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たけぞう
レビュアー:
考え抜く力を育てる一冊。
「みんなで読みませんか? 課題図書倶楽部・2016」参加書評です。

マイケル・サンデル教授の専門は政治哲学で、ハーバード大学で教えるように
なって三十年以上です。
正義と銘打った講義を設けたら大変人気が出て、これまでに14,000人以上の
人が履修しました。この一冊は、長年にわたる講義を元に構築されています。
哲学ですから、書かれたというより積みあがっている感じがします。

例示も具体的で、カントやアリストテレスなど、誰もが知っている思想家から
の引用も多いです。
名前は聞いたことはあるけれど、中身はよく知らないという人が多いのでは
ないでしょうか。

大学の講義がベースなので平易とは言えない部分もありますが、素人でも
手に取れるようかみ砕かれています。
多面的に議論を展開しているので、哲学の入門書としても最適です。

第一章は「正しいことをする」
ここから議論が始まります。
メキシコ湾で発生したハリケーンの被害により、電気が止まり、屋根の上に
木々が倒れかかり、緊急避難的にモーテルで寝泊まりするはめになった人が
いました。
ところが、そこで請求された金額が法外なふっかけだったのです。

あえて法外なふっかけと書きました。
市場原理主義者なら、需要と供給に則っただけとの考えになるでしょう。
業者にしてみれば、大量のバックオーダーを抱え、作業条件も悪く作業員の
確保もままならないわけですから、不当な金額を請求したわけではないとの
思いもあるでしょう。
正しい価格とは何でしょうね。

古代から現代まで、脈々と受け継がれる哲学を学ぶ必要性が言及されています。
正義と権利、義務と同意、名誉と美徳、道徳と法。
政治哲学者は、このような理念について考え抜いているのです。

わたしは、市場原理ですべて決まる的な考え方に違和感を持っていましたし、
事件があった時にまき起こる自己責任という言葉も気になっていました。
そんな感覚に考え方を示してくれる本でした。

理想通りにいかないことはいっぱいあります。
この本を読んで、心が少し整理されました。
答えは一つではないかもしれませんが、考えることが大事ということが
伝わりました。
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たけぞう
たけぞう さん本が好き!免許皆伝(書評数:1467 件)

ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。

自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
四番目のアドレスは「作ってみた」の書評です。
よかったらのぞいてみて下さい。

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この書評へのコメント

  1. 三毛ネコ2016-05-30 10:54

    この本、家にあるんですが、積ん読本になってます・・・

  2. たけぞう2016-05-30 23:11

    >三毛ネコさん
    結構よかったですよ。
    頭の体操的部分もありますが、道徳に重点を置いているので、心の整理にもなるんですよ。

  3. 三毛ネコ2016-05-30 23:22

    また、頑張って読んでみます。

  4. No Image

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