よみかさん
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「無私」という名の奇跡
激動の幕末。無位無官の一個人にして維新回天を成し遂げた坂本竜馬の奇跡の生涯。
今、広く知られている竜馬像の原型となったといわれる本作品。司馬先生の描いた竜馬像の肝とは何か。一言で言うならそれは「無私」であると思う。主義思想や諸藩の利害が混沌とする中で、竜馬の大政奉還案が通る「草雲雀」から最終章「近江路」は白眉。ここに、生涯「無私」ということを貫いた竜馬の生き方が集約されている。
作中、そう竜馬に言わせた司馬先生は言う。
坂本竜馬は日本人が最も好む日本人なのだという。あとがきの最後で著者は、竜馬に見出されその後新政府の高官となった由利公正の述懐を引いて、維新生きのこりの顕官たちが持ったであろう一種のうしろめたさについて触れている。それは彼らだけのものではないに違いない。世に無私で在ることがいかに困難であるか―皆それを知っている。竜馬の生涯が奇跡といわれる所以だろう。
今、広く知られている竜馬像の原型となったといわれる本作品。司馬先生の描いた竜馬像の肝とは何か。一言で言うならそれは「無私」であると思う。主義思想や諸藩の利害が混沌とする中で、竜馬の大政奉還案が通る「草雲雀」から最終章「近江路」は白眉。ここに、生涯「無私」ということを貫いた竜馬の生き方が集約されている。
「おれは日本を生まれかわらせたかっただけで、生まれかわった日本で栄達するつもりはない」
「仕事というものは、全部をやってはいけない。八分まででいい。八分までが困難の道である。あとの二分はたれでもできる。その二分は人にやらせて完成の功を譲ってしまう。それでなければ大事業というものはできない」
作中、そう竜馬に言わせた司馬先生は言う。
私心を去って自分をむなしくしておかなければ人は集まらない。人が集まることによって智恵と力が持ち寄られてくる。仕事をする人間というものの条件のひとつなのであろう。
坂本竜馬は日本人が最も好む日本人なのだという。あとがきの最後で著者は、竜馬に見出されその後新政府の高官となった由利公正の述懐を引いて、維新生きのこりの顕官たちが持ったであろう一種のうしろめたさについて触れている。それは彼らだけのものではないに違いない。世に無私で在ることがいかに困難であるか―皆それを知っている。竜馬の生涯が奇跡といわれる所以だろう。
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ここのところ踊りに現を抜かして、本が読めておりません。(^_^;)
にもかかわらず、時折、過去レビューをお読みくださりポチッと一票くださる方々がいらして、感謝いたしております。
ありがとうございます。
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- 出版社:文藝春秋
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- ISBN:B003U2S5RU
- 発売日:2012年03月13日
- 価格:5284円
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『竜馬がゆく (新装版) 文庫 全8巻 完結セット』のカテゴリ
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