれど、普通の風邪とは違うイベント感もあって、皆が心配してくれるのがちょっと嬉しい、といいます。
仕事は滞り同僚に迷惑をかけておいて、大きな声では言えませんが、今冬のインフルエンザ罹患者としてはこの「嬉しい」という気持ちわからないでもないんですよね。そんな、常識ある大人としては通常表立って口にするのは憚られるようなことを、酒井さんは見逃さずシラっと書いています。
そう言えばめったに積もることのない都会の大雪にも、実はこの密かなイベント感がないでしょうか。交通機関は乱れ、会社からは帰宅命令が出ていつもより早めの帰宅。足がなく家に帰れないかもしれないという状況にも関わらず、ニュースで報道される、駅などでインタビューを受ける人の顔には笑みさえ浮かび、そこには妙なテンションの高さがあります…。大変は大変だけど大地震の時ほど、せっぱつまった感じがないのです。
一方で 生まれて初めて飼ったという三匹のカブトムシ。見ていて飽きないといい、彼らに興味津々の酒井さんは半世紀を生きてなお茶目っ気もたっぷりです。
カブお、カブじ、カブぞうと命名してみるも、三匹ともソックリさんなので、誰が誰やら全くわからない。「カブお達」と総称してみる。
恥ずかしいので一々口にはしませんが、思えば自分は、人生も後半に入ろうという大の大人が考えることとしてどうよ?というようなことも(ほんとに下らないこと…汗)も、実は日頃考えたりしています。こうあるべきという中年像は持っているつもりでしたが、実際に自分がこの年代に立ってみると「なんだこの程度か」と己の成長の無さに愕然とすることしばしば。 同時に、中年なりに浮かんでは消えるまだまだ初めて尽くしの酒井さんの日常に笑ったり共感したりしつつ、もしかしてこんな自分でも許されるのか…と、妙な安心感がわいてきたりするのでした。
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ここのところ踊りに現を抜かして、本が読めておりません。(^_^;)
にもかかわらず、時折、過去レビューをお読みくださりポチッと一票くださる方々がいらして、感謝いたしております。
ありがとうございます。
この書評へのコメント

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- 出版社:集英社
- ページ数:224
- ISBN:9784087715118
- 発売日:2013年04月26日
- 価格:1365円
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