かもめ通信さん
レビュアー:
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ヒロシマを生き延びながら、「なぜ私は生かされたのか」と繰り返し問わずにはいられない若者たちの姿を目にして、私もまた考える。戦争と平和、死ぬことと生きること、生かされることの意味について。
先日読んだ 『光のうつしえ』に続いて、同じ著者の『八月の光』を読んだ。
ヒロシマのあの日を描いた3つの物語がおさめた本だと聞いていたので、前々から読みたいとは思っていたものの、読み始めるのに少しばかり勇気が必要だったのだ。
あの日の朝、出征中の夫の陰膳が落ちたから勤労動員には行かないと言い張った母は、そのおかげで生き残ったのだが……(「雛の顔」)
その朝、母は疎開の準備のために銀行に行き、2度と戻らなかった…(「石の記憶」)
あの日を境に僕は、自分は自分の名前を忘れてしまった。だが何もかも忘れてしまった訳ではない。あの日のことは、忘れたくても忘れらない…(「水の緘黙」)
3つの作品は、それぞれ中学生ぐらいの少年少女が主人公で、それぞれが異なる状況であの日の朝を迎えていたが、最後の作品でゆるやかに繋がっていく連作短編となっている。
描かれている光景はとても鮮明で辛いシーンばかりのはずなのに、語られる言葉は平易で美しく、その視点は柔らかで温かい。
著者のあとがきによれば、物語に登場する人びとには複数のモデルがあるとのこと。
そう、あの朝、ヒロシマでは一瞬のうちに7万人もの人びとの命が奪われたのだ。
そしてその後もたくさんの人が亡くなり、今も多くの人が後遺症に悩まされているのだ。
20万の死があれば20万の物語があり、生き残った人たちにもまた、辛く苦しい物語があるはず。
そして著者が言うとおり「なぜ私ではなかったのか」「なぜ私は生かされたのか」そう問い続けるのは、あの朝を生き延びた者ばかりではない。
戦火の中をくぐり抜けた人も、震災を生き延びた人も、そして平凡な毎日をおくりながら、日々本を読む私自身も、日々問い、問われる。
物語を紡ぐことによって、著者が伝え残そうとしているのだとしたら、読み手である私には物語を受け止める以外になにができるだろう。
まずはこの本を薦めることから。
ヒロシマのあの日を描いた3つの物語がおさめた本だと聞いていたので、前々から読みたいとは思っていたものの、読み始めるのに少しばかり勇気が必要だったのだ。
あの日の朝、出征中の夫の陰膳が落ちたから勤労動員には行かないと言い張った母は、そのおかげで生き残ったのだが……(「雛の顔」)
その朝、母は疎開の準備のために銀行に行き、2度と戻らなかった…(「石の記憶」)
あの日を境に僕は、自分は自分の名前を忘れてしまった。だが何もかも忘れてしまった訳ではない。あの日のことは、忘れたくても忘れらない…(「水の緘黙」)
3つの作品は、それぞれ中学生ぐらいの少年少女が主人公で、それぞれが異なる状況であの日の朝を迎えていたが、最後の作品でゆるやかに繋がっていく連作短編となっている。
描かれている光景はとても鮮明で辛いシーンばかりのはずなのに、語られる言葉は平易で美しく、その視点は柔らかで温かい。
著者のあとがきによれば、物語に登場する人びとには複数のモデルがあるとのこと。
そう、あの朝、ヒロシマでは一瞬のうちに7万人もの人びとの命が奪われたのだ。
そしてその後もたくさんの人が亡くなり、今も多くの人が後遺症に悩まされているのだ。
20万の死があれば20万の物語があり、生き残った人たちにもまた、辛く苦しい物語があるはず。
そして著者が言うとおり「なぜ私ではなかったのか」「なぜ私は生かされたのか」そう問い続けるのは、あの朝を生き延びた者ばかりではない。
戦火の中をくぐり抜けた人も、震災を生き延びた人も、そして平凡な毎日をおくりながら、日々本を読む私自身も、日々問い、問われる。
物語を紡ぐことによって、著者が伝え残そうとしているのだとしたら、読み手である私には物語を受け止める以外になにができるだろう。
まずはこの本を薦めることから。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
この書評へのコメント
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- 出版社:偕成社
- ページ数:146
- ISBN:9784037441609
- 発売日:2012年06月21日
- 価格:1050円
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